女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「子育て」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2022年2月9日 記事は取材時の状況)
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育児中で困ることが多いのが、交通機関を使った移動ではないでしょうか。ベビーカーを使えば、その大きさから周りに嫌な顔をされ、かといって抱っこ紐で移動しようとすると、子どもが大きくなるにつれ、身体も限界に。
今回は、そんな育児中のママが遭遇したエピソードを紹介します。1歳になる娘をもつ竹本由美さん(仮名・35歳)は、子どもとの外出が億劫だといいます。
◆つねにワンオペ。赤ちゃんとの移動がストレス…
「都心住まいなので車も持っていないし、子どもを乗せられる電動自転車もほとんど10万円以上するので、幼稚園に入園するまでは買わない予定なんです。だから、いつも移動はベビーカーか抱っこ紐の2択です」
子どもが赤ちゃんのうちも、定期検診や通院など親子での外出は避けられないはずですが、専業主婦の由美さんはそのすべてを一人でやっているといいます。
「ベビーカーか抱っこ紐で移動するのですが、いつも大荷物で……。うちはミルクなので、お湯を入れたステンレスボトルや粉ミルク、ボーロなどのおやつも持ち歩くので、いつも大荷物で……」
電車や地下鉄などは、ホームに行くまでに何度も階段を上り下りしなければいけません。
「エレベーターに満員で乗れなかったり、ホームの端まで行かないとエレベーターがなかったりして、駅構内をものすごい距離を移動することもあります……。ここ1年は、遠回りになっても、ベビーカーを畳まずに乗ることができるバスを使うようになりました」
◆泣き止まない娘に「うるさい!」と怒号が
路線によっては本数が多いバス。しかし一度乗ると密室のため、重苦しい空気を味わうことも……。
「その日は、小児科に行く予定でした。席が空いていたので私は座り、娘の乗るベビーカーはすぐ隣に。発車すると、娘はバス内の暑さからなのか、だんだん機嫌が悪くなっていって。寝ていてほしいと思って、ベビーカーに座る娘に『ねんねですよ〜』と話しかけていたんですが、最悪なことに娘は大泣きを始めました」
由美さんが、ベビーカーの中にいる娘に泣き止むようにあやしていると、どこからか声が聞こえてきたそうです。
「最初は、小声で『うるさい』と聞こえてきたんです。まさか、そんなこと言う人がいるなんて……と、気のせいかと思いました。どんどん娘の泣く声が大きくなっていくと、後方席の年配女性の『うるさいんだよ!子どもを抱っこしないから泣くんだよ!』という怒鳴り声が響きました…」
◆抱き上げてみるも、逆効果に
由美さんは立ち上がり、ベビーカーに乗っていた赤ちゃんを抱っこしたそうです。
「揺れるバスの中で立ち上がり、なんとか娘をベビーカーから抱き上げました。そして椅子に座って抱っこしました。安定感がないのがよくなかったの、逆効果になってさらに大泣きしました」
バス内に鳴き声が響き渡ると、状況は悪化します。
「今度は、その年配女性が『子どもが嫌いなんだよ』と言ってきたのです。降りられればよかったのですが、目的の停留所まであと10分。結局、病院まで乗らないと乗り直しになるので、必死で娘をあやしました」
◆泣き止まない赤ちゃんに声をかけてきたのは…
慌てふためく由美さんの後ろの席に座っていた女性が、由美さんに声をかけてきたそうです。
「後ろから肩をトントンとするので、また怒られるのかと思って振り返ると、スマホの画面を見せてきました。その時は知らなかったのですが、ネットで話題となっていた赤ちゃんが泣き止むという動画で『これを見せたら泣き止むと思う』と言ってきました」
多分、20代前半くらいの年齢でかなり派手めなファッション。最初はちょっと警戒してしまいましたが、ずっと娘に動画を見せながら話しかけてくれたんです」
しかし、赤ちゃんは泣きやまなかったため、若い女性はある行動にでます。
◆さらに心穏やかになる出来事が
「動画に合わせて、女性がフフフンって歌いだすと、今度は別の年配女性もフフフンってハミングを始めたんです。殺伐としていたバス内に、娘をあやす歌声が優しく響いて、なんだか気持ちも穏やかになっていきました」
バス内が妙な一体感に包まれたあと、文句を言ってきた年配女性が別のバス停で降りました。
「終点に着くと、若い女性が『実はうちにも子どもがいるんです』と言って降りていきました。あれから、人を見た目で判断したらいけないって思いましたね」
公共の場でこそ、他人への気遣いが問われると言えます。どんな立場にあろうとも、優しくできる余裕が持てるようになりたいですね。
<取材・文/池守りぜね イラスト/ただりえこ>