えっ、イトーヨーカドーの文字が光るの? 「ハトグッズ」を通年販売にした理由

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2025年01月31日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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イトーヨーカドーの「ハトグッズ」が攻めすぎ!

 パンツに、ハトハトハトハトハト――。


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 色は赤・青・白。ド派手なデザインと色づかいのパンツが登場すると、SNSではこんなコメントが飛び交った。「なんだこりゃ。攻めてるな〜」「ダサいが、かわいい」「ハト柄がよくて、買ってしまった」といった具合に、おおむね好意的な声が目立った。


 このパンツが登場したのは2020年のこと。イトーヨーカドーが創業100周年を迎えるにあたって、同社のロゴ「ハトのマーク」を使ったパンツを販売したのだ(期間限定)。


 SNSで盛り上がったものの、売り上げは期待したほどではなかった。しかし、「ハトのマークを使ったパンツって、どんなモノなの? 実物を見てみたい」と興味を持つお客が多く、店に足を運ぶ人が目立った。


 ネットで話題になったので、商品に集客力があるのではないか。パンツは買わなくても、来店すれば何か買ってくれるかもしれない。同社はこのように考え、翌年も夏に販売。パンツだけでなく、食パンの袋にハト、お茶碗にもハト、水筒にもハト。さまざまな商品にロゴのハトを施し、そのたびにSNSで話題になったのだ。


 期間限定で、ちょっとずつちょっとずつ販売してきたわけだが、2024年9月に転機があった。


 ご存じのように、イトーヨーカドーは業績低迷を受け、全国で閉店が続いている。青森県の弘前店も2024年9月にシャッターを下ろすことになったわけだが、グッズの担当者はあることを考える。「閉店セールと一緒に、ハトのグッズを販売できないか」と。


 トレーナーやTシャツにはハトの柄だけでなく、大きな文字で「イトーヨーカドー」と書かれている。この商品を目にした担当者は「ちょっと売れないかも」と心配したものの、それは杞憂(きゆう)に終わった。商品を手にするお客が相次いだのだ。


●店頭販売の反響


 閉店セール中に販売したハトグッズは好評で、用意していた商品は瞬く間に完売した。店じまいまでまだ時間があったため、急きょ追加生産を決めた。できたてのグッズを並べると、再びあっという間に完売。また、追加生産……。


 こうしたやりとりを5回ほど繰り返していくうちに、担当者はあることを考えた。「これまでは期間限定で扱ってきたが、通年で販売してもいいのではないか。店頭だけでなく、ネットでも買えるようにしたほうがいいのではないか」と。


 このような流れを受けて、今年の1月から全国の68店舗で扱っている。店頭またはネットで12アイテムを販売したところ、どのような反響があったのか。想定の1.4倍ほど売れたそうだ。


 ハンドタオルやトートバッグが人気のようだが、ここで問題をひとつ。「ハトが大きく描かれているデザイン」または「たくさんのハトが描かれているデザイン」どちらの商品が売れているのか。


 個人的な感想だが、「大きなハト」はイトーヨーカドー感が強く、「ハトがたくさん」はおしゃれな印象を与える。というわけで「『ハトがたくさん』のほうが売れているはず」と思っていたが、実際には「大きなハト」のほうが圧倒的に支持されているそうだ。


 いくつかのグッズがある中で、個人的に気になったのは「光る(特大)ハトロゴスタンド」(2万3980円)である。左側にハトをデザインして、真ん中にイトーヨーカドーの文字が並ぶ。アクリル製のスタンドで、サイズは縦20×横58センチ。そこそこ大きいので、部屋に置くと存在感が伝わってくる。


 インテリアとして買うの? 本当に購入する人はいるの? と思っていたら、しっかり売れているようで。単価が高いこともあるが、金額ベースで見ると、全アイテムの中で「1位」だそうだ。


 通年販売に切り替えたことで、今後は毎月、新商品を投入するという。今度は”光らない”ハトロゴスタンドの販売を予定していて、正式な発表があれば、再びハトマニアの間で話題になりそうである。


●ハトの魅力


 それにしても、なぜ企業ロゴをあしらった商品が売れているのか。個人的には、2つの理由があると思っている。1つは「懐かしさ」である。


 ご存じのように、ここ数年レトロブームが続き、昭和を感じさせるグッズがあふれている。お客からは「ハトのマークは懐かしいねえ。ちょっと買ってみようか」という声がよく聞かれるそうだ。一方、現場で働く人の受け止め方は違う。「えっ、これって懐かしいデザインなの?」と驚く声も少なくないという。


 もう1つは「企業ブランドへの親近感」である。お客との接点を増やすために、企業ロゴをデザインした商品はたくさんある。例えば、スターバックスのコップには人魚(ギリシャ神話に登場するサイレン)が描かれ、AppleのPCにはリンゴのマークが刻まれている。ファミリーマートの靴下は、看板のカラーを反映したデザインになっている。


 なぜ、お客は企業ロゴに興味をもつのか。ハトグッズを手にしたいという気持ちは、企業への親近感の表れではないだろうか。先ほど、大きなハトをあしらった商品がよく売れていると述べたが、オシャレさよりも企業ロゴを優先するのは、それだけブランドへの愛着を感じているからかもしれない。


 さて、他社の事例が豊富にあることを考えると、なぜイトーヨーカドーは「ハト」をもっと早くデビューさせなかったのか。創業100周年のタイミングは遅すぎるように思えるが、その点について「毎日のように現場で働いていると、企業ロゴについてじっくり考えることがなくて。ですが、お客さまから『かわいい』という声をいただき、改めてハトの魅力に気付かされました」(担当者)


 会社の業績は依然として厳しいが、赤・青・白のハトはどこまで飛び立つのか。売れ行きは“パタパタ”と羽ばたくかもしれない。


(土肥義則)



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