八村塁はなぜトレード要員に? レブロンやADとの関係は良好もチーム事情が影響か

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2025年02月02日 07:20  webスポルティーバ

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【レブロン、ADと「息は合っている」】

「ルイのトレードはないと思う。レイカーズにとって立派な戦力になっているから。ルイを放出して、トレードマーケットに出ているとされている誰かを獲得したところで、チーム力が逆にダウンしたとしても不思議はない」

 1月下旬、NBA中継に携わるテレビ関係者が言ったそんな言葉は、おそらく真実なのだろう。

 ロサンゼルス・レイカーズの八村塁はNBAが誇る名門のスタメンに定着し、レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス(AD)といった重鎮を擁するチームで平均12.4得点、5.2リバウンドという成績を残してきた。スター選手ではないとしても、その身体能力、多才さゆえに重要なサポーティングキャストになった印象がある。

 特に、平均42.3%という高確率で決めてきた3ポイントシュート(3P)はチームの大きな武器。最近ではベースラインで巧みに動き、レブロン、デイビスのパスを受けた上でイージーバスケット(簡単にシュートを決められる状況)に繋げるシーンが目立つようにもなった。

「AD、レブロンはディフェンダーを集める能力がすごくある。(ベースラインでのプレーは)昔からやっていたプレーではあるんですけど、それをやりやすくなっているところはあります。タイミングが見やすくなって、(ふたりとの)息も合っているんじゃないかなと思います」

 八村のそんな言葉からは、2023年1月にトレードされて以降、一緒にプレーしてきたスターたちとの関係が良好であることが感じられた。特にレブロンについては「"ブラザー"のような存在」と八村も口にしている。だとすれば、背番号28がこのままレイカーズにとどまる可能性が高いと考えるのが自然ではある。

 ただ......現地時間2月6日のトレード期限を前に、八村が放出されるという噂は途切れることがない。その背景に、もうひとつ煮え切らないレイカーズのチーム事情がある。

【トレード要因で八村の名前が挙がる理由】

 1月を終えたところでレイカーズは27勝19敗、ウェスタン・カンファレンス5位。実は、開幕前の大方の予想を上回る成績ではあるのだが、トップを走るオクラホマシティ・サンダー、2位のヒューストン・ロケッツなどと比べると、選手たちの若さ、勢い、身体能力などに大きな差があるように思える。

 端的に言って、現在のレイカーズは優勝のチャンスがあるチームには見えない。40歳になったNBAの王様、レブロンが引っ張るチームがそんな位置にいるのであれば、この現状は許されない。

「ビッグマンがもうひとり必要だと思っている。私はもうひとりのビッグマンの隣で、4番(パワーフォワード)でプレーする時がいつもベストだと感じるんだ」

 デイビスは1月下旬、ESPNのインタビューでそう語り、自身をサポートしてくれるセンターの獲得を熱望した。それに加え、新たなプレーメイカー、上質な「3-Dタイプ(3Pとディフェンスに特化した選手)」が加わればチームとして"御の字"なのだろう。

 そのような補強を念頭に置くのであれば、八村が主要なトレードの駒として認識されるのも当然のこと。今のレイカーズには、2029、2031年のドラフト1巡目指名権以外に、目ぼしい交換要員が少ないからだ。

 八村は26歳と年齢的に全盛期であり、年俸は1700万ドル(3年5100万ドル契約の2年目)と手頃なのも魅力的だ。上記のとおり、その多才さはレイカーズにとっても捨て難いが、戦力向上のための取引きを考えるなら、こちらも価値のあるものを差し出さなければいけない。

 昨年12月下旬、レイカーズが信頼性の高い3-Dタイプのドリアン・フィニー スミスを獲得しておいたのも響いてきている。加えて、守備に定評があるジャレッド・バンダービルトも故障から復帰してきた。これらのベテランたちが万全ならば、八村は重要な戦力ではあっても、"絶対必須"な選手ではないという見方もできる。

 レイカーズの補強のターゲットとなりそうなのは、ビッグマンならウォーカー・ケスラー(ユタ・ジャズ)、マイルズ・ターナー(インディアナ・ペイサーズ)といったところか。プレーメイカータイプならザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ)、ディアロン・フォックス(サクラメント・キングス)、八村よりハイレベルの3-Dタイプならキャメロン・ジョンソン(ブルックリン・ネッツ)なども考えられる。

【新天地で新たな役割を担うのも見たい?】

 複数の関係者の話を聞くと、「結局、大きなトレードは成立しないと思う」という見解が多い。それでも、八村の放出が考慮されているのは確かのようだ。

 そんな混沌とした状態でも、以前より成熟を感じさせるようになった八村は泰然としている。1月28日、敵地フィラデルフィアでの76ers戦後、トレード期限前にプレーする難しさについて聞いた際も表情を変えずにこう述べた。

「特にレイカーズにいると、そういう話はいつでもある。そこを気にしてやっていても仕方ない。プレーがよくても悪くてもトレードされるときはされる。コントロールできないところであり、NBAの厳しい世界でもあると思う。しっかりと心を引き締めて、自分ができること、やるべきことをやろうと思って毎試合やっています。そこは変わらないです」

 確かに状況を考えれば、直近の何試合かの活躍具合によって移籍の可能性が高まるわけでも、低まるわけでもない。だとすれば、考えても意味はないだろう。口先だけではなく、実際にトレード期限が近づいても八村のプレーの質が下がってないのは心強い。

 最後に個人的な思いを述べておくと、そろそろ新天地で違う役割を任される八村が見たい、という気持ちがあるのも事実ではある。今では完全に3-Dの役目に徹しており、速攻と3Pで平均12〜13得点をマークする安定感は評価されてしかるべきだ。ただ、語弊を恐れずに言うと、八村のプレーはレブロン、デイビスと一緒にコートに立たなかった時のほうが見応えがある。

 デイビスがケガで欠場した1月30日のワシントン・ウィザーズ戦でも躍動し、22得点と活躍したのは象徴的だった。レブロン不在時には、得意のミドルジャンパー、ポストプレーを駆使する姿も頼もしさを感じる。それらを見て、「八村がもっと継続的にボールを持つところを見たい」と考えているのは、筆者だけではないのではないか。もちろん、移籍しても重要な役割を任されるとは限らないが、少なくとも楽しみは増える。

 名門チームにとどまり、このままスーパースターたちから学び続けるか。それとも新天地で新たなステージに移り、躍進の足がかりを掴むか。八村の言葉どおり、その進路は自身でコントロールできることではないが、どちらに転んでも興味深い。

 1月28日の取材時の最後、八村に「トレードの話にも惑わされることはない。そういう点でも、もうNBAのベテランになったということでしょうか?」と問うと、「そうですね」と答えて静かに笑った。その冷静さ、落ち着きの背景には、"いずれにしても自身の道を切り開いていける"という自信もあるのかもしれない。

 2月6日までに、心身が充実した26歳の身に何が起こるのか。カウントダウンはもう始まっている。NBA6年目にして、八村が迎えたターニングポイントの行方から目が離せない。

このニュースに関するつぶやき

  • バスケットの試合なんて見たこともないけど八村塁は知ってる、程度が一般人の認識だと思うが、偉そうだね。王、長島、錦織圭、大阪なおみ、八村塁。スポーツ界のスターはみんなテレビが作り上げた虚像。
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