「こんな場面に出くわすなんて!」カラスに襲われる子猫を保護 “警戒心の塊”が、足の上で眠る甘えん坊に変わるまで

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2025年01月30日 11:20  まいどなニュース

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保護当時、タオルに包まれて飼い主さんのおうちへ向かった幸ちゃん(画像提供:幸(ゆき)日和さん)

今から3年前、茶白猫の女の子「幸(ゆき)」ちゃんは、命の危機に直面しました。

【写真】子猫時代…座る姿が愛らしい猫さん 保護した時、幸いカラスに襲われた傷はなかった

偶然、その瞬間を発見したのは、X(旧Twitter)ユーザー・幸(ゆき)日和さん(@chananbo)。当時、幸ちゃんは、生後推定1カ月半の小さな子猫だったといいます。

カラスに襲われている子猫を発見

2021年6月13日、飼い主さんは、休日出勤のため会社へ向かいました。梅雨入りして小雨の降る朝、いつもより1時間早く車を走らせていたといいます。

「会社まであと少しというT字路に差しかかる手前で、信号が変わるのを見て減速しました。そのとき、左折側の喫茶店前にカラスがいるのが目に入ったんです。その前に子猫がいることに気づきました。カラスに襲われているとすぐにわかり、思わず『こんな場面にほんまに出くわすなんて! どうしよう……』と声が出てしまったのを覚えています」

飼い主さんは、猫や動物関連の動画を見るのが好きで、似たような状況を目にしたことはあったものの、自分がその場面に遭遇するとは信じられない気持ちだったといいます。それでも見過ごすことはできず、若干の迷いを抱えながらも、車を降りて子猫のもとへ向かいました。

「カラスを追い払うと、子猫はその場にうずくまったままでした。ケガをして動けないのか、ただ怖がっているのかはまではわからず……。カラスはすぐ横の建物の上に移動し、子猫と私のことをじっと見下ろしていました。このまま放置すれば再び襲われるかもしれないと感じ、一時保護することにしたのです」

それが、幸ちゃんでした。飼い主さんは、車に置いてあったブランケットで雨に濡れた幸ちゃんをを優しく包み込みました。

「その日、私は上下、黒色の服を着ていました。もしかすると『さらに大きなカラスが来た』とこの子を驚かせてしまったかもしれません」

飼い主さんは、子猫を連れて仕事へ。そして、帰宅途中、動物病院に立ち寄りました。ノミや体の汚れはありましたが、幸いにもカラスに襲われた傷はなく、健康状態に問題がないことがわかったといいます。

「診察のあと、受付の方から『この子をお迎えするなら連絡をください』と言われました。そのとき、今後、どうするかまだ考えていなかったことに気づいたのです。家に帰り、この子を見つめながら『いろんなタイミングが重なって、この子と出会えた。自分が助けた命。責任を持って育てよう』と思いました」

猫と暮らすのは初めてでしたが、飼い主さんは「何とかなるが私の信条なので」と語り、小さな命を守ろうと考えたのです。

そして、念のため、幸ちゃんがほかの家から脱走した子ではないかを確認することに。通勤途中、保護した場所周辺に迷子の張り紙が無いかなど注意深く見るようにしました。そうして数日経ったころ、それらしい情報は無かったことから「じゃあ、我が子として迎えよう!」と改めて、決めたといいます。

こうして幸ちゃんは、飼い主さんの家族になりました。

幸ちゃんの成長を見守る日々

お迎え当初、幸ちゃんは怖がってなかなかケージから出てこなかったといいます。

「しばらくは警戒心の塊のようでした。ケージから出すと、家具などの隙間や後ろに隠れてしまうのです。触られるのも大嫌い。夜は、ケージの中のハンモックに隠れるようにして寝ていました」

そうして、生後推定6カ月がすぎたころ、ある出来事をきっかけに幸ちゃんと飼い主さんの距離はぐっと縮まることに。

「あるとき、油断したのか、遊び疲れたのか、私の目の前でゴロンと転がって眠ったのです。思わず、『おぉ!』と声が出そうになるのを我慢しました。その後は、すやすやと寝ている姿をそっと見守ったのを覚えています」

このことを機に、幸ちゃんと飼い主さんは少しずつ仲良くなりました。

「2歳を迎える前には、足の上に乗ってくれるように。ひとつひとつの“初めて”がとてもうれしかったですね」

幸ちゃんのペースにあわせて、根気良く見守った飼い主さん。それに応えるように、幸ちゃんも少しずつ心を開いてくれたようです。

甘えん坊になった幸ちゃんとともに

幸ちゃんは、現在3歳(取材時)になりました。

今でも怖がりで警戒心は強いほうだといいます。

「ちょっとした物音でもビクッ! となるドキドキちゃんです。ところが、地震の揺れや雷の音など自然の驚異にはなぜか動じず……。わけがわかりません(笑)。チビのころは、ひとりになりたがっていましたが、だんだんと寂しんぼうのかまってちゃんになりました」

2年前、幸ちゃんは思いがけない病にかかりました。飼い主さんは、日々のケアを工夫しながら、幸ちゃんに寄り添っています。

「避妊手術のあと、猫の知覚過敏症候群を発症しました。そのため、たびたび情緒不安定になります。1度は治ったのですが、1歳半ころに再び発症しました。明確な治療方法が無いため、症状が出たときはおもちゃなどで気を紛らわせたり、おやつなどで落ち着かせたりしています。彼女自身も症状を抑える術を学んだのか、自分で落ち着く場所へ行ったり、私のそばに走ってきたり……。ふたりでこの症状と向き合いながら過ごしています」

こうした症状がありながら、幸ちゃんは、日々、楽しく遊び、食欲も旺盛だといいます。

「『幸運な子だから大丈夫!』と信じています。命のある限り、楽しく生きていけるようにサポートしたいです。保護したあの日、生きながらえた命は今も続いています。毎日、朝を迎えられたら勝ったも同然です。これからも日々を大切に過ごしていきたいと思います」

幸ちゃんと飼い主さんの絆は、日を追うごとに強くなっています。お互いを信頼し、思い合う力はこれからの未来へと続いてくに違いありません。

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)

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