モバイルバッテリーでおなじみのアンカー・ジャパン(Anker)が、家庭用蓄電池事業に参入する。2025年春をめどに、最初の製品「Solix XJシリーズ」を発売する。システム価格は構成によって異なり、工事費込みで100万円台後半から300万円程度だ(ソーラーパネルは別途/見積もりにより異なる)。
これまでAnkerは、スマートフォンやノートPC向けの「モバイルバッテリー」や、AC(交流)電力も供給できる可搬型の「ポータブル電源」など、いわば“手軽に持ち運べるバッテリー”の領域で支持を集めてきた。同社はそれをさらに拡張し、屋外に設置する大容量の蓄電システムで家庭全体の電力を賄うソリューションを提供する。
●Solix XJシリーズってどんなシステム?
Solix XJシリーズは、「リン酸鉄リチウムイオン蓄電池」「パワーコンディショナー」と「太陽光パネル」(オプション)という、一般的な家庭用蓄電システムと同様の構成を取る。
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太陽光パネルで発電した直流電力は、パワーコンディショナーを通して蓄電池に充電される。蓄電池から家庭内の電力系統に電力を供給する際は、パワーコンディショナーを通して交流電力に変換される。
4人家族の日常利用を想定した場合、小容量の5000Whモデルで約1日分、中容量の1万Whモデルで約2日分、そして大容量の1万5000Whモデルなら約3日分ほどの電力を備えられるという。
本シリーズは、設置のしやすさも特徴としている。蓄電池とパワーコンディショナーの奥行きは約15cmに抑えられており、IP65等級の防じん/耐水性能を確保している。駆動音も29dB以下と静かで、生活環境への影響を最小限に抑えている。
製品保証期間は、基本的に蓄電池が15年間、パワーコンディショナーが20年間、ソーラーパネルが25年だが、「重塩害地域」(海岸から500m以内)に設置する場合は10年に短縮される。
「家庭用蓄電池」と聞くと、モバイルバッテリーのように「外部機器に直接給電できる」とイメージする人もいるかもしれない。しかし、家庭用蓄電システムというものは、家の分電盤と連動して住宅全体の電力供給をカバーすることに特化しているものがほとんどだ。本シリーズもご多分に漏れず、蓄電池からスマホやノートPCを直接充電することはできない。
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最近では電気自動車(EV)からの給電を受けられるシステムもあるが、本シリーズは現時点では対応しない。ただし、将来のラインアップ/システムの拡充時にサポートする可能性はあるという。
蓄電池は、安全性にも配慮している。リン酸鉄リチウムイオン電池は、発火のリスクが低い。その上で、各電池パックに8つのセンサーを搭載し、異常を検知するとすぐにアラートを発するようになっている。電圧が高まったときに発生する「アーク放電」を0.5秒以内に検出して遮断する機構も備えている。これは日本国内では必須とされていない機能だが、より厳格な海外の規格を考慮して搭載したという。
日本市場への投入に当たり、国内では「電気安全環境研究所(JET)」からの認証を取得し、国際安全規格の「IEC 63027」にも準拠している。
●Solix XJシリーズは「オンライン購入」が基本
従来の家庭用蓄電システムは訪問販売が中心だ。そのため契約や施工に複数業者が関わることもあり、導入までの道のりが煩雑になりやすかった。
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それに対して、Ankerは一連のコミュニケーションを一手に引き受け、見積もりから契約、補助金申請までをオンラインで完結できる仕組みを構築した。
概算見積もりは手軽にスマホで確認可能で、自治体ごとに異なる補助金の申請手続きも、Ankerがサポートする。
Solix XJシリーズでは、専用アプリも提供される。アプリでは蓄電池の充電状態や発電量の確認が可能で、「FIT制度(固定価格買取制度)」を利用して発電した電気の一部を売却している場合は、売電状況も確認できる。
なお、現時点において本シリーズはオンライン販売のみとなるが、今後は住宅メーカーや住宅設備関連企業との販売協力体制も広げていく方針という。
●価格は100万円台後半から(構成によって変動)
冒頭でも触れた通り、Solix XJシリーズのシステム価格は工事費込みで100万円後半から300万円程度と幅がある。これは蓄電池の容量だけでなく、実際の工事費が環境によって変動するためだ。オンライン購入時は、概算見積もりが出るようになっている。
なお、ソーラーパネル(14枚セット推奨)はシステムに含まれておらず、新規設置する場合は追加で50万〜100万円ほどの出費が必要となる。15年〜20年の提携ローンも用意しており、ローンを使った場合の支払い目安は月々1万〜2万円程度となる。
Ankerによる試算では、1万Whタイプを4人家族の一軒家で導入する場合、月額約1万5500円の電気代削減効果が期待できるという。地域によって異なる補助金などを含めて実際のコストパフォーマンスは変わってくる。防災対策と電気代削減の両面で投資に見合う価値があると判断できるケースもありそうだ。
なお、本シリーズには購入特典として「Anker公式オンラインストア」で使える10万円分のクーポン、10年間の「安心サポート」(ベネフィットワンの利用権+家電修理補償)と、Ankerオンラインストアの有料特典プログラム「Anker Prime Pass」(年額1980円)の10年間利用権が付属する。
さらに、新規参入記念のキャンペーンとして、3月末までに成約(購入申込完了)すると、太陽光発電で駆動する屋外用ライトカメラ「Eufy Solar Wall Light」の無料提供/設置も実施する。
●“電気を蓄える”ことを当たり前に
災害リスクが高まる中で、停電時に数日間電気を使えるメリットは大きい。また、昼間に太陽光で発電した電力を蓄電池にためて、夜間に使用することで電気代を節約できる経済面での効果も、電気料金の高騰を受けて高まる傾向にある。
そして、長時間の停電中でも家電を動かし続けられる安心感は、リモートワークを支える通信環境の維持にもつながる。Ankerは、これまで培ったモバイルバッテリーの技術やブランド力を据え置き型へと拡張し、"電気を蓄える"という選択肢をより身近にしようとしている。
Solix XJシリーズの実機は、1月31日から「ららぽーとエキスポシティ」(茨城県つくば市)と、「Anker Shop 渋谷」で展示される予定だ。災害対策と電気代削減の両面から気になった人は、まずオンライン上でシミュレーションや見積もりを試してみるといいだろう。
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