国土交通省は、12%前後と高止まりしている宅配便の再配達率が物流事業者に大きな負担を与えている現状を受け、その削減を目的とした実証事業を2024年10月に開始しました。
この「再配達率削減緊急対策事業」では、消費者が「置き配」や受け取り日時を柔軟に選択できる仕組みの構築を支援し、物流負荷軽減に協力的な消費者に対してポイント還元などのインセンティブを付与するという取り組みが行われています。こうした仕組みの構築や、ポイント還元のためのEC事業者の費用負担やシステムの改修費に対して、補助金が付与されます。
この事業には、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などの物流事業者や、Amazon、楽天、LINEヤフーなどのEC事業者が参加しています。ただし、この取り組みは恒久的なものではなく、あくまでも効果を確認するための実証事業で期間は2025年1月までとなっています。この期間に集まった知見を基に、今後の施策が検討されることになります。
あまり話題にはなっていない印象ですが、期間限定の実証事業ということもあるのでしょう。各EC事業者とも小規模なキャンペーンの実施にとどまっています。
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楽天では、2024年10月11日から10月31日まで「ありがとうの心を込めて1回受け取りで300万ポイント山分けキャンペーン」を実施していました。対象期間中に日付指定や時間指定、日時指定を行った商品を再配達することなく1回で受け取ると、条件を満たした人で300万ポイントを山分けにするというものです。
LINEヤフーは、「再配達削減キャンペーン」として、おトク指定便キャンペーン(2024年11月11日〜11月30日)、置き配キャンペーン(2024年12月1日〜12月22日)、1回受け取りキャンペーン(2024年12月23日〜1月10日)を実施。いずれも注文ごとに10円相当のPayPayポイントが進呈されます。なお、LINEヤフーは2024年1月〜3月にも同様の置き配キャンペーンを実施しており、これにより置き配の利用率が1.3倍に増加したとのことです。
2024年8月1日〜31日には、Yahoo!オークションで落札した商品を置き配で受け取ると、最大1000円相当PayPayポイントが当たるキャンペーンも実施していました。
Amazonは、もともと置き配を選択していなかった人が置き配を指定する、あるいはAmazonロッカーで受け取ると、25Amazonポイントを付与するキャンペーンを2024年11月1日から12月31日まで実施しています。
物流に関しては、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が厳格化され、これに伴い、物流コストの増加やドライバー不足などが顕在化している、いわゆる「2024年問題」が浮き彫りになっています。
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消費者としても「置き配」などで貢献したいところですが、置き配に関しては盗難が増加しているというニュースもあります。置き配した荷物が盗難被害にあった場合、基本的には配送業者は対応せず、ユーザーが警察に被害届を出すなどの対応が必要です。これは、指定の場所に荷物を置いた時点で、ユーザーへの引き渡しが完了しているという解釈によるものです。
また、置き配されたはずの荷物が見当たらない場合、盗難ではなく誤配の可能性もあります。盗難なのか誤配なのか、確認するのはユーザー側ということになってしまい、そんな手間がかかるのなら、対面での受け取りを選択してしまうのも仕方がないところでしょう。
宅配ボックスの設置に対して補助金はありますが、固定型の宅配ボックスのみで、ワイヤー式などの簡易なものは対象外です。単に置き配を活用しましょう、再配達を減らしましょうではなく、置き配時のルール決めや法的整備、宅配ボックスの補助金拡大なども期待したいところです。
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