首相官邸=東京都千代田区 税制優遇を受けながら老後資金を積み立てられる個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の拡大が加速している。国民年金基金連合会のまとめによると、昨年12月の新規加入者数は前年同月比2.1倍の7万2168人で過去最大だった。同月に実施された制度改正で、掛け金の拠出限度額が引き上げられ、加入手続きが簡素化されたことが奏功した。新制度になって2年目も順調に成長する少額投資非課税制度(NISA)に次いで、イデコも動きだした。
イデコは、公的年金を補完する私的年金で、任意に加入できる。掛け金を全額、課税所得から差し引くことができるほか、60歳以降に引き出す際も税が優遇される。掛け金は投信等で運用する。政府は「資産所得倍増プラン」の中で、NISAとともにイデコの拡充を、国民の資産形成の柱に掲げている。
昨年12月の改正では、「会社に企業年金がある会社員」や「公務員」の拠出限度額が現在の月額1.2万円から同2万円に引き上げられた。また、加入する際に必要だった「事業主証明書」が廃止された。
イデコの取り扱いが多い楽天証券でも昨年12月は前月比約4倍の新規加入者があったという。新規加入者が増加した理由について「掛け金の上限額の引き上げに加え、手続きの簡素化で会社への書類提出という手間がなくなり、オンラインで完了できる点にメリットを感じたのではないか」と分析。今後については「今回の改正でこれまで以上に使いやすい制度になり、さらに利用者は増えると考えている。一方で、まだイデコの知名度は低い。認知度が高まり、イデコの活用が広がることを期待している」と話している。
政府・与党は、昨年12月に決定した「2025年度税制改正大綱」で、イデコの拠出限度額のさらなる引き上げや制度の簡素化などを決定した。通常国会に改正法案が提出される見通しだ。イデコやNISAを通じて、投資家の裾野が広がり、国民の資産形成が拡大することが期待される。