天皇皇后両陛下、秋篠宮ご夫妻に続いて、愛子さまが皇居・宮殿の「松の間」に入っていく。1月10日、両陛下をはじめ皇族方が学界の第一人者から講義を受けられる年頭恒例の「講書始の儀」が執り行われた。
この儀式は、学問を奨励するために明治天皇が定めた「御講釈始」が始まりだ。戦後の昭和28年(1953年)に人文科学、社会科学、自然科学の分野における学問の第一人者が3人選ばれて、皇室の方々が説明を受ける形になって今に続いている。
今年担当したのは、人文科学では大阪大学の武田佐知子名誉教授、社会科学では京都大学の矢野誠名誉教授、自然科学からは東京大学の谷口維紹名誉教授の3人。皇室担当記者は、特に武田氏のご進講に注目したという。
「武田さんの講義は、『古代の衣服と社会・国家・国際関係』と題し、古代日本の服装をテーマに行われていました。弥生時代に卑弥呼へ中国から贈られた装束や、古代の天皇の礼服などについて解説しています。
武田さんは、奈良時代に東大寺の大仏開眼に出席した聖武上皇と后の光明皇太后、娘の孝謙天皇が同じ白の礼服を召していたことを指摘。“古代に8代、6人の女性天皇が現れたのは、男女同形の礼服の存在が大きいと思う”という見解を述べたのです。こうした歴史の事実について、両陛下や愛子さまが熱心に耳を傾けられていました」
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歴代で10代8人いた女性天皇のうち、いにしえの皇室に6人と多いのはなぜなのか。かつて武田氏は、2011年に東京都内で開かれたシンポジウムで次のように述べたこともある。
「天皇というのは性を超越した存在で、男でも女でも許される時代があったのではないか。それは衣服からも言えます。天皇は衣服の上でも性を超越した存在だった。天皇イコール男性という制度ができたのは平安時代の初期です」
こうした研究を続けてきた武田氏が選ばれた背景について、宮内庁関係者はこう話す。
「人選は、文部科学省が毎年各分野の学識者を推薦し、最終的に天皇陛下が決められています。文学、歴史、政治、経済、生物、物理、化学といった分野の専門家たちが選ばれますが、難しい話題だけではなく、一般の国民にも興味を抱けるテーマで進講する方も少なくありません。
武田さんのご進講は愛子さまにとって、皇室の歴史や将来をお考えになるうえで、非常に実りのあるお話だったはずです」
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■来年の進講者も…秘められた“意図”
近現代の皇室に詳しい静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、女性天皇の存在に対する国民的な関心の高まりにも関係しているテーマだと指摘し、こう続けた。
「過去に存在した女性天皇に対する学問的な成果を踏まえて、今後の皇室の在り方にとって、皇室の方々のみならず国民に対しても、その意味をより正しく慎重に理解しなければならないという天皇陛下のお考えがあるようにも感じました」
講書始の儀では、進講者の後方に、「進講者控」の3人が座っていた。この控えに選ばれた学識者たちが、翌年の講書始の儀で進講を行う慣例がある。そして今年の控えには、日本政治史の第一人者で、東京大学名誉教授の御厨貴氏が加わっていたのだ。
「来年の講書始の儀では、御厨氏も進講を行います。御厨氏は、上皇さまのご退位を議論した政府有識者会議で座長代理も務め、男系男子に限定した現在の皇位継承の在り方に対しても、“世界の潮流はそのような段階ではない”と発言したこともある学識者なのです」(前出・皇室担当記者)
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前出の小田部さんも、御厨氏が進講者控に選ばれていた“意図”についてこう話す。
「御厨氏は、上皇さまのご退位やその後の皇位継承に関する議論の流れについて、包括的な知識や理解を持っておられます。その進講を受けることは、今後の皇室の問題を考えるうえでも大きな意味があると思います。
そうしたご進講者を選ばれたということは、天皇皇后両陛下をはじめ、皇室の方々が将来の在り方について強い関心を抱かれていることの表れだとみています。そして両陛下は愛子さまにも、女性天皇が実在した歴史的背景などについて、深く理解していただきたかったのではないでしょうか」
講書始の儀で、女性天皇が多数誕生した背景に耳を傾け、ご自身の“運命”についても向き合われていた愛子さま。しかし高まる国民の期待感のいっぽうで、愛子さまのご公務が増えない現状を、『週刊文春』が1月8日発売号で報じている。前出の宮内庁関係者は、
「昨年の単独ご公務が2回にとどまったのは、行事へのお出まし願いが来ていない状況があるという内容でした。
たしかに愛子さまは日本赤十字社へのご就職後も業務に専念しているという報道が相次ぎ、さまざまな団体も願い出ることをためらっているようです。さらには、後続のご公務は一度出席すると以降も関わり続けられるケースは多く、侍従職も慎重になっていると聞いています。
しかし愛子さまは、側近たちに対しても“ふさわしいものがあればぜひとも”と語り、生涯関わっていくテーマについて考えを深めながら、探求されているそうです」
いにしえの女性天皇に思いを馳せながら、ライフワークを模索される日々。新年の“学問始め”に発奮し、愛子さまは飛躍を誓われていたのだろう――。
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