楽天グループは1月31日に都内で「楽天新春カンファレンス2025」を開催した。楽天新春カンファレンスは楽天から事業戦略を共有するとともに、店舗同士のつながりの場を提供するイベントとして毎年開催している。今回も楽天グループの三木谷浩史会長(楽天グループ社長を兼務)が登壇し、AIとモバイルについて語った。
●AIを使いこなせない企業、組織、人の未来は厳しいかもしれない
三木谷氏はまずAIを人の頭脳に例えて説明。人間の脳には「約860億個の神経細胞が存在する」ことを挙げ、「アイデアや創造性が出てくる」とした。AIにおいては膨大なデータを並列処理するGPUによって、AIの進化が加速しており、人間の頭脳に当たるコアの数は、CPUよりもGPUの方が圧倒的に多いという。
GPUとAIの進化で実現することとして、指示に基づいてコンテンツを生成する「生成AI」から、意図を理解して特定の目標を達成するタスクを実行する「AIエージェント」、さらには、人間レベルの自律性を持ち、獲得知識の範囲で適切に対応する「汎用AI」、決まっていない事項にも自律的に対応できる「超知能」に至るまでを紹介した。
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三木谷氏は「実際の取引までAIがやってくれるところまで行くかもしれない」と未来を予測し、「AIを使いこなせない企業、組織、人の未来は厳しいかもしれない」と語る。そんなAIについて、楽天グループでは「有能なエンジニアがさまざまなAIを開発している」という。
その1つに、三木谷氏は日本語に最適化した高性能の大規模言語モデル(LLM)の基盤モデルである「Rakuten AI 7B」を挙げる。「ChatGPTより専門的にフォーカスしたAI」で、「さまざまな企業のAIと比べても世界的水準においてもトップクラス」だと胸を張る。
さらに、AIアプリケーションを開発する企業や技術者などの専門家を支援することを目指し、楽天グループが2024年12月18日に発表したAIモデルの「Rakuten AI 2.0」「Rakuten AI 2.0 mini」を紹介。前者は新しい大規模言語モデルで、後者は楽天初の小規模言語モデル。楽天グループはこれら2つのAIモデルで、AIアプリケーション開発の促進につなげる。
三木谷氏は、楽天モバイルが2025年1月29日に提供を開始したばかりの法人向けの生成サービス「Rakuten AI for Business」にも触れた。文書などの資料作成、議事録や要約、外国語の翻訳、施策アイデアの立案、キャッチコピーの検討など、業務上のあらゆる場面で生産性が向上するとしている。
業務の効率化といえば、楽天新春カンファレンス2025に参加した楽天市場の出店者にも大きく関わる話題だ。三木谷氏は、楽天グループが2024年3月から提供している、AIを活用した店舗運営支援ツールの「RMS AIアシスタント β版」を紹介。
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同ツールは、商品説明文の生成や商品画像の加工、ユーザーへの問い合わせ対応用文章の生成、自店舗の売り上げ傾向などのデータ分析・解説、店舗運営に関する疑問を解消するためのAIチャットbotなど、店舗運営の日常業務に関わる多様な機能を備える。三木谷氏によれば、「既に3万以上の店舗が利用している」そうだ。
●楽天モバイルユーザーが増えると楽天市場の売り上げが伸びる
そんな楽天市場の出店者にとって、楽天モバイルの契約者が増えることは意義があること、三木谷氏は力説する。
楽天モバイルは、最強家族プログラム、最強青春プログラム、最強子どもプログラムの各種割引により、若年層を中心に他社からの乗り換えが加速しており、「若者のシェアが非常に高い」(三木谷氏)という。三木谷氏が公表した資料によれば、特に10〜30代が他社から楽天モバイルへ移行していることが分かる。
楽天モバイルの軸とした楽天グループシナジーについては、再三にわたって語られていることだが、三木谷氏は「1年間で3人に1人が(楽天グループの)新しいサービス使う、と考えてほしい」と訴え、楽天モバイルの契約により楽天エコシステム(モバイル以外のサービス)の利用も増えることを説明した。
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さらに三木谷氏は、楽天モバイルと楽天カードのユーザーは楽天市場での購買金額が大きいことにも言及する。2024年に開催された楽天スーパーSALEでは、「楽天スーパーSALEにおける売り上げは、楽天モバイルの利用だけでも30.1%向上、楽天カードだけでも18.3%向上。両方に入る(利用してもらう)といきなり71.9%も向上する」という。
楽天モバイルとして実施した取り組みについては、2024年12月に開催の「楽天モバイル 最強感謝祭」を紹介。「Rakuten最強プラン」契約者を対象に、30以上の楽天グループのサービスから総額3億円相当の特典を進呈する、という内容で、「楽天モバイルの契約者などが1万3000円以上余分に買った」という。
この感謝祭が「大盛況だった」(三木谷氏)ことから、楽天モバイルは「感謝祭を3カ月に1回のペースで開催する」と同氏。2025年に開催が決定した月は3月、6月、9月、12月。楽天モバイルとしても「特典」を通して楽天グループサービスの利用を促したいようだ。
三木谷氏は、「楽天モバイルのデータを使って、店舗の皆さんがプロモーションできる広告商品を提供していきたい」と今後の店舗に関する取り組みを明かした。「楽天なくして生活はない、AIなくして未来はない、モバイルなくして成功はない」と、楽天市場の出店者に強く訴えた。
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