昨年は“闇バイト強盗”が多発。ターゲットになりやすい高齢者などをさせた。凶悪な殺人はもちろんだが、強盗や盗難に恐れを抱いた人も多いだろう。
警察庁の犯罪統計によると、2024年1〜11月に住宅に侵入して金品を盗む「侵入窃盗」は1万4千601件起きている。1日あたりに換算すると約44件。「強盗なんて人ごとだ」と見過ごせない状況だ。
「強盗など盗難による経済的な損失は、火災保険で補償されます」
そう話すのは『NEWよい保険・悪い保険2025年版』(徳間書店)の著者でファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。
火災保険は火災だけでなく、水害や風害、雪害などの自然災害を補償対象としていることはよく知られているが、実は、盗難被害もカバーしているという。
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「ただし契約内容しだいで、盗難は補償されないこともあります」(長尾さん、以下同)
大手損保会社の多くは、補償の範囲を限定することで保険料を変えた3種類ほどの火災保険プランを用意している。保険料のもっとも安い「エコノミープラン」などの場合、盗難補償が含まれないこともあるという。
また、ネット系の損保会社では、必要な補償を自分で選んで保険を構築することが多い。補償範囲を広げると、当然その分の保険料が高くなる。保険料を抑えるために、盗難補償をはずしている人がいるかもしれない。
「加入中の火災保険で盗難被害が補償されるかは、保険証券を見ればわかります。この機会に確認してください」
そもそも火災保険は、補償対象を「建物」と「家財」に分けている。賃貸住宅に住む人は家財のみの加入が一般的だが、持ち家の人は建物と家財の両方に加入することが多い。とはいえ「両方だと保険料が高くなる」などの理由で、建物だけに加入する人もいる。
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盗難補償は、盗まれたものの被害額に加え、盗難目的で住宅に侵入された際に壊されたものの補修費用なども補償される。「ガラスを割って侵入した犯人に、現金の入った財布を盗まれた」ケースでは、ガラスの補修費用と現金が補償されるといった具合だ。
「ただし、割られたガラスは建物、盗まれた現金は家財にあたります。補償対象が建物と家財なら両方補償されますが、建物のみの場合、現金は補償されません。
また、火災保険は損害の実費を補償するのが原則ですが、現金や切手、有価証券などは総額で20万円までなど、補償の上限を設けている保険会社が多いです」
ほかにも、絵画や骨とう品、貴金属など30万円を超える高価なものは事前に登録が必要で、補償範囲も1個につき30万円までなどと設定する保険会社が多いという。
それでも犯人に門扉やドアの鍵などを壊された、フローリングが傷つけられたといったときに、盗難補償があると助かるだろう。
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しかも、盗難補償の保険料は安いのだ。ソニー損保「新ネット火災保険」での保険料シミュレーションが左上の表だ。火災や水災、風災などの補償はすべて同じにして、盗難補償の有無だけを変えて比較した。
結果、盗難補償単独の保険料は、建物が年76円、家財が年682円、両方で年758円だ。全体の保険料が年5万円超であることから考えると、盗難補償の保険料はわずかといえるのではないだろうか。
■室内が荒らされていたら必ず被害の様子を写真に
また、火災保険の契約では加入者が被害の一定程度を自己負担する「免責」を設定することがある。免責が3万円だと、損害額から3万円を差し引いた額が補償されることになる。
「免責を設定すると、保険料が安く抑えられます。ただ、犯人にガラスを壊され、補修費に3万円かかったとき、免責が3万円だと保険金は出ません。せっかく保険料を払っているのに、いざというとき保険料が出ないことが私はイヤなんです。だから私は、サポート範囲が広い火災保険に免責0で加入しています」
実際に盗難被害に遭ったら、どうすればいいのだろう。
「まずは、警察に連絡しましょう」
現金をいくら、何をられたかなどを伝え、被害届を出す。
また、クレジットカードや預金通帳なども盗まれていたら、できるだけ早くカード会社などに連絡し、利用を止めよう。
「室内が荒らされていたら、とにかく早く片づけたいと思う気持ちはわかります。ですが、片づける前に必ず、被害の様子を写真に撮っておいてください」
割られたガラス窓や壊されたドア鍵など補修が必要な場所や、荒らされた室内、貴重品の保管場所が物色された様子など、保険会社に説明する際、被害状況の証拠になるという。
「保険会社に連絡するときは、警察で発行された『受理番号』が必要です。保険証券も手元に置いて連絡するといいでしょう。
その後、保険会社は被害額の見積もりなどを行います。保険会社の指示に従って、必要な書類などを用意してください」
よく問題になるのは、盗まれたものの品名や価値など詳細がわからないことや、本当に所有していたという証明ができないことだという。
「貴金属や絵画、高級時計など高価なものを持っている人はあらかじめ『貴重品リスト』を作成しておくといいでしょう。保証書などの保管も忘れずに」
とはいえ、先述のとおり火災保険には現金などは20万円までなどと補償の限界がある。火災保険でカバーしきれない被害はあきらめるしかないのだろうか。
「全額取り戻すことはできませんが、盗難などの被害に遭ったら、確定申告で『雑損控除』を申告しましょう。税金を抑えることができる場合もあります」
盗難に遭うなんて誰しも想像すらしたくはないが、備えは大切だ。これをきっかけに、火災保険の補償を見直してみよう。
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