大学合格の胴上げであわや大事故！…2メートル落下寸前　ケガをさせたら犯罪になる？ 過去には判例も【弁護士が解説】

高校3年生のAさんは、志望校の合格発表の日を迎え緊張の面持ちでした。試験当日の手ごたえは感じていたため、合格しているだろうと思ってはいるものの、結果を見るまでは油断できません。

【漫画】「三流大学のくせに…」中学生息子の衝撃発言に母は動揺　まさか家庭内で“学歴差別”を受けるとは

Aさんは大学の掲示板の前に立ち、自分の受験番号を探します。順番に自分の番号を探していたところ、合格していることがわかりAさんの胸は喜びで一杯になりました。長年の夢が叶った瞬間に、思わず両手を挙げてガッツポーズをしてしまいます。

すぐに両親に嬉しい報告をしようとスマホを取り出したその時、突然の出来事が起こりました。大学の体育会系クラブのメンバーたちが、合格者を歓迎する伝統的な行事として、Aさんに駆け寄ってきたのです。彼らはAさんの合格を祝福するつもりで、突然の胴上げを始めました。

予期せぬ出来事に驚いたAさんは、持ち上げられる中でバランスを崩してしまいました。胴上げをしていた学生たちも、Aさんの動きに対応できず高さ約2メートルから地面に落下しそうになってしまいます。

幸い胴上げをフォローしていた学生たちがAさんを受け止めたので、大事には至りませんでしたが、せっかくの喜びの気分は台無しです。万が一、Aさんがケガをしていたら医療費や通院にかかる交通費、さらには今後の学業にも影響が出ていたかもしれません。

めでたいこととはいえ、胴上げによってケガをさせてしまった場合、何かしら罰せられるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに伺いました。

ー胴上げでケガをさせてしまった場合、罪に問われるのでしょうか

胴上げでケガをさせてしまった場合、法的責任を問われるでしょう。具体的には過失致傷罪に問われ、亡くなられた場合には過失致死罪が成立する可能性があります。もし有罪となった場合には、過失致傷罪で30万円以下の罰金、過失致死罪で50万円以下の罰金が課せられます。

実際に定年を迎えた上司の送別会にて、胴上げがおこなわれ誤って落下した上司が亡くなった事例があります。この事例では、過失致死罪が認められ被告人に罰金10万円が課せられました。さらに刑事上の責任だけでなく、民事上の損害賠償責任も果たさなければなりません。

ー故意でなくても罰せられるのですね

故意でなくても過失として罰せられます。もちろん故意に落としたとなれば、さらに重い罪に問われるでしょう。いずれにせよ胴上げは危険なものだと認識し、ノリや勢いで安易におこなうものではないと認識すべきです。

◆北村真一（きたむら・しんいち）弁護士　「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

（まいどなニュース特約・長澤 芳子）

動画・画像が表示されない場合はこちら