【ワシントン時事】トランプ米大統領は、2月1日からメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すことを検討していると表明した。また、全輸入品への一律関税を念頭に、米貿易赤字の原因や影響を調査し、関税などの措置を検討するよう関係省庁に命令。貿易相手国の不公正な貿易慣行や通貨安誘導の実態も調べ、対処法を検討するよう指示した。
「メキシコとカナダは、多くの人(不法移民)や合成麻薬フェンタニルの流入を許している」。トランプ氏は20日、ホワイトハウスで大統領令に次々署名しながら、記者団に不満を漏らした。
就任初日の同日、不法移民の流入口となっている対メキシコ国境に「国家非常事態」を発令し、軍の派遣を打ち出した。関税を課すことで経済的な圧力も加え、両国に対策を迫る狙いだ。
トランプ氏がカナダとメキシコへの関税を打ち出したのは、就任前の昨年11月。両国は国境警備の強化に乗り出し、米国への協力姿勢を示す一方、「断固とした対応を取る」(カナダのトルドー首相)と、報復関税の準備も進めている。
英調査会社オックスフォード・エコノミクスは、関税を掛け合う「貿易戦争」に発展すれば、3カ国間の貿易量は半減する可能性があると試算。メキシコに多くの生産拠点を持つ自動車産業が「特に大きな影響を受ける」といい、3カ国の経済に打撃を与えると警告する。
一方、全輸入品への10〜20%の一律関税は、「準備ができていない」(トランプ氏)として、即日発動を見送り。60%の対中関税も実施時期を示さなかった。
ただ、トランプ氏は就任演説で、「貿易体制を全面的に見直す。外国に関税を課す」と表明。大統領令では、貿易環境を徹底的に調査する姿勢を示しており、過激な関税発動の構えを崩していない。