前回は、CRM/SFAの導入前後で営業現場にどのような変化が起こるのかを、営業担当者の目線から解説しました。
営業現場でCRM/SFA活用、管理職の視点だと「何が」変わった?
今回も同様のテーマですが、目線を営業担当から管理職に移してみましょう。どのような変化があるのか、筆者の大手Slerとセールスフォースでの経験を踏まえ解説します。
また、CRM/SFAでの運用を定着させる方法も記載しますので、すでに導入をされている方向けにも一助となれば幸いです。
●CRM/SFA導入前の営業現場、管理職は何に困っていた? 大手Sler時代
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ここからはCRM/SFA導入前において「マネジメントの粒度」「KPI/KGI達成に向けた各種施策の立案」の2つの観点でどのような問題が発生していたのかを説明していきます。
・マネジメントの粒度
営業マネジメントというと、目標管理や案件管理、行動管理、モチベーション管理などが挙げられます。
CRM/SFAが導入されていない現場では、営業担当の日々の行動が可視化されにくいため、それに伴うモチベーションの浮き沈みも推測しづらいです。また、目標達成に対して十分行動できているのか、不足しているのかといった点も把握しづらく、結果、目標管理も中途半端なマネジメントになっていたように思います。
そのため営業マネジメントといえば、日報や週報などから情報収集しやすい案件管理がメインでした。ただ、目標数値や個人のモチベーションといったさまざまな要素を鑑みて、細やかな指示を出せるわけではなく、現状把握の確認に終始していました。それは管理職がさらに上位職へ報告するための最低限の内容になっていました。
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案件管理のマネジメントについて、本来であれば受注確度を高めるための行動を部下に指示したいところですが、CRM/SFAによって情報が集約・整理されていない状況下では現状の適切な分析や示唆を導き出すことは難しいです。不十分なマネジメントはメンバーの成長を阻害したり、最悪のケースは退職につながったりすることもあります。
・KPI/KGI達成に向けた各種施策の立案
営業管理職の仕事の一つに、受注や売上目標達成に向けてさまざまな施策を打ち出し、チームを導いていくことが挙げられます。
一般的には、案件数を増やすため営業担当者でも実現できるキャンペーン(期末特別価格の提案)を行ったり、新製品や新サービス提供にあたってのキャンペーン(実績を作るための社数限定)を実施したりします。
そして、上記のような施策を進めるにあたり、管理職は進捗状況を把握する必要があります。しかし、案件管理のマネジメントすら中途半端に実施している場合、管理職が進捗把握もできず、KPIなどが思うように実現されずに目標数値の未達となるケースも少なくありません。
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「リーダー性のある人材を採用し、営業担当者に一部管理職が推進すべき業務を担わせれば解決できるのでは?」との考えもあるかと思います。もちろん、CRM/SFAを導入し、管理職が行っているマネジメントを常日頃から受けている担当者であれば、実行しきる可能性はありますが、土台のツールがない状態では達成は難しいといえます。
●CRM/SFA導入後の管理職現場 セールスフォース時代
本章では、CRM/SFA導入後において「マネジメントの粒度」「KPI/KGI達成に向けた各種施策の立案」の2つの観点でどのような変化があったのかを紹介します。
・マネジメントの粒度
CRM/SFAが導入されている場合、案件に関するマネジメントをチーム共通で一斉に実施するのではなく、1on1にて実施していました。1on1は月単位やクオーター単位ではなく、週単位で実施することで、案件に関する細やかなマネジメントだけでなく、営業担当者の性格や業務の進め方の癖など行動管理やモチベーション管理のヒントになる個別具体的な要素も知ることができます。これにより、メンバーの機微を捉えたマネジメントが実現できます。
・KPI/KGI達成に向けた各種施策の立案
CRM/SFA導入の強みは「可視化」です。これにより、目標数値とのギャップを算出し把握する時間を短縮できるため、管理職はそのギャップを埋めるための新たな施策立案や育成などに時間を使えるようになります。
施策実行にあたっても効果を発揮します。営業担当者間でCRM/SFAの利用が定着していると、施策の効果検証スピードも上がるでしょう。さまざまな打ち手を実行しながらPDCAを回し、KPI/KGI達成に向けた強い営業組織を作ることが可能になります。
●CRM/SFA 現場にどう定着させる?
上記でも触れたように、CRM/SFAの定着化は時間短縮や業務効率化につながります。その浮いた時間で各種の施策を展開し、目標達成に近付けることが狙いです。
ただし、そのためにはCRM/SFAの定着化が必須になります。導入を検討されている方の中には、営業担当者の高齢化に伴う導入の心理的ハードルやリテラシーが低く運用しきれないとの懸念があるかもしれません。
これらの課題に関しては、結局のところ社長や管理職が導入直後や運用開始時に限らず、定期的に現場にメッセージを出すことが非常に重要となります。
現場の気持ちとしては「運用してもそのうち見なくなる」「導入しただけで活用に至らない」などの思い込みが一定数あり、メッセージや定めた運用ルールが継続できるかが非常に大きなカギとなります。
そのためには、社内でのCRM/SFA管理者を育成したり、構築や運用経験が豊富なパートナー企業から協力やアドバイスを得たりしながら定着化を進める必要があるでしょう。
●まとめ
今回は、管理者側の目線に立って、CRM/SFAの導入前後で変わる点を解説しました。前回までの担当者側の目線と含めても、記載しきれていない部分はございますが、管理監督者におけるCRM/SFAの重要性や有用性を理解いただけましたら幸いです。
●著者プロフィール
株式会社Grand Central
セールス領域に特化したコンサルティングカンパニー。東京に本社を置き、グループ会社含め名古屋・大阪の3拠点で事業を展開。"営業革命"を体現するインフラカンパニーへというミッションを掲げ、クライアントの営業活動における課題を分析し、戦略立案の提案から、勝ちパターンのスキーム構築、営業代行、インハウス化に向けたDX支援や、定着に向けたセールスイネーブルメントなどのソリューションを提供しています。当社HPはこちら。
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