コクヨが“大人向け”「しゅくだいやる気ペン」を開発 頑張りを可視化するIoT文具、Makuakeで先行販売へ

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2025年01月31日 12:51  ITmedia PC USER

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 コクヨは1月29日、IoT文具「大人のやる気ペン」の先行販売をMakuakeで始めた。プロジェクトの期間は3月15日まで、価格は8910円(2台セットは1万6830円)からで、その他に「しゅくだいやる気ペン」とのセットや、コクヨ文具を付属したスターターキットなどを用意している。一般販売は春頃に開始し、Amazonや楽天市場などで取り扱うという。


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 報道陣向けに行われた製品発表会では、開発に携わったコクヨの中井信彦氏(経営企画本部 イノベーションセンター)が、開発に込めた思いを語った。会場内に設けられたタッチアンドトライで試作機に触れる機会も得たので、発表会の内容、ならびに製品のファーストインプレッションをお伝えしたい。


●「大人のやる気ペン」とは?


 大人のやる気ペンは、2019年にコクヨが発売した「しゅくだいやる気ペン」に続くIoT文具だ。子どもたちの学習習慣化のために作られたはずのしゅくだいやる気ペンを大人がスキルアップに使っているという実態を踏まえ、24年6月から開発に着手していたという。


 「ペン」という名称を使っているが、その実体は市販の筆記具やスタイラスペンに取り付けるセンサーである。楕円形のシンプルなデザインで、サイズは約24(幅)×35(奥行き)×51(高さ)mm、質量は約8gと軽く、装着してもじゃまにならない。


 稼働時間は、本体のみで1日2時間の学習を想定して最長5日間、充電ケースの併用で最長25日間となっている。なお、充電ケースは完全ワイヤレスイヤフォンのそれと似たような外観をしている。


 勉強中には、3軸加速度センサーで測定した動きのデータを「やる気パワー」として記録し、搭載しているLEDの色を変化させることで可視化する。勉強後は、本体内のメモリに保存したデータをスマートフォン専用アプリ「大人のやる気ペン」と連携して可視化する。


 アプリにたまったデータは、1日、1週間、1カ月単位でグラフ化して見ることができる他、カレンダーで勉強した日と、しなかった日をチェックできるようになっている。


 「大人のやる気ペン」アプリは、「可視化」、報酬と応援の「リアクション」、双方向ではない「ちょうどいい距離感のコミュニティー」でモチベーションを持続させる。


 可視化は前述したようにグラフ化やカレンダー機能で対応する。目標到達時に「合格」ボタンを押すことでメダルのようなスタンプをもらうことができ、それをどんどんためることで、さらなるやる気を引き出す──という仕掛けだ。


 アプリ内でスゴロクを進むのは自分のアバターだ。「ポット族」と呼ばれるアバターは、はじめは青いポットに双葉を生やした状態で登場するが、「やる気パワー」の量に応じてコマを進めることで、さまざまなアイテムを獲得してカスタマイズできるようになる。これが報酬のリアクションだ。


 学習の度合いや傾向により、キャラクターから叱咤激励されることもある。子どもであれば、勉強をサボると親から小言を言われるが、大人の場合はそのような機会を得ることが少ない。そこでキャラクターが褒めたり叱ったりしてくれるというわけだ。これが応援のリアクションになる。


 大人の孤独な学習を支えるために、「ナカマカード」という仕組みも用意されている。これは、スゴロクを進むことで出会うユーザーのカードから、その人が実践している勉強のコツ、またなぜ勉強するのかといった理由を知ることで、「自分だけではない」という励みを得られるというものだ。双方向コミュニケーションはできないが、同じ目標に向かって進む仲間の存在を知るだけでも心強いと感じそうだ。


●しゅくだいやる気ペンとの違いは?


 子供向けに作られたしゅくだいやる気ペンでは、筆記具に取り付けるのに時間がかかる、対応筆記具が7〜8mmの鉛筆のみ、約19gと重いという特徴があった。また、充電するには本体の端子に直接Micro USBケーブルを挿す必要もある。


 大人のやる気ペンはオープン型なので対応する筆記具の幅が広がった。鉛筆以外にも、シャープペンシル、ボールペン、デジタルスタイラスペンなどで利用でき、直径13mmにまで対応している。ケース型充電器も付属する。


●大人のやる気ペン、開発ヒストリー


 子供向けしゅくだいやる気ペンの誕生から、5年で出荷台数は5万にのぼったというが、発売後のSNSの反応で「大人にもやる気ペンが欲しい」という声をちらほら見かけていたと中井氏は言う。最初のうちは冗談だろうと考えていたが、実際に資格勉強のために使っているというレビューを2年前に発見した。


