楽天モバイルが単月黒字化(EBITDA)を達成できた理由は? 三木谷氏は通期での黒字化に自信

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2025年02月14日 23:41  ITmedia Mobile

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28期連続の増収となり、売り上げ収益は2.3兆円を突破した

 楽天グループが2月14日、2024年度12月期連結決算を発表した。連結の売上収益は対前年比10%増の2兆2792億3300万円、営業利益は同2658億3200円改善となる529億7500万円で増収増益だった。


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 楽天モバイルが単月黒字化を達成したことに加え、グループ全体の売り上げが28期連続で増収となった。売り上げの伸びのうちの34.4%が楽天モバイルに起因しており、「楽天モバイルが大きな成長ドライバーの1つになってきている」と三木谷浩史会長は強調する。


●楽天モバイルがEBITDAで単月黒字化 ARPUの向上、順調な契約獲得が要因


 売上収益、営業利益だけでなく、Non-GAAP営業利益も同1601億円改善の70億4800万円の黒字となり、2019年度以来、5年ぶりの通期黒字化を達成した。楽天モバイルは2019年からMNOサービスを開始しているが、本格展開となった2020年以降で初めての黒字化となった。


 楽天モバイルの増益に加え、インターネットサービス、フィンテックセグメントのいずれも堅調に成長し、グローバル事業も貢献した。


 懸案のモバイル事業は、2024年12月におけるEBITDA(営業利益に減価償却費や固定資産税を加算したもの)では23億円の単月黒字化を達成。同月は楽天モバイルユーザー向けの「最強感謝祭」を開催したことで、キャンペーン参加者33万人、売り上げが284億円に達したこともあって利益を伸ばした。


 三木谷氏は、「最強感謝祭で広告収入を始め、かなり売り上げを押し上げた要因なのは事実だが、EBITDAも劇的な改善をしている」と強調。当面は加入数1000万を目標に据えて利益の拡大を図るが、「通期での黒字化は極めて実現可能性が高い」と自信を見せる。


 モバイルセグメントにおける売上収益は同20.9%増の4406億9800万円、営業損失は同1056億3600万円改善の2089億3300万円の損失だった。EBITDAも1199億円の改善となる363億円の損失となった。


 三木谷氏は、売り上げが右肩上がりである点、第4四半期の売り上げが前年同期比38%増の820億円まで拡大している点をアピール。損失幅の改善も続く他、「通信業界のパフォーマンス指標の1つ」(三木谷氏)であるPMCF(マーケティング前キャッシュフロー)が110億円に拡大。「水面から頭を出し、しっかり利益を出せる段階に来た」(同)という。


 単月黒字化は、「単純にコスト削減だけでなく、さまざまなオペレーション効率の改善、ARPUの向上、契約獲得が順調」といった理由があると三木谷氏。さらに楽天グループとのシナジーを高め、広告事業を伸ばしていくことで利益を拡大させたい考えだ。


●若年層の楽天モバイルユーザーが劇的に増えている


 2024年末時点での契約数は830万まで拡大。第4四半期の調整後MNO解約率は1.38%、ARPUは2856円となり、MNOサービス売り上げは同40.3%増の465億6100万円まで伸ばした。


 解約率は改善傾向にあり、季節変動がありつつもうまく制御できているとの認識。加えて、楽天グループの他のサービスからの流入が増加しており、前年比で1.3倍となる94万5000回線を獲得した。楽天市場や楽天カードなどからの集客が増え、さらにそうしたユーザーは解約率が低いことから、今後も拡大を目指す。


 「いい意味でショッキングなデータ」と三木谷氏が紹介したのは、契約者の年代別人口比。特に若い世代が「劇的に増えている」(同)状況で、23〜50歳の契約数が特に多い。スマホやインターネットのヘビーユーザーの利用が多いというのが三木谷氏の分析で、逆に高齢者層と地方が弱い点を課題として挙げる。


 同日、楽天モバイルは若年層向けの春商戦向けキャンペーンを発表したが、「高齢者、地方への強化を行っていきたい」(同)考えだ。


 ARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)は、特に5G利用の増加でデータ消費が増えており、一部オプションの有料化もあって増加した。特に最強感謝祭は広告収入を押し上げて3000円を突破したことから、今後も定期的に開催していく計画だ。


