関東では今週から東京開催がスタート。その開幕週に行なわれる重賞は、GIフェブラリーS(2月23日/東京・ダート1600m)の前哨戦となるGIII根岸S(2月2日/東京・ダート1400m)だ。
本番のフェブラリーSと同時期に、高額賞金レースの海外GIサウジカップ(キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)が創設され、近年ではダート路線の主力がそちらに流れるようになった。おかげで、ここ最近のフェブラリーSは「上半期のダート王決定戦」というレベルにはないかもしれないが、そこから飛躍を遂げる新星が次々に登場している。
そのため、そのステップレースとなる根岸Sでは、一気に"主役"奪取を狙う新興勢力が集結。ここ数年は特に、将来性のある面々がハイレベルなレースを繰り広げている。スポーツ報知の坂本達洋記者もこう語る。
「根岸Sはもともと、フェブラリーSの前哨戦として好メンバーが集う面白い一戦です。実績馬はもちろんのこと、大一番へ向けてここで賞金を加算しておきたい馬も数多くいるため、勝負をかけてくる新興勢力の台頭が期待できますからね」
そんな熾烈な争いにおいて、レースの行方を左右するのはどういった点か。坂本記者はこんな見解を示す。
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「一番は、舞台となるのが最後の直線が長い東京、というのがポイント。近年の結果を見ても、決め手のある馬がその持ち味を存分に発揮して上位争いを演じている印象が強いです」
実際、過去10年の結果を振り返ってみると、逃げた馬が馬券圏内(3着以内)に粘ったケースは一度もない。2番手からの粘り込みも2回あるだけだ。坂本記者が続ける。
「2021年には10番人気のワンダーリーデルが、4角16番手から2着に追い込んで波乱を演出。2020年も勝ったモズアスコット、3着のスマートアヴァロンが、中団、後方からそれぞれ差してきました。前目の好位で運ぶにしても、長く脚を使えるタイプが活躍しています。昨年の覇者エンペラーワケア、一昨年の勝ち馬レモンポップも、当時は好位で控える形から結果を出しました」
坂本記者が触れた昨年、一昨年の勝ち馬はいずれも1番人気だったが、今年も人気馬が上位争いを演じるのだろうか。坂本記者は「絶対視は禁物」と言う。
「上位人気が予想されるなかで、フリームファクシ(牡5歳)は東京・ダート1400mが今回初。加えて、前走のリステッド競走・すばるS(1月11日/中京・ダート1400m)で後続に3馬身差をつける強い勝ち方を見せたとはいえ、レースを(短い間隔で)使われてきている分、さらなる上積みは薄いと見ます。
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あと、同馬は3走前からダート路線に舵をきったばかり。GIIIきさらぎ賞(中京・芝2000m)を勝つなど、もともと芝で活躍してきた馬でスピード志向が強く、パワーが要求される条件となると、疑問符がつきます。
スピードが勝ったタイプのドンフランキー(牡6歳)も、昨年のフェブラリーSには出走していますが(9着)、東京・ダート1400mは今回が初めて。また、2023年のGIIIプロキオンS(中京・ダート1400m)を勝利し、距離的には守備範囲と言えますが、最近はスプリント路線が中心になっているのは気になるところ。
それに、同馬が見据えているのはこの先、招待を受諾したGIドバイゴールデンシャヒーン(4月5日/メイダン・ダート1200m)でしょう。そうなると、今回はあくまでも"始動戦"という位置づけにあると考えられます」
では、狙い目となるのは、どういったタイプか。坂本記者は当日の天候も考慮してこう語る。
「天気予報ではレース当日の日曜日に雪マークがつくなど、冷え込みがきつそう。JRAの発表によれば1月30日に凍結防止剤を散布しているので、一段とパワーが要求されることになるでしょう。そうでなくても冬場のダートは力を求められますから、馬格のあるパワー型を狙ってみたいと思います」
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そうして、坂本記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。1頭目はスレイマン(牡7歳)だ。
「馬体重が500kg台中盤の大型馬で、まさしくパワフルな1頭。冬場のダートがいかにも向いていそうです。前走のGIチャンピオンズC(12月1日/中京・ダート1800m)は16着と大敗を喫しましたが、流れに乗ることができず、勝負どころで外からまくってきた馬のせいで早めに動かざるを得ませんでした。それで気持ちが切れて、完全にリズムを崩してしまったようです。
本来は好位追走から、しぶとく脚を使うタイプ。これまでは主に中距離路線を歩んできて、1400m戦の経験は2走前の地方交流重賞、GIIIオーバルスプリント(9月18日/浦和・ダート1400m)があるだけ。ですが、同レースでも2着に入って、今回もドンフランキーあたりが先手をとるなら、前半の流れのなかでいい位置につけられるはずです。
東京コースは初めてですが、左回りでは計3勝を挙げています。持ち前のパワーを生かして押しきるシーンがあっても不思議ではありません」
坂本記者が注目しているもう1頭は、初のダート戦に挑むバルサムノート(牡5歳)だ。
「今回が初めてのダート挑戦となりますが、パワー型。最近は芝のマイル以下を主戦場として、前走のリステッド競走・淀短距離S(1月12日/中京・芝1200m)でも2着と好走しているように能力も高いです。
ただ、同馬が得意とする左回りの芝1400m戦での適条件となるレースがしばらくなく、左回り、1400m戦での実績を踏まえての意欲の参戦です。だとしても、馬格があって、長く脚を使えそうなことから、初ダートで新味が出てもおかしくないと思っています。
人気は低そうですが、芝のオープンで上位争いを演じられる実力馬。穴にはもってこいの存在です。スレイマンともども、ワンターンの東京・ダートで面白味が感じられ、一発への期待が膨らみます」
断然の本命馬がいないなか、波乱の様相を呈している今年の根岸S。"荒れた"天気が予想されるなか、"大荒れ"の結末が待っている可能性も十分にある。となれば、ここに挙げた2頭にも注意が必要だ。