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鼻がムズムズ、目はショボショボで、ティッシュが手放せない……。スギ・ヒノキの花粉が飛び交う厄介な季節がやってきた──。しかも、今シーズンの花粉はいっそう手ごわそうだ。すでに東京都では1月8日にスギ花粉の飛散を確認したと発表。これは’85年に調査を開始して以来、過去最速。昨年(2月9日)よりも1カ月も早くスギ花粉が暴れはじめているのだ。
いったい何が起きているのか?
「スギ花粉は、飛散開始と認められる前からわずかな量が飛び始めます。花粉症の人は、すぐにでも対策をしたほうがいいでしょう。スギ花粉は2月には本格的に飛散し、東京や福岡で2月下旬から。3月上旬から中旬には、広島、大阪、名古屋など広い範囲でピークに。各地ともピークは例年並みで、10日から1カ月ほど続く見込みです」
と語るのは、日本気象協会で花粉の飛散量や飛散開始時期などの予報を担当している気象予報士の小田美穂さん。気がかりなのは、その花粉が飛ぶ量だ。小田さんがこう続ける。
「大量飛散が予想されます。花粉症を代表するスギ花粉の飛散量は、前のシーズンが少ないと増え、多いと減少する傾向があります。’24年の春は花粉の飛散量が抑えられた地域が多かったことから、’25年春は全体的に飛散量が増加すると予想されています。
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また、花の芽ができる夏の気象によって花粉の量が変わります。記録的な猛暑となった’24年夏は、スギの花芽の形成にとっては好条件な『高温・多照』がそろいました」
今年の花粉飛散量は、前年比で、関東甲信地方は1.6倍、北陸地方で1.7倍に。さらに近畿地方で3.8倍、中国地方が4.3倍、九州地方で2.7倍、四国地方ではなんと8.4倍もの量の花粉が、昨年と比べて多く飛びまくるのだ。さらに……。
「むこう3カ月の長期予報によると、特に西日本は降水量が平年より少なくなる見込み。花粉は空気が乾燥すれば大量に飛びやすくなります。ここ10年で最多の飛散量になるところもありそうです」(小田さん)
花粉症の人にとっては例年以上につらい季節になりそうだが、大量の花粉の飛散により、新たに“花粉症デビュー”する人が増える可能性も。日本人の花粉症の有病率は、’98年には約20%だったが、10年で10ポイント以上上がっており、’19年には42・5%に(環境省・厚生労働省「花粉症対策」リーフレットより)。かつては5人に1人だった花粉症患者が、2人に1人になる時代もそう遠くはない。
本格的な花粉シーズンを前に、しっかり対策しておきたいところだが、気になるのが今冬のインフルエンザの大流行だ。国立感染症研究所によると、昨年12月29日までに全国の医療機関から報告されたインフルエンザ患者数は、1医療機関あたり64.39人を記録した。
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「これは’99年から行われている現在の統計方法では過去最多。今シーズンの累計患者数は593万7千人と推計されています。またインフルエンザの流行はピークを過ぎたという見方もありますが、まだ油断はできません。なぜなら、A型の流行後、今度はB型の感染拡大が懸念されているのです」(医療ジャーナリスト)
中村耳鼻咽喉科(愛知県春日井市)の院長、中村好克先生がこう警鐘を鳴らす。
「花粉症の時期にインフルエンザにかかると、鼻やのどを覆う粘膜が大きなダメージを受けます。その結果、粘膜の働きが悪くなり、細菌やバクテリアが付着しやすくなる。すると、さまざまな二次感染を起こすリスクも高くなります。副鼻腔炎や気管支炎のほか、中耳炎や肺炎などに進行する可能性もあるのです」
鼻やのどの粘膜は、いわばバリア機能をもった防波堤。免疫機能が働いて、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入するのを食い止める役割を果たしている。
「冬に猛威をふるう感染症は、インフルエンザだけではありません。新型コロナウイルスはもちろん、マイコプラズマや溶連菌、ヒトメタニューモウイルスなど、ウイルスや細菌などの病原体がもたらす風邪(症候群)も粘膜に大きなダメージを与えます。さらに、これらの病原体はこれまでほぼ規則性をもって順番に流行していたのですが、新型コロナウイルスが5類に移行されてからは同時期に流行することが多くなっています。
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まさにウイルスや細菌が戦国時代のように群雄割拠して、どの病原体がいつはやってもおかしくない状態が続いているのです」(中村先生、以下同)
インフルエンザの感染爆発により、肺炎による入院患者の数も増えている。重症化すると、命が脅かされる事態に発展しかねない。そこへ花粉症が重なると、どちらの症状も深刻化することが多いという。なおかつ同時に治療していく必要があるため、治療期間も長期にわたることに。
花粉症対策としては、本格的な飛散が始まる前に、感染症への万全の対策も忘れてはならない。
「マスクや手洗い、鼻うがいなどの徹底のほか、インフルエンザワクチンは、5カ月ぐらいで効果が切れるため注意が必要。たとえば10月に接種した人は、2月にはワクチンの有効性が切れはじめるので、インフルエンザB型の流行に備えて追加接種を検討するのも手でしょう」
さらに花粉症の初期症状が出はじめたら、即座に治療をスタートすることも重要だ。
「鼻や目がムズムズしたら、初期療法の開始のサイン。これまでは花粉が飛ぶ2週間前からでしたが、症状が出る時期は個人差があり、薬の効果も早く出るので、今では軽い症状が出たときが治療スタートの合図と考えてください」
初期療法をすることで2月後半から3月にかけての花粉ピーク時でも症状が軽く済むことが明らかになっているという。では、どんな治療を始めればいいのだろうか。
「病院で処方されるアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬、市販薬ではアレルギー性鼻炎薬を、症状が出ない日でも毎日使うことがポイントです。症状が出たときだけ薬を使うという人もいますが、それは間違い。花粉症治療は、なるべく症状を出さなくすることが基本。一度症状が出ると、雪だるま式に悪化して、同じ薬でも効きにくくなります」
早めに、しかも継続的に薬を使い続けることが大切だ。花粉が飛び始めたら、どのような対策をとるべき?
「外出時には、マスク着用が基本です。花粉を取り込まないだけなく、のどの乾燥を防ぎます。飛散が多い日には花粉対策ゴーグルをつけるのもいい。また鼻の入口にワセリンを塗ると、花粉がブロックされて鼻の中に入ってくる量が減ることが期待できます。鼻やのどの粘膜のダメージを軽減させることを意識して、花粉症対策グッズを積極的に活用しましょう。
また家の中に花粉を持ち込まない対策も。玄関で室内着に着替える、洗濯物を外に干さないなどを心がけてください。ウール系の上着は綿製品と比べて花粉付着率が10倍近くアップするので、この時期は避けたほうがいいでしょう」
念入りな対策を心掛けて、花粉症と感染症の“異常事態”から身を守ろう。
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