●通信品質は地下鉄やトンネル、人口集中エリアでの向上を目指す


 遅れている設備投資も推進し、品質改善を強化する。2024年度は810億円と1000億円を割り込んだが、2025年度には1500億円を確保。地下鉄やトンネルなどの共用基地局の帯域拡張、人口集中エリアにおける混雑対策、プラチナバンドを活用したエリアの穴の削減といった対策を進める。


 こうした投資の強化で、「上位3社に追い付け追い越せ」(同)と通信品質の改善を図っていく。


 衛星通信のAST SpaceMobileに関しては、2025年3月に実証実験が終了し、60機まで衛星を拡大して本サービスにつなげたい考え。「2026年のできるだけ早い段階でサービスを開始したい」と三木谷氏。「おそらく、楽天モバイルだけが自然災害があっても(スマートフォンが)つながる状況を実現できるのでは」(同)としている。災害時に、他キャリアのユーザーにも開放するかどうかは、今後の検討だとした。


 なお、同社が提案していた「お試し割」については、「選択肢として無料期間を設けるのはありだが、ユーザーへのバック(還元額)する枠に含まれてしまうので、(スマートフォンの値引きとお試し割の)どちらが有効か、冷静に判断しながら考えていきたい」(同)との考えだ。


●フィンテックも順調に拡大、AIもRakuten Linkを起点に強化へ


 フィンテックセグメントでは、楽天銀行、楽天証券、楽天カードなどがいずれも順調に推移。売上収益は同13.1%増の8204億1900万円、Non-GAAP営業利益は同37.9%増の1679億9400万円だった。


 楽天カードのショッピング取扱高が13.7%増の24兆円、楽天銀行単体口座数が11.6%増の1648万口座、預金残高が16.9%増の12兆円、楽天証券口座数は17%増の1,193万、NISA口座数は28.8%増の600万など、さまざまな指標が順調に伸びた。


 「ナンバー1カードとして成長した」(同)という楽天カードは、営業利益率もNon-GAAP営業利益も拡大。同じく決済サービスの楽天ペイメントは、売り上げが同22.1%増の917億円まで拡大。取扱高拡大、コストコントロールによって、通期のNon-GAAP営業利益は135億円改善の45億円で黒字化した。


 楽天証券は、「(2003年のDLJディレクトSFG証券)買収時には30万口座ぐらいだったと記憶している」(同)ところから、1200万口座まで拡大。「1500万口座も見えてきた」と三木谷氏は話す。手数料の一部無料化も行ったものの、売り上げ、利益ともに伸ばしており好調だ。


 みずほフィナンシャルグループとの提携では、「投資だけでなく双方にメリットのある形で、さまざまな業務提携が進んでいる」と三木谷氏はアピールしている。


 主力の楽天市場などインターネット事業も売り上げ収益、Non-GAAP営業利益ともに拡大。特に収益率の高い広告事業が伸びた他、海外事業の売り上げも増加。楽天市場や楽天トラベルでは楽天モバイルユーザーの利用が高く、モバイル事業とのシナジーが進展した。


 楽天グループでは、Rakuten Linkにおける生成AIサービスや法人向けのRakuten AI for Businessなど、AIサービスも強化しつつ、社内でもAI利用による業務効率化などを図っている。「トリプル20」プロジェクトとして、マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率をそれぞれ20%増加させルという取り組みで、2024年度は「約105億円の営業利益を創出できた」(同)という。


 カスタマーサポート、ソフトウェアのコーディング、広告でのターゲティング精度向上、セマンティック検索といった分野でAIを活用してきたが、2025年度はこうした活用をさらに強化し、「2倍の200億円を上回る利益を創出していきたい」と三木谷氏。


 モバイル事業が利益を生み出したことに対して三木谷氏は、「従前より、楽天モバイルという挑戦的なプロジェクトに取り組んできたが、明らかに楽天エコシステムへの貢献が大きいのは分かっていた」と強調。グループ全体の売り上げ、利益の伸びに対して、「モバイルファクターが非常に大きく、他の事業を含めてグループ全体で筋肉質になった」とアピールした。



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