横浜清陵、21世紀枠で春夏通じて初の甲子園へ! 指揮官は東海大相模の選手として全国制覇→国立大に進学→家庭科教師の異色経歴

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2025年01月29日 07:30  webスポルティーバ

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 1月24日に第97回選抜高校野球大会(センバツ)の出場校が発表され、横浜清陵(神奈川)が21世紀枠に選出され、春夏通じて初の甲子園出場を果たした。

 選出された理由について、高野連関係者は次のように語る。

「自治を大切にしている。選手間でリーダーを定め、それぞれ意見を出し合ってチームづくりを進めている。強豪校がしのぎを削る大都市でも戦える"ロールモデル"になれるのではないかとして評価された」

【指揮官は高校時代に全国制覇を経験】

 横浜清陵は、1974年に清水ケ丘高校として開校。2004年に大岡高と統合し、横浜清陵総合となり、2017年に現校名となった。

 昨年秋の神奈川大会では、公立校で唯一ベスト8に進出。準々決勝で東海大相模に完封負けを喫したが、堂々の戦いぶりを見せた。

 グラウンドはサッカーなど他部と共用で、活動時間も制約があるなか、創意工夫した練習をしながら、女子マネージャーを含む25人の部員が一丸となって結果を出した。右腕の内藤大維(2年)、左腕の西田豪(1年)が粘り強い投球を見せ、攻撃陣は少ないチャンスをものにする。超高校級の選手は皆無で、どこにでもいるような普通の野球部員たちだ。

 あえて特徴的な点を挙げるとすれば、背番号はポジション番号でつけるのではなく、五十音順に名前で割り振っていることぐらいだろうか。

 そんなチームを指導してきたのが、野原慎太郎監督だ。高校時代は全国屈指の強豪校である東海大相模の選手として、2000年春のセンバツに背番号10でベンチ入り。チームは全国制覇を果たした。

 野原監督は甲子園で出場機会こそなかったが、ベンチから門馬敬治監督(現・創志学園監督)の采配を間近で見て、指導者を志すようになったという。高校卒業後は横浜国立大、大学院を経て家庭科の教諭になった異色の経歴を持つ。

 2007年から県立校の教員に就き、岸根高校、大師高校を経て、20年から横浜清陵に赴任。大師では二度ベスト16入りを果たすなど指導者としての経験を積み、横浜清陵では21年夏に自身初のベスト8入り。そして昨年秋、チームを再びベスト8へと導き、初めて甲子園の切符をつかんだ。その手腕は関係者の間でも高く評価されている。

 野原監督がスローガンに掲げるのは、「準備」「全力」「最後まで」の3つ。昨年秋はこのスローガンのもと、チーム一丸となって21世紀枠での甲子園出場を勝ち取った。強豪私立がひしめく神奈川で公立校の出場は横浜商以来28年ぶり。県立校に限れば1954年の湘南以来、じつに71年ぶりの快挙だ。野原監督は言う。

「不思議な気持ちです。今までは、秋の神奈川大会、関東大会で上位に入ることと、夏の県大会優勝を目標にやってきました。今回はこの2つを考えてやってきた取り組み、野球が認められての選出だったと思います」

【大親友の横浜・村田監督と共に甲子園へ】

 指揮官として初めて挑む甲子園だが、野原監督に気負いはない。

「甲子園だからといって、何も変えるつもりはありません。神奈川で勝つと目指してきた野球をそのまま発揮できるよう、準備したいと思います。これまで以上に、当たり前のことを大切にやっていくだけです。公立校としてのハンディはありません。『公立だから勝てない』というのは、負け犬根性そのもの。あくまで目指すのは、神奈川で勝っての甲子園です」

 選手たちはどう思っているのだろうか。主将の山本康太は次のように語る。

「21世紀枠のためにやってきたつもりはないです。当たり前のことをやってきて、その結果、選ばれたということです。正直びっくりしていますが、それを徹底的にやり抜けば、自分たちの強みになります。目標は甲子園で勝つこと。目の前の相手をひとつずつ勝ち抜くことです。練習試合からやってきている"あきらめないこと"が大事だと思っています。その気持ちはどこにも負けません。とにかく、選んでもらったことに感謝します」

 野原監督も感謝の思いを口にする。

「うれしいとか喜びよりも、使命感というか責任を強く感じています。認めていただいた方々には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

 そして普段から野原監督が選手たちに言っていることが、「相手を敬う」ということ。

 大げさなポーズで喜びを表すのは、相手にとって失礼という思いがある。また勝った試合のあと、帰路のバスの中で1分間だけは喜んでもいいが、それ以上はダメという決まり事もある。

 ただ、センバツ決定の日だけはさすがに野原監督も喜びを我慢できなかったのか、親友のところまで駆けつけ報告を行なった。その親友とは、共にセンバツに出場する横浜高校の村田浩明監督だ。村田監督もかつては公立校の教員として甲子園を目指していたこともあり、野原監督とは大親友である。合同練習や試合をして、お互いに切磋琢磨する仲間だ。

 野原監督の訪問を受けた村田監督は、次のように語った。

「やっぱりうれしかったのでしょうね。どこかで爆発させたかったのでしょう。ウチのほうにわざわざ来てくれました。普段から家族ぐるみで食事にいったりする仲なので、私の前では、正直な気持ちを見せてくれたんだと思います。もしかしたら、決勝で当たることがあるかもしれません。そうなったら夢物語ですね。マンガですよね!」

 神奈川から初の21世紀枠として出場する横浜清陵は、はたして甲子園でどんな試合を見せてくれるのか。また、神奈川県対決は実現するのか? センバツが待ち遠しい。

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