
【写真】美スタイル全開 朗らかな笑みを浮かべる篠田麻里子
■自分の人生経験が、芝居の学びとして生きてくる
――大きなお子さんのお母さん役で驚きました。
篠田:これまでもお母さん役はやってきましたが、高校生の少年の母親役というのは初めてで不安でした。幼少期がどんな子だったかを自分のなかで作る作業をしてから撮影に行きましたが、実際に現場で息子のイクト(木下暖日)に会ったら、大きくてスタイルも良くて、より大人っぽい子だったので、私も驚きました。
――映画が始まって間もなく、少年院での面会のときに、一ノ瀬ワタルさん演じる教官に啖呵を切り、イクトからも「キャラ変わった?」と驚かれる場面がありました。迫力満点でしたが、三池監督も「ご本人の重ねた人生経験が芝居の質にもリアリティを与えている」と称賛していたとか。
篠田:子どもを持つ母になったことで、子どもをけなされたりすることに対して、瞬時に反応することには、リアル感が増してきたなと思います。子どもがいないときに母親役を演じたこともありましたが、実際に子どもを生んで育てて、子どもに対する思いというか、感度が全然違ってきたと思いますし、その場で生まれるものをちゃんと受け取ろうというマインドに変わってきました。三池さんとは4作品くらいお仕事させていただいているんですけど、「バイタリティとかリアリティがすごく出てきたね。芝居がすごく変わったね」と言っていただき、すごく嬉しかったです。
――ご自身でも、人生経験が芝居に影響すると感じますか?
篠田:感じます。経験がなくても膨らませられる人と、経験があることでもっと深みが出る人がいると思いますが、私は後者。実際にいろんな感情の経験があるほうが、同じ出来事ではないにしても、想像しやすいし、照らし合わせやすい。だから自分が辛い経験をしたとしても、芝居への学びとして生きてくる。もしも私が別の職業をしていたら、辛い経験をしてもそれを生かせる場所がなかったかもしれないけれど、お芝居に生かせることで、自分の中でも発見があるし、見た人に共感していただける。そういった楽しさを、ここ数年感じています。
■長年共に歩むマネージャー ケンカした時期を経て今は全幅の信頼「一緒なら怖いものはない」
――主人公のイクトとリョーマ(吉澤要人)は、少年院で聞いた格闘家の朝倉未来さんの言葉に背中を押されます。篠田さんは所属事務所の廃業により、突如フリーランスになりました。大変な時期に背中を押してくれた存在を教えてください。
篠田:マネージャーさんですね。私はもともとAKB48というグループに所属していましたが、最初は別のマネージャーさんがついて、そのあと今のマネージャーさんになりました。
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篠田:いえ、最初はめっちゃケンカしてました(笑)。ひとつは私が若くて生意気だったのと、AKBの仕事がすごく忙しい時期で余裕がなかったこと、それとマネージャーさんも当時、業界自体は入って来られたばかりだったので「新しく入ってきてここの仕事内容も知らない人に、なんであれこれ言われなきゃいけないの」と思ってしまった。当時からちゃんと思ったことを言ってくれる人だったんですけど、私も素直に聞けない状態だったんです。そこから一度担当が変わって、自分も彼もいろんな仕事をしてから、またお互い一緒にやりたいと思って、話をする時間を設けました。
――ちゃんと話す時間を。
篠田:そこで「あのときはごめんなさい。反省している」と伝えました。そうしたら向こうも「僕もごめんなさい」と。それで「私はこれからこうやっていきたい。一緒に考えてもらえたら嬉しいです」と言ったら、「僕も一緒にやりたいと思っている」と。時間をかけて話をして、そこから全て信頼してます。私がちょっとハテナと思ったことでも、マネージャーさんが「うん」と言うならいいはずだと思えます。
――大人になってから、きちんと謝ったりガチンコで話し合ったりできることは貴重ですね。
篠田:そうなんです。だからお互いに嘘をつく必要もないし。大変な時期もずっとサポートしてもらったので。今回の事務所の件も「なんとかなるでしょ」と言ってくれて。それを聞いて強いなと思いましたし、一緒なら怖いものはないと思っています。事務所のこともあり、ピンチといえばピンチだけど、そこに不安はありません。
――チャンスといえばチャンス。
篠田:信頼できる人がいるから、いろんな挑戦ができるんです。実際、今も縦型ショートドラマ(『元カレ図鑑』)とか、今までのSNSのほかにTikTokも始めてさらに世界が広がりました。なにより今のマネージャーさんと仕事ができているのはありがたいので、その出会いをもらえたことは事務所に感謝です。
■子どものために「笑顔でいること」を大切に
――プライベートでは小さな女の子のお母さんです。仕事と切り替えが大変ではありませんか?
篠田:3歳くらいまではめちゃくちゃ大変で、その時は子育てが仕事というマインドでした。もちろん仕事をしたい気持ちはありましたよ。周りがすごく進んでいるような感覚にもなって、「自分は家にいて大丈夫かな」「置いていかれないかな」といった不安や焦りもめっちゃありました。でも今はこの子を育てることが私の仕事なんだと気づきました。3歳くらいになってくると意思の疎通もできるようになってきて、少し楽になりました。そこからちょっとずつ仕事も増やすようになりました。
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篠田:「ママがにこにこしててうれしい」と言ってくれてます。私自身、主婦を専業するよりも、仕事と家のバランスを取りながら子どもと一緒の貴重な時間を全力で過ごすほうが、お互いにとっていいと思えました。
――大切にされていることは。
篠田:「笑顔でいること」ですね。もちろん食育や教育なども大切にしていますが、頑張って無理して不機嫌になるくらいなら笑顔でいる選択をしようと。めちゃくちゃ忙しい毎日で絶対に手作りご飯をと無理をするより、「今日はお弁当でいいよね」としてご機嫌でいられるなら、そちらを選ぶ。仕事に対しても、無理をしない。自分がご機嫌でいる、笑顔でいるのは、この子ときちんと向き合って育てるためです。
――これまで子育てで悩んだ時期はありましたか? たとえばイヤイヤ期のような。
篠田:子どもって、そういう面はずっとあるのかなと思います。たとえば「なんとかの壁」とか、一定の年齢ごとにありますよね。調べれば調べるほど、情報として、世の中が不安要素として出してくる(苦笑)。だから余計に実社会と繋がるって大事だと思います。私自身は仕事と子育ての両立が自分にとってラクでしたが、何かの形で人や社会と繋がっていることは必要だと感じています。
(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)
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