
50代のAさんが人間ドックに行ったところ、医師から「肺のあたりに影が見つかりました。再検査が必要です」と告げられます。その瞬間、Aさんの頭の中が真っ白になりました。
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再検査の日までの数週間、Aさんは不安な日々を過ごしました。仕事に集中することもできず夜も眠れません。そんなAさんを支えてくれたのは、セカンドパートナーのBさんでした。AさんとBさんは既婚者同士ですが、プラトニックな関係です。AさんにとってBさんは、仕事や家庭の悩みを何でも相談できる大切な存在なのです。
BさんはAさんの不安を和らげるために毎日連絡をくれ、時には一緒に散歩に出かけ、Aさんの気持ちを紛らわせてくれました。Bさんの存在のおかげで、Aさんは少しずつ前を向く勇気を取り戻していきました。
再検査の日が近づくにつれ、Aさんは万が一のことを考えずにはいられません。Aさんは決意を固め、遺言書を書くことにしました。妻や子供たちのことはもちろん、心の支えとなってくれているBさんのことも忘れません。
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Aさんは、Bさんへの感謝を形にしようと何かしらの財産を遺したいと考えました。しかしセカンドパートナーという立場で、それが可能なのかどうか分かりません。法律的にはどうなのか、家族に問題は生じないのか、様々な疑問が浮かびました。
セカンドパートナーへの財産相続は可能なのか、北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。
ーセカンドパートナーへ財産を遺すことはできますか
結論としてAさんの財産をBさんに遺すことは可能と考えます。
相続人となれるのは、配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹、代襲者、一定の再代襲者と民法で定められているため、これらの関係にないBさんは相続人にはなれません。法律上の配偶者以外のパートナーは、相続人にはなりえません。
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したがってセカンドパートナーに財産を遺したい場合は、Aさんが決意したように遺言書を作成しセカンドバートナーに対する遺贈内容を記しておく必要があります。
ー遺言書を作成すれば問題ないのでしょうか
Aさんには妻と子がいます。この場合、AさんとBさんとの間が法律上不倫の関係と評価される間柄にないことが前提となります。不倫関係の場合の相手方への遺贈は、民法90条にいう「公序良俗違反」として無効と判断されることがあります。
また、相続人の遺留分侵害に注意する必要があるでしょう。相続人の遺留分を侵害する財産をBさんに渡そうとすると、相続が起きてから相続人からBさんに対して遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。このことでAさん家族とBさんとの間に争いが生まれてしまうかもしれません。
遺留分を侵害しない内容の遺言とするのが無難と考えますが、遺言書の付言事項としてこのような遺言をした理由や自身の想いを記すことで家族へ理解を求めるなどの方法も考えられます。少ない事例ですが、あらかじめ家族に事情を説明し、合意形成を図ろうとする方もいらっしゃいました。
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◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士 長崎県諫早市出身。大阪府茨木市にて開業。前職の信託銀行員時代に1,000件以上の遺言・相続手続きを担当し、3,000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)