資生堂は、独自開発の美白有効成分4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)の皮ふ浸透性を高める「4MSK/フリュイド浸透促進技術」を開発した。
この技術は、常温で固体の4MSKを他の成分と組み合わせることで液体化し、肌に塗布した後も液体(フリュイド)状態を持続させる画期的な技術(図1)。これにより4MSKの皮ふへの浸透量が増加し、美白効果が高まることを確認した。今後、今回開発した新たな浸透促進技術を応用し、浸透性に優れ高機能で安全・安心なスキンケア製品を開発していく。
研究の背景として同社は、生活者の「明るい肌」への憧れに向き合うべく、1990年代から美白有効成分を次々と開発し、配合した製品を数多く発売してきた。しかし近年の、美容医療市場の拡大などによる明るい肌を叶える手段が多様化する中、安全でさらに効果の高い美白化粧品、医薬部外品の開発のためには美白有効成分の浸透を高める技術の強化が課題であるとした。
この課題に対し、近年化学の分野で注目されている「イオン液体」に着目。イオン液体は融点(固体が融解し液体になるときの温度)の高いイオン性の物質同士を組み合わせることで、元の物質の融点より低い温度で液体になる新しいタイプの液体(図2)。常温で固体の4MSKを他の物質と組み合わせイオン液体化ができれば、肌上でも液体の性質を持続させることが可能になると考え、4MSKと組み合わせることで液体化する物質の探索を進めたという。
4MSKと組み合わせる物質やその組成の検証を100通り以上で実施。その結果、保湿成分トリメチルグリシンを最適な配合比率で組み合わせることで4MSKが液体化することを見出した(図3)。この配合比率で2つの成分を基剤に配合すると、4MSK単独で基剤に配合する場合と比べ、4MSKが皮ふへ約2倍浸透することを確認(図4)。4MSKの皮ふ浸透性を高めるこの技術を「4MSK/フリュイド浸透促進技術」と名付けた。
4MSK/フリュイド浸透促進技術の効果を3次元培養皮ふモデルで検証した結果、4MSKのメラニン生成抑制効果を高める効果があることが分かった(図5)。また4MSKにはメラニンが蓄積した角層の剥離を促進する効果があるが、この技術を用いることで、その効果を高める可能性があることも示唆された。