興南・我喜屋優監督はなぜ授業の重要性を訴えるのか 「高校野球は3年で終わるけど、人生のスコアボードには終わりがない」

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2025年01月31日 07:20  webスポルティーバ

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群雄割拠〜沖縄高校野球の現在地(3)
興南・我喜屋優監督インタビュー(後編)

 今のままでは高校野球は衰退すると警鐘を鳴らす、興南高校の我喜屋優監督。はたして、これからの高校野球に必要なことは何なのか。我喜屋監督に聞いた。

【人生のスコアボードには終わりがない】

── 強豪私学は選手を全国から集める一方、公立校は部員不足の影響をモロに受け、二極化が進んでいます。

我喜屋 (2010年に)沖縄の興南が優勝した時は「ゴーヤーチャンプルー軍団」と言われたけど、地産地消が少なくなった。そうすると人気がなくなるのは当たり前のこと。特定のチームが常に勝っているから。興南の春夏連覇は全員が沖縄の人間で、南部のおじいちゃん、おばあちゃん、北部のジジイ、ババアもみんな喜んでくれました。地元に愛されて、感動させるようなチームが高校野球は大事なのです。

 その延長で、社会に出てからも「あいつのおかげで助かった」「カバーリングがすごいな、あの子は」とみんなから喜ばれる。高校野球は3年で終わるけど、人生のスコアボードには終わりがないんだから。野球のスコアボードだけで頭がいっぱいの学校があるけど、人生のスコアボードまで指導者は考えてほしい。

── 沖縄ではエナジックスポーツやKBC、日本ウェルネス沖縄など新鋭の私立校が台頭しています。今は「多様性」の時代と言われますが、高校生に新しい選択肢ができるのはいいことだと思いますか。

我喜屋 それはいいことですよ。ただし僕が言っているのは、長い人生を歩むための基本は高校3年までの授業にあるよ、と。大学はそれ以上の専門、その先の社会は専門が重要になる。大学への進学と、社会を生き抜くためには、高校3年間の授業はとても大事だよっていうことなんです。その次に部活があるということを考えないといけない。

── 「文」の次に「武」が来ると。

我喜屋 逆になると、とても心配。人の子どもだから......と、するのではなくてね。親も野球バカには育てたくないと思うし、高校に入れるからには「文武両道の道を歩ませてくれる」っていう期待もある。その期待に応える意味でも、将来に向けて「なぜ授業するの? 将来の選択肢を増やすためだよ」という意味で、ちゃんと理由づけてやってくれれば、こっちが言うのは余計なことです。

── それでも指摘するのはなぜですか?

我喜屋 僕は、沖縄の子はみんなかわいいから。沖縄の子どもたちがディスポートして(楽しんで)、海を越えて頑張ってほしい。やっぱり野球バカは育てられない。先に僕は社会の道を行っているから、「この道ってのはこうだよ」「ここに行ったら危ないぞ」「もっとこっち側を歩け」と、ある程度、右と左を教えなきゃいけないよね。

【条件闘争でウチが負けるのは当たり前】

── 沖縄の高校野球では「打倒・興南&沖縄尚学」と目標にされています。興南はどういう存在としてあり続けたいですか。

我喜屋 ウチが自慢できるのは、本当に授業をちゃんとやってから、野球をやっているということ。高野連のいろんな規定を遵守して、寮費は全部もらう。みんな寮で食事をするんだから、それは平等で当たり前。でも条件という面で、違うところに行く子も多いと思う。もちろん、「学力的に興南に行けない」と最初からあきらめる子もいるけど、そこはもっとチャレンジしてほしい。

 もっと自慢するところは、「ウチの子は試合に出られなくてもいいので、3年間お願いします。心を鍛えてください」という親がけっこう多いんです。だから常に部員は(1学年)30人体制で来ている。一番多かったときは(3学年で)150人いたときもあったけど、それでは多すぎて野球どころじゃなかったです。

── 条件をつけなくても、興南で野球をしたいという子はいる、と。

我喜屋 もし興南をはじめ、多くの学校が寮費をタダにするとか、入学条件の競争をするようになったら、高校野球は破滅するよ。いっときの条件より、ウチは将来を約束する。入部希望者が条件闘争をしてきたら、僕は「ほかに行ってください」って言います。条件闘争でウチが負けるのは当たり前。負けるというか、(学生野球憲章を)守っているから。ちゃんと競争のなかから、平等ななかから人生を歩んでほしい。高校3年間は準備期間だからね。

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