グローバルでは7世代目、日本では約3年ぶりの「OPPO Find X8」は「2025年最高のコンデジはこれじゃね?」と思わせるカメラでありました。
よく見ると画作りはけっこう派手めで、肉眼で見るよりもきれいに撮れていたりするのだけど、「それはそれでいいんじゃね?」と思わせる説得力がある写りを見せてくれるのだ。
日本におけるOPPO Find Xシリーズは、2021年発売の第3世代「Find X3」が最後だったこともあり、「約3年見ない間にずいぶん進化したね」という感じ。これで日本に再上陸してくれて、うれしい限りでありますよ。
●アウトカメラは全部「5000万画素」!
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大きくて丸いアウトカメラユニットの真ん中には、でかく「H」のロゴがある。これは「Hasselblad(ハッセルブラッド)」というスウェーデンのカメラブランドのロゴだ。Hasselbladはデジタル中判カメラ(35mmフルサイズより大きなセンサーを使ったカメラ)を展開するメーカーで、プロ写真家を中心に愛用者が多い。Find X8のアウトカメラは同社の監修を受けているから、このロゴである。
ある意味で「Xiaomi 14 Ultra」がドイツのLeica(ライカ)と協業したのに対抗したのかなという感じがする。ライバルは、Xiaomi 14 Ultraなのだ。
3つのアウトカメラは、そのHのロゴを中心に配置されている。超広角/広角/望遠という構成で、センサーは全部5000万画素だ。
超広角カメラは、Samsung Electronics(サムスン電子)製センサー「ISOCELL JN5を搭載している。サイズは1/2.76型で、マクロモード時も仕事する。レンズは15mm相当だ。
せっかくなので「HASSELBLAD」透かしを入れて撮ってみた。撮影情報も右下に入れてくれる。
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広角カメラは、ソニーセミコンダクタソリューションズ製の「LYTIA LYT700」を搭載している。サイズは1/ 1.5型で、レンズは24mm相当だ。
カメラアプリを見ると、ズームは「0.6x」「1x」「2x」「3x」「6x」と5パターン用意されている。これはなかなかいい。せっかくなので2xでも撮ってみる。5000万画素のセンサーから作っている2xなので、日常的に使える。
そして、1xのボタンをタップすると、「24mm」「28mm」「35mm」と切り替わる。いずれもデジタル一眼カメラでおなじみの焦点距離だ。24mmでは微妙に広角すぎることがあるので、実はありがたい。Appleの「iPhone 15 Pro」「iPhone 16 Pro」と同じやり方だ。意識しているのだろう。
こちらは35mmで撮ったパスタ。24mmだと広角過ぎるけど、35mmならちょうどいいシーンの1つがこれだ。
●特筆すべき望遠カメラの画質
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ここまではハイエンドスマホとしては珍しくないけど(もっと大きなセンサーを使ったスマホもあるし)、注目したいのが望遠カメラだ。
望遠カメラには、ソニーセミコンダクタソリューションズ製の「LYTIA LYT600」を採用している。LYT600のセンサーサイズは1/1.95型で、他社の望遠カメラが搭載するセンサーよりちょっと大きい。薄いボディーに大きめのセンサーを収めつつ、3倍望遠を実現するために、W型プリズムで3回反射させるというユニークな構造を取っている。
多くのハイエンドAndroid機が採用するペリスコープ型、あるいはiPhone 15 Proのクアッドプリズム型ともまた違う方式だ。
正直なところ、多くのスマホカメラを使ってきて不満だったのが望遠カメラのクオリティーだった。どうしても、メインの広角カメラに比べると劣るのが実情だった。
その点、Find X8の望遠カメラはどうか? 下は3xの望遠カメラ(73mm相当)で撮った作例だ。細かい木の枝もしっかり写っていていい。
望遠カメラのクオリティーが上がると撮影の幅が広がるからね。
3xのボタンをタップすると、73mmと85mmが切り替わる。
さらに6x。細いワイヤーがもやっとしているけど、5000万画素センサーならではの6x望遠だ。146mm相当になるので、日常のちょっとした望遠撮影なら十分である。
実質6xまでイケて、望遠時の画質も高いカメラなのだ。
●AIを駆使した「超望遠」もスゴい
で、面白いのがその先。試しにズーム倍率を30xまであげてみた。
AIパワーというべきか、ちょっと塗り絵っぽくなったけど、6x時はもやっとしていた斜めのワイヤーもクッキリと描画されている。
さらにその先。ズームは最大で120xまで上げられるのだ。
そうするとですね、右下に「AI」と書かれたアイコンが現れる。超・超望遠時にAIを使った処理をいれるかどうかのボタンだ。
「AI望遠ズーム」のオンオフでどのくらい違うのか、まずタンクの先を撮り比べてみよう。
AIを入れないと、斜めの線がジャギジャギしている。一方、AIを入れた方は滑らかに“補完”されている。予想以上に“それっぽく”撮れてて、びっくりした。
そもそも、120xは2920mm相当になるのだから、ムチャにもほどがある望遠なのだ。撮りたいものを捉えるだけで大変。
もう1つ、AIパワーの分かりやすい例を。ちょっと離れたところにいたネコである。
まず、6xで撮るとこのくらい。結構遠いね。
そしてAIオンで120xにして撮ったものをどうぞ。
予想以上にうまく処理していてびっくりした。ちなみに、AIオフ時と並べて部分拡大したのがこちら。どう違うかがよく分かるはず。
AIのやることなので、塗り絵に失敗して破綻することも結構ある。もっというと、この120xが「実用的か?」と聞かれると、「さすがにそれはムチャですよ」というところだが、「限界に挑戦」的なのは嫌いじゃない。
●Hasselbladらしさはどこに?
