ニューヨーク在住のライター・堂本かおるの著書『絵本戦争 禁書されるアメリカの未来』が1月28日に刊行される。
2021年、アメリカで突如始まった禁書運動。ターゲットになっているのは、禁書運動を推進する保守派の親や政治家が理想とする「古き良きアメリカ」にとって都合の悪い、マイノリティを描いた絵本だという。非営利団体「ペン・アメリカ」によると2023-2024学校年度に前学校年度の2.7倍にあたる4231種類の本が禁書指定となった。
同書では「黒人」「LGBTQ」「女性」「障害」「ラティーノ/ヒスパニック」「アジア系」「イスラム教徒」「アメリカ先住民」の8つのトピックにわけて禁書運動の犠牲となった数々の絵本を1冊ずつ見ていくことでマイノリティの苦難の歴史、その中で力強く生きる姿、深刻化している政治的な対立「文化戦争」の最前線を描き出す。
『Where Are You From?』(HarperCollins)
著:Yamile Saied Méndez
画:Jaime Kim
「どこから来たの?(Where Are You From?)」は、移民が頻繁に浴びせられる質問だ。いまや黒人の人口を抜き、アメリカで最大のマイノリティグループとなったラティーノ/ヒスパニック。冒頭の問いを繰り返し尋ねられたラティーノの女の子が、自身のアイデンティティについておじいちゃんに尋ねる絵本。これも禁書となった絵本の一冊だ。
『and Tango makes three』(Simon & Schuster Books for Young Readers)
著:Justin Richardson, Peter Parnell
画:Henry Cole
オスのペンギンカップルが、卵を温め孵化させ、生まれたヒナと家族になったという実話に基づく絵本。同性愛を思わせることを理由に禁書となっている。日本では、ポット出版から『タンタンタンゴはパパふたり』として出版されている。
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著:Matthew A. Cherry
画:Vashti Harrison
父親が苦心して自身の娘の髪をセットする様子が描かれた絵本。黒人は、白人と同じ髪形を強要されてきた歴史がある。黒人文化にとって髪がいかに重要であるのかを知ることができる。しかしこれも一部地域で禁書対象となっている。