聴覚障害がある井出安優香(あゆか)さん(当時11歳)が7年前、重機にはねられ死亡した事故を巡り、将来得られたはずの収入「逸失利益」の算定が争われた訴訟で、健常者と同額の支払いを認めた大阪高裁判決が5日、確定した。期限の4日までに双方が最高裁に上告しなかった。
両親らの弁護団によると、同額とする司法判断は初めて。弁護団は声明で「判決は差別を許さない社会の実現に向け、重要なメッセージを投げかけた」と評価。「障害によって減額するという安直で差別的な取り扱いを改めることを強く願う」と述べた。
高裁の徳岡由美子裁判長は1月20日の判決で、逸失利益が全労働者の平均賃金の85%とした1審判決を変更した。減額が許されるのは限定的だとし、井出さんの能力や聴覚障害者の労働環境の変化を重視。「健常者と同じ職場、条件で働くことが可能だった」と判断し、減額する理由がないと結論付けた。
井出さんは2018年2月、大阪府立生野聴覚支援学校からの下校中、事故に巻き込まれた。両親らが重機の運転手側に約6100万円を請求。高裁判決は慰謝料などを含めて約4300万円の支払いを命じた。
判決確定を受け、大阪市内で記者会見した父努さん(52)は「ちょうど7年前は告別式があり、娘が天国へ行った日。偶然とは思えず、確定に娘が導いてくれた」と涙を流した。【木島諒子】
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。