 しゅくだいやる気ペンを使う大人へアンケートを取ったところ、資格試験や自己学習用途が70%であり、モチベーションの維持に難しさを覚えているというユーザーの存在を知った。


 学ぶ理由はさまざまだが、「学習することで自分を鼓舞したい」「成長していないと不安を感じる」「ライバルに勝ちたい」など切実さが垣間見られたという。


 アンケートでは、直近1年で資格取得に取り組んだという人は全体の約4分の1、資格取得を諦めた人は全体の約7割、書いて勉強するという人は全体の8割であった。しかし、勉強する上で課題に感じていることの最大のものはモチベーションの維持であり、3割以上がそのような回答をしている。


 「成長するようにと勧める言葉は多いが、そこへ至るまでの方法をアドバイスしてくれる言葉は少ない。“もうちょっとだけやろう”というマイクロモチベーションを得て、学習を習慣化するための助けにしてほしい」(中井氏)


●実機に触れてみた……毎日欠かさず使いたくなった!


 会場に設けられたタッチアンドトライスポットでは、大人のやる気ペンを使い、アプリの挙動を見ることができた。


 説明によれば、「通常は5分ほど動かさないとLEDのカラーは変わらないが、今回はデモのため数十倍速に設定しており、30秒ほどで変化が見られるようにしている」とのことだった。


 使うには、大人のやる気ペンを適当な筆記具に取り付けてから、本体のボタンを3秒間長押しする。すると、LEDランプが白色に点滅してオンになったことを知らせる。


 動かしていないと加速度センサーが反応せず、勉強したという記録も残らないので、思い付くまま用意されたノートに書き続けたところ、1分未満でピンクっぽいものへとLEDランプの色が変化した。やる気パワーがたままったようだ。


 そこで用意されたアプリを開き、大人のやる気ペンを接続し、画面が変わったところで大人のやる気ペンを振るとアバターにくっついている植物が成長し、リンゴのようなものを5つ実らせた。やる気パワーの量により、実る個数は異なるとのことだ。


 実ったリンゴの数だけスゴロクのコマを進められる。コマに配置されているポット族は誰かのアバターであり、「カードを見る」ボタンをタップすると、そのユーザーのプロフィールやなぜ勉強しているのかなどを見ることができる。


 出会ったアバターのカードを集めて、見返すことも可能だ。双方向でのやりとりはできないものの、コレクションとしても楽しめそうだと感じた。


 カレンダー機能では、勉強した日とそうでない日が一目瞭然である。担当者によれば、「有料の“金のポット”を販売予定」とのことだ。これは、パーフェクトを目指したものの、やんごとない事情によりしおれてしまった双葉をイキイキとさせるためのものだという。「子供向けでは、親から支持されなかった機能だが、大人向けではぜひ導入してほしいという声が多かった」という。


 日々の学習時間や、やる気パワーを可視化するのも良いが、個人的に最も刺さったのは、目標達成時にもらえるスタンプ機能である。もちろん、日々の頑張りがなければ、目標到達はあり得ないのだが、どれだけの目標を達成したかを眺めるのは、実に心地よい。このスタンプをもらうためだけに頑張りたいと思えるほどだ。


 なお、学習後にアプリと接続するという説明を受けたが、1時間ほど勉強してからアプリ接続し、「もう少し頑張ろう」と勉強を続けた場合はどのようになるのだろうか。


 「大人のやる気ペンを使っている間は、アプリとの接続が切れる」と中井氏が説明してくれた。理由は「筋トレタイマーのように、学習のはじめにスマートフォンを起動するタイプだと、その瞬間にSNSなどの通知が届き、やる気が削がれるという意見があったから。学習中はスマートフォンと切り離した運用をできるように設計した」とのことだ。しゅくだいやる気ペンで培った学習習慣化へのノウハウが詰まった大人のやる気ペンは、毎日使いたいと思わされるデバイスとアプリであった。


 現在は、完全無料でアプリを利用できるが、将来的には他の人の学習量などを見て、さらにモチベーションを上げるための「他者とのデータ比較機能」を有料で実装予定だという。価格と時期については「データがある程度整わないと有料化するわけにいかないので、台数が出て、利用者が増え、利用時間もそろったところで行いたい。価格もその時点で決めたい」と中井氏は回答していた。


 発表会が終わりに近づいたところで、中井氏は「人生100年時代、と聞くとネガティブな気持ちになりがちだが、『まだ変わるための時間が残っている』とワクワクしてほしい」と語り、次のように締めくくった。


 「ヒアリングしていく中で感じたのは、学び続ける人はカッコいい、ということ。人生を変えるという決意をして、それに取り組む、積み上げていく。そういう人たちは年齢に関係なくカッコいい。そういうカッコいい人たちを私たちはこれからもずっと支えていけるような事業をしていきたい」(中井氏)



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