と、あれこれ撮ってみて、確かにキレイで技術的にもすごいのだけど、「Hasselbladらしさはないよね」と思ったわけである。「Hasselbladらしい画作りとは?」と聞かれると、それはそれで困るのだけど。
以前、Hasselbladの方に「Hasselbladらしい写真を撮るには、どういうセッティングがおすすめですか?」と尋ねたとき「RAWで撮ってお好みで現像してください」と言われたことがある。それを踏まえても、Find X8の画質は“見栄え”が良すぎて本職のカメラで撮った写真とはちょっとテイストが違ってしまう。
そんなときどうするか。「マスター」モードの出番である。
逆光時に「写真」(通常)モードと撮り比べると、マスターモードの効果は実に分かりやすい。
写真モードだと、HDRが強く働いて逆光で影になった部分も明るく補正して、全体をうまく見せてくれる。それに対して、マスターモードだと影はぎゅっと暗いまま、コントラストが高い、実際に見た印象に近い写真を撮ってくれる。
マスターモードで「Pro」にすると、いわゆる「マニュアル撮影」モードとなり、細かい設定をできる。RAWデータでの撮影も可能だ。
またHasselbladならではの撮影モードとして「XPAN」がある。XPAN(XPan)というのはフィルム時代にリリースされたHasselbladのカメラで、フィルム2コマ分を使ってパノラマ写真を撮れることが特徴だった。
その名の通り、XPANモードでは往時のファインダーをのぞいている雰囲気で、超ワイドな写真を撮れる。モノクロとカラーがあるけど、モノクロの方がいい雰囲気になったので、そちらの作例を。
●「動きモノ」に超強い初のスマホカメラかも
Find X8で感心したのは「動きモノ」に強いこと。
スマホカメラのほとんどがそうなのだけど、室内のような明るくない場所だとシャッタースピードが遅くなり、動いているものを撮ると被写体ブレする。マニュアル撮影モードを使えばシャッタースピードをコントロールできるけど、いささか面倒くさい。
その点、Find X8は被写体が動いているかどうかを判断して変幻自在にシャッタースピードを変えてくれるのである。
まず、止まっているプラレール。シャッタースピードは1/50秒だ。
その後、プラレールに電源を入れて動かして撮影すると、シャッタースピードが1/100秒に上がった。これはカメラ側がどう判断するかなので、もっと上がることもある。
さらに「アクションモード」をオンにすると、シャッタースピードは1/500秒、感度はISO3200に設定された。アクションモードは動いているものを撮るときに、シャッタースピードを上げてくれる機能である。
でも、もっといい“手”がある。ただシャッターボタンを長押しして連写する方法だ。設定で「クリアバースト」をオンにしておくと、自動的に高速シャッターで連写してくれる上、恐らくは前後の画像を合わせてノイズが少ない高画質な画を作ってくれるのだ(だから“クリア”バーストなんだろう)。
あとは連写した中から一番いい瞬間を選べばよし。このクリアバースト機能がめちゃ便利なのである。
そしてプラレールであれこれ検証していたら、最後はこうなったのだった。
もうちょっとありがちなシーンということで、ブランコをこいでもらいながら撮影。
静止した状態では1/200秒くらいだったのに、ブランコを漕いだ状態で連写したら1/2000秒に上がったのだった。
被写体の動きに応じて自動的にシャッタースピードを上げるってのはよいアイデアで、Find X8の一番よい点だと思う。
●73mmの3倍望遠はポートレートに最適
続いて人物撮影だ。せっかくなので、ポートレートに向いた73mmの3x望遠で。
望遠カメラのクオリティーが上がったのは人を撮るときにありがたい。
せっかくなので、ビューティー機能をオンにして、50(ちょうど半分)まで上げて撮ってみよう。
最近のスマホカメラのビューティー機能は、一時期よりちょっと控えめになってきている。だが、Find X8はけっこう強くかかるタイプだった。ビューティーをオンにするときは、控えめに。
もう1枚。背景に高層マンションを入れて、逆光状態で撮ってみたのがこちら。逆光で顔がすごく暗い状態だったのだけど、なんともきれいに顔は明るく、背景もしっかりという写りを見せてくれた。これはよくできている。
さらに、背景をぼかすポートレートモード。
ポートレート時は「ソフトライト」機能が追加され、霧、きらめき、幻想的の3つのライティングを楽しめる。一番汎用(はんよう)性が高そうなのが「霧」(フォギー)かな。肌を柔らかく表現するソフトフォーカスのフィルターだ。
柔らかい光のポートレートを作ってくれるのは、よいアイデアだね。
室内で「霧」フィルターをかけてみた。
もちろん人物以外でもポートレートモードは使えます。
●とにかく多彩でいろんな撮影を楽しめるカメラなのだった
他の機能もチェックしておく。
ある程度以上近づくと、自動的に近接撮影が可能な超広角カメラを使ったマクロモードになる(オフにもできる)。昨今のハイエンド機はたいてい持っている機能だ。
かなり暗いシーンでは自動的に夜景モードになる。
「シルエットモード」にも注目したい。通常の写真でも「シルエットモード」を使えばシャドー部がぎゅっとしまったこんないい感じの夕景を撮れるのだ。
とまあ、非常に多機能で高性能なので大変長くなってしまったけど、これでも使ってみて印象的だった機能だけなのだ。
多彩な撮影ができてそれなりの画質を実現しつつ、ボディーは薄くて軽いってのがすごい。カメラユニットも含めて薄い。「ここ1年で出た最強のコンデジかも」というのが分かってもらえたかと思う。
というか、コンデジとして1台欲しい。特に動きものを撮りたい人には最高なんじゃなかろうか。
(モデル:長谷川実沙)
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