空前の中学受験ブームでも破産続出! 脱サラして学習塾オーナーとなった30代男性の嘆き

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2025年02月13日 12:10  週プレNEWS

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設立40年以上の老舗「ニチガク」の突然の破産は、受験を控えた塾生にも衝撃を与えた


受験シーズン目前に大学受験予備校が経営破綻によって突然"閉鎖"されて世間を騒がせたが、実は昨年の学習塾の倒産は過去最多。少子化の中、大手学習塾が競ってフランチャイズ展開を図っている。

近年は畑違いのサラリーマンの世界から学習塾の実質的なオーナーとなる、フランチャイジーへの"転職"も多いというが、早々に廃業に追い込まれるケースも。大手学習塾の覇権争いは、生き残りをかけたフランチャイジーの戦いともいえそうだ。

■学習塾の倒産は過去最多

新年早々、大学入学共通テスト目前の受験生にショッキングなニュースが飛び込んできた。大学受験予備校の「ニチガク」の建物に、1月4日付で破産する旨の貼り紙が突然出され、教室が閉鎖されたのだ。報道によると、「ニチガク」は設立40年以上の老舗で、国公立大学を志望する高校生が主な対象。約130人の生徒が通っていたという。

X上でも「ニチガク」に通っていたとみられる生徒らが「予備校に行ったら破産してたんだけど...」「この時期に笑えない」「もう自分の力で勝負するしかない」「お金返して」など不安や怒りのポストが上がった。

空前の中学受験ブームを背景に学習塾市場が過熱するなか、「ニチガク」のように経営不振に苦しむ学習塾は多い。東京商工リサーチの発表によると、大学受験予備校などを含む学習塾の倒産は、2024年は53件で2000年以降では最多。

加えて負債総額も約117億円で昨年の9倍にのぼり、やはり2000年以降で最多となっている。コロナ禍もあって、個別指導やオンライン形式など学習塾の多様化が進み、学習塾では独自の特徴を打ち出すなど生き残りに必死だ。

■脱サラして学習塾経営をする人も

大手間では個別指導塾を中心に、自らのブランド名をフランチャイズで広げる争いが激化している。フランチャイジーになるための開業資金は500万円前後。ロイヤリティは10%〜30%が多く、「安いロイヤリティ」やサラリーマンらを意識した「教育業界未経験歓迎」などを謳い文句に、競ってインターネットで募集をかけている。

「これから年度末にかけて受験生が20名ほど一斉に退塾しますので、新年度までに新たな生徒を獲得しなければなりません。下校中の小学生に消しゴムと一緒にチラシを配ったり、近所にポスティングしたり、これから忙しくなります」


こう話すのは、個別指導塾のフランチャイジーになって今年3年目となる中野光一さん(38歳、仮名)だ。中野さんは大学卒業後、新卒で大手警備会社に入社したが、職場の人間関係でつまずき、36歳の時、実家に近い埼玉県で個別指導塾のオーナーに"転職"。現在、小学生から高校生まで約60人を抱え、経営は順調だ。

「転職サイトに登録して水面下で転職活動も続けていましたが、どうしてもしっくりこなくて。職場での人間関係に悩んでいたので、次はなるべく自分一人でやれる仕事がいいかなと。

そんな時、実家近くでテナント募集の物件を見つけ、家賃も思ったより安かったのでここでなにか事業をやれないかと考えました。飲食は在庫管理が大変ですし、ネットで見た個別指導塾の『FC募集』に問い合わせしたら、スルスルと話が進んだという感じです」(中野さん)

一番の懸案だった開業資金は550万円ほどかかり、ほとんどの資金は14年間の会社員時代にためていた貯金でまかなったが、一部は実家からも借りたという。

「親には反対されましたけど、幸いにして自分は独身だったので。でも、別に強い信念があったわけではなく、塾にも子どもにも興味ないんですよ(笑)。転職先の一つとして選択したにすぎません。

こだわりもないので、本部に何でも聞いて、その通りにしました。本部の人によると、組織で働くことに嫌気がさしたサラリーマンがフランチャイズのオーナーに"転職"するケースは近年増えているそうです。そして、むしろ個人で学習塾とかやっていた人より、サラリーマンの方が素直に本部の言うことを聞くから成功しやすいと言ってました」(中野さん)

■人件費高騰が悩みの種

会社員時代のように職場の人間関係で悩むことはないが、別の苦労も多い。いつも頭を悩ませているのは講師の雇用だ。主に大学生をアルバイト講師で雇っているのだが、昨今の人手不足や最低賃金の上昇で、募集がなかなかこない。

実務を担う教室長を雇う塾も多い中、人件費の高騰で中野さんは現在、オーナー兼教室長、時に講師の役目も果たし、休日は日曜日だけだ。

中野さんと同時期に本部から開業までのレクチャーを受け、無事開業した人が2名いたが、2年で廃業してしまったという。2名とも中野さんと同じ未経験の前職会社員だった。

「開業後は2人と話したことはありませんでしたが、生徒が集まらなかったようです。うちはたまたま立地が良かったんでしょう。

数多くある加盟店の中で一つ二つつぶれたところで本部は何とも思わない。金を出してくれるわけでもないし、自分でなんとかするしかない。周りにライバル塾も進出してきているので、うちも油断はできませんよ」(中野さん)

受験戦争と負けず劣らずの熾烈な競争が続く学習塾市場の末端で、脱サラ組が今日も奮闘している。

文/山本優希 写真/ニチガク公式X 、photo-ac.com

このニュースに関するつぶやき

  • バブル時代は桁違いに儲かっていたらしい産業ですが…。ま、栄枯盛衰…、時代の流れ…、受験産業そのものは劣化していなくとも、子供の数がねえ…
    • イイネ!1
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