フェンシング女子サーブルの江村美咲(26=立飛ホールディングス)が、チャレンジャーとして2025年を突っ走る。昨夏のパリ五輪では開会式で日本選手団旗手を務め、団体で銅メダルを獲得。さらなる進化を目指す今年は、減量や団体種目のまとめ役にも挑戦する。さっそく個人、団体で立て続けに国際大会優勝を飾り、1月29日からはアイウエアブランド「Zoff」のアンバサダーにも就任。“視界良好”で28年ロサンゼルス五輪へまい進する。【取材・構成=藤塚大輔】
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江村の声に力がこもった。「何かを変えなきゃいけない」。昨夏のパリでは女子サーブル団体で日本勢最高の銅メダル獲得に貢献したが、金メダル候補にも挙げられた個人では無念の3回戦敗退。胸には引っかかりを覚えていた。「これが本当に自分の本気だったのかな?」。28年ロサンゼルス五輪を目指す今、日本のエースは「ここからが本当に大事」と新たな日々を歩み始めている。
自分の体や日々の練習から見つめ直した。「もっと良い動きができるという思いがずっとあった」と、パリ五輪後から1カ月に1キロずつを目安に減量を進めてきた。これまでの体重管理は自身の感覚に委ねていたが、「ベストな体重を見つけたい」と栄養管理の専門家からサポートを受ける。普段の練習で男子選手と組み始めたことも、五輪後の変化の1つ。筋力やスピードでは劣るが「どのように戦術や技術でカバーできるか」と対応力を磨いている。
個のレベルアップに加え、チームを束ねる役割にも意欲を示す。パリは団体でメダルこそつかんだが「チーム力はまだまだ」と課題を実感。これまでは練習の集合や解散のタイミングもバラバラで、全員が意思疎通を図る機会も限られていた。江村自身も「人に何かを伝えるのが苦手。ずっと上の世代の選手についていく感じだった」と、リーダー役には消極的だった。ただ、昨年11月に26歳を迎え「私も上の年代になってきた。チームをまとめることにも挑戦したい」と自覚が芽生えている。
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今年のテーマは「チャレンジ」。「停滞の1年だった」という昨年から心身を新たにし、再スタートを切った。「今はパリから完全に切り替わっている。私はチャレンジしたいことがないと、楽しくなくなってしまう。今年は視界良好でいけそうです」。高揚感を胸に、次なる目標のロスへと歩み続けていく。
○…“連続初V”で、25年好発進を決めた。まず個人で、1月12日にチュニジアで行われたグランプリ(GP)女子サーブルを制覇。日本勢が五輪、世界選手権に次ぐGPでサーブルを制するのは初めてで「やっとグランプリ大会でタイトルを取ることができ、とてもうれしい」。そしてチームでは、同26日にブルガリアで開催されたW杯女子サーブル団体でV。アンカーとして、男女通じて日本勢初の同種目W杯優勝に導いた。
○…パリ五輪後はリフレッシュも兼ねて1カ月ほど競技から離れ、9月には日本フェンシング協会のアスリート委員として石川・能登半島の復興支援活動に参加した。浸水被害に遭った家屋の泥かきや炊き出しを行い「人の手でしかできないような地道な作業がほとんど。長期的に支援しないといけない」と実感。五輪のメダルを手に避難所も訪問し「つらい時間を過ごされた方からすれば力になっているかは分からないけれど、その瞬間は笑顔になってもらえたかなと思う。また何回でも行きたい」と話した。
◆江村美咲(えむら・みさき) 1998年(平10)11月20日、大分市生まれ。小3で競技開始。JOCエリートアカデミー(大原学園高)、中大を経て、21年から日本初のプロとして立飛ホールディングスを筆頭に複数社と契約。同年東京五輪団体5位。22年から世界選手権連覇。24年パリ五輪団体銅メダル。父宏二さんは88年ソウル五輪フルーレ、母孝枝さんはエペの世界選手権代表。170センチ。右利き。血液型A。
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