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ネイマール古巣復帰の真実(前編)
ネイマールが古巣のサントスへと帰還した。復帰第一戦は2月5日(現地時間)、奇しくも彼の33歳の誕生日に行なわれた。サンパウロ州選手権のボタフォゴ戦で、ネイマールはベンチスタートだったが、後半開始とともにピッチへ。少ししかプレーしないのではないかという大方の予想に反して、45分間プレーした。その内容は決して悪いものではなかったが、違いを見せるというわけでもなかった。
2023年8月、ネイマールはアル・ヒラルに移籍して以来、1分で2.5ドル(約400円)を稼いだ。プライベートジェットを24時間好きな時に使え、サウジアラビア国内のどんな高級ホテルでも、サインひとつでタダで泊まれ、食事もできる、そんな王侯のような待遇を受けていた。
しかし、ネイマールがサウジアラビアで残した功績は、ほぼゼロといってもいい。加入から2カ月後のブラジル代表戦で膝を痛め、結局、17カ月でプレーしたのはたったの7試合(この期間にアル・ヒラルは約80試合を行なっている)で、得点はわずか1点、アシストは3だけだった。
アル・ヒラルは復調しないネイマールを今年1月、リーグ後半戦の登録から外したと発表した。これはネイマールにとってはかなり不都合なことだった。彼の目標はブラジル代表に返り咲き、2026年のW杯を戦うことだ。プレーができないのは手痛い。
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ネイマールはアル・ヒラルから出ていきたいと望んだが、出口を見つけるのはなかなか難しかった。そんな彼の前で扉を開いたのが、ネイマールが11歳から所属していたサントスである。
サントスに移籍するため、ネイマールはアル・ヒラルと交渉し、契約の残っている残りの5カ月分の年俸約6500万ドル(約100億円)を放棄、月給100万レアル(約2600万円)でサントスと合意した。
「ネイマールはケガをし、どこにも行くところがない。たったひとつの行き先はサントス。ネイマールは報酬が下がるものの、仕方なくそれを受け入れた。それが唯一の方法だったから」
たぶんネイマールの今回の移籍劇は、世界中どこでもこのように報道がされているだろう。
【名門サントスの惨状】
確かに事実だけを見ればそうかもしれない。しかし、それはほんの表面上の事実にしかすぎない。ちょっと見方を変えると、まったく違うストーリーが見えてくる。
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ネイマールにとって、他に行き先がなかったのは確かだ。いくつかのヨーロッパのチームの名前も挙がったが、それはすべて噂にすぎない。サウジアラビアのチームでさえ必要としない彼を、ヨーロッパの強豪のどこがほしがるか。それが現実だった。今から2週間前まで、ネイマールにはなんの確かな未来もなかった。
そこに登場したのがサントスだった。確かに唯一の選択肢ではあったが、同時にネイマールにとっては最高の選択肢でもあった。
ところで皆さんは、最近のサントスの状況をご存知だろうか?
サントスはブラジルの名門中の名門だが、近年は不調に苦しんでいた。危機は今から4年前くらいから始まり、この間になんと20人もの監督、60人以上の選手が入れ替わってる。
特に2023年の年末はどん底で、チーム創立111年目にして、初めて2部に降格。おまけにクラブのレジェンドであるペレも亡くなり、チームは大きな失意のなかにあった。V・ファーレン長崎の元監督、ファビオ・カリーレ(昨年11月に退任)のもとで、どうにか1年で1部に復活したところである。
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こうした不調の根源には財政難がある。チーム一番の高給取りの選手でも、ネイマールの報酬の15%にも届かない状態だし、それさえも払えず何度も裁判沙汰になっている。
そうなると、ここでごく素朴な疑問が湧いてくる。アル・ヒラルからの報酬とは雲泥の差とはいえ、月100万レアル(約2600万円)はかなりの額だ。普通の選手を買うことさえ難しかったサントスの、いったいどこにそんな金があるのか?
「ネイマール効果」で収入増、という期待は確かにあるだろう。
2024年12月31日に1410万人だったサントスのサポーターの数は、現在34%増の1890万人に達したと発表された。最も可視化できるのはSNSで、サントスのインスタグラムのフォロワーは15日間で350万人から600万人に増加。ネイマールに関するコンテンツは、2月の第1週、合計5億5000万回以上再生されている。
SNSだけではない。ネイマールの加入がまだ公式に発表されていない噂の段階からクラブの会員(ソシオと呼ばれる)は、1週間で1万3000人が新たに増加。ネイマールの加入が決まってから2月4日までには新規獲得が7万人に達し、ネイマール到着後には新たに2万人以上の会員が誕生した。またサントスの試合の放映権も、各国から問い合わせが殺到している。ネイマールのユニホームも飛ぶように売れている。
しかし、それでも金額的にはたかが知れている。これまで未払いだった選手やスタッフへ報酬を払えば、それでチャラになってしまうぐらいだろう。
ネイマールのための資金は誰が出したのか。そこに今回の移籍のもうひとつの真実が隠されている。
(つづく)