ピコ太郎が支援続ける小児がん。“プロデューサー”が明かす実情とは「本当はもっと国に助けてほしいけど……」

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2025年02月15日 16:20  女子SPA!

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「ピコ太郎」のプロデューサーとして知られる古坂大魔王さん(51歳)は、2018年に小児がんで早世した女の子・あいりちゃんと出会ったことをきっかけに、小児がん治療をサポートするためのチャリティー活動に積極的に取り組んでいます。

 2月15日の「国際小児がんデー(International Childhood Cancer Day)」に合わせ、小児がん治療の課題や、必要とされている支援などについて古坂さんに聞きました。

◆小児がんの発見が遅れるのはなぜ?

――小児がんになると、どんなことが大変なのですか?

古坂大魔王さん(以下、古坂):子どもは大人のように健康診断や人間ドックを受ける機会がありません。だから、がんが見つかったときには多くの子どもたちがステージ3(リンパ節などへの転移が見られる状態)からステージ4(遠隔臓器やリンパに転移が見られ、治療が難しい状態)なのだそうです。そのため、治療がより困難になってしまうんです。

それに抗がん剤治療は、大人でも耐え難いほどつらいものです。がん細胞を死滅させなければいけないけど、子どもの命も守らなくてはいけないわけですから、子どもの抗がん剤治療は調整がすごく難しいと聞きます。

そしてやはり大変なのはお金です。保険適用の治療であれば国が上限付きで助成してくれますが、保険適用外の治療や差額ベッド代、交通費などは自費になるため、莫大な出費に悩む親御さんがたくさんいます。

日本でできる治療では手の施しようがなくなり、未承認薬を使いたいけれど承認されるまで何年も待っていたら我が子の体が持たない。そこで親御さんは海外へ渡ることを考えますが、薬代だけで何千万円もかかったりするんです。自分たちだけで払えるわけがありませんよね。本当は国にもっと助けてほしいのですが、残された時間がないので自分たちでクラウドファンディングなどを立ち上げ、お金を集めるしかありません。

――小児がんの子どもたちを支援するためには、何が大切だと思いますか?

古坂:何よりも、まずは認知度を上げることだと思います。新しい治療薬を開発してもらうためにも、お金を集めるためにも、世の中にもっと知ってもらわないといけない。小児がんの子どもは約7500人に1人と割合としては少ないし、今まさに病気と闘っているので自分たちで声を上げる術がありません。だから認知度を上げるためには、芸能人が一番いいんですよ。僕は医者でも何でもないから治すことはできないけど、適材適所で、道化師としてその役割を果たしたいなと思っています。

◆「せっかく生まれてきたんだから、人生を少しでも豊かにしたい」

――エンターテイナーとして、小児がんの子どもたちの支援に関わることに、どんな意義を感じていますか?

古坂:認知度を上げること以外にも、実はエンタメそのものに相当意味があるんじゃないかと思っています。2014年に肺がんで亡くなった「東京プリン」という男性デュオの牧野隆志さんは、余命宣告された後もテレビに出続けたんです。本人曰く、そうすることで余命がどんどん伸びたんだと。「お笑いライブを見ると、痛みが減っていくんだよ」とも言っていました。だからお笑いをやることで、少しでもつらさを軽減できれば、ひょっとしたら治るかもしれない。いや、治らないかもしれないけど、せっかく生まれてきたんだから楽しませたいし、人生を少しでも豊かにしたいなと思っています。

――日本では、チャリティの文化がなかなか根付かないと言われていますが、なぜだと思いますか?

古坂:日本には良いところがたくさんあります。一番は国民皆保険です。これは世界に誇れることだし、お年寄りと子どもは医療費はほとんどかかりません。あと、共感能力が高いこと。だから一般的な病気には強いし、平均的な人たち同士では共感することができます。でも一方で、飛び抜けている人や、極端に弱い存在に対しては排除しようとする傾向があると感じます。弱っている人を助けようとすると、「カッコつけやがって」と言われてしまったりする。災害時の募金でも、10円寄付した人は何も言われないけど、100万円寄付すると一部の人たちから叩かれてしまいます。

◆チャリティは贅沢品?「偽善者」との批判も

――古坂さん自身も、チャリティ活動をしていることで批判されることはあるのですか?

古坂:SNSなどで「偽善じゃん」と叩かれますし、直接知っている方がそういうことをネットで書いていたこともありました。今は子どもを持つこと自体が贅沢だなんて言われますけど、チャリティもそう見られる節があります。良いことをしている人を見ると、懐に余裕があることを自慢しているように見えるんですね。飛び抜けている人をリスペクトしていかないといけないですけど、今の日本の状況をみていると、まだ難しいのかもしれません。

小児がんで亡くなったあいりちゃんのことをブログに書いたときも「親の許可をとっているのか」「偽善者だ」と批判を受けましたが、あいりちゃんのパパとママは「ぜひ書いてほしい」と言ってくださいました。意外かもしれないですが、「この子の人生を広げてほしい」と願っておられました。我が子の生きた証がほしいんですね。僕も子育てをするようになって、その気持ちがわかるようになりました。下の子は今4歳ですが、もし亡くなってしまったら思い描いていた未来が消えてしまう。だからといって「いなかったことにされたくない」と感じると思います。

「偽善だ」と批判されたら、僕はいつも「はい、偽善です」と言ってます。「自己満足以外に何がありますか?」と。そう言わないと、何も進まない気がしてるんです。批判なんて無視して、「それよりもどうしたらもっと小児がんのことを知ってもらえるのかな」って考えるようにしています。

◆募金を通して、子どもたちに関わる喜びを感じてほしい

――一般人の私たちが小児がんの子どもたちを支援したい場合、何から始めればいいですか?

古坂:「子どもがいないから自分には関係ないや」と思う人ほど、関わってほしいです。子どもは贅沢品だなんて言われるけど、自分の子どもじゃなくたって子育てはできると思うんです。うちの子とよく遊んでくれてる後輩芸人は、うちの子の学芸会で号泣してました。関わったから、感動できるんですよ。誰の子どもであっても育児に携わることには意味があると思うし、「子どもを救っている」と思えたら生きがいになると思います。一番弱くて、助けを求めている存在を助けたほうがいいと思うんです。

まず何からすればいいかというと、募金です。募金はハードルが高いようなら、小児がんの啓発に関するイベントの投稿をシェアするだけでもいいと思います。でも、少し頑張って1000円とか1万円募金してみると、「あのお金どうなったんだろう」と関心を持つようになります。携帯代に使うよりも、こちらのほうが僕は楽しいと思う。じゃあ10万円募金したらどうなるかというと、10万円分、「頑張れ!」という気持ちになります。

――今後は、小児がん患者の支援のためにどんな活動をしていきたいですか?

古坂:世界的な有名人とコラボして、エイベックスが支援している小児がん治療支援チャリティーライブ「LIVE EMPOWER CHILDREN」を有名にしていきたいですね。それこそ、ジャスティン・ビーバーさんとか、トランプさんとやれたら最高です(笑)。

今でもメンツは半端ないですけど、もっともっと注目を集めて皆さんにお金を注ぎ込んでもらってフェスを大きくしていかないと。アフリカの飢餓と貧困の救済のために作曲された「We Are The World」みたいに大きく広げていきたいです。ピコ太郎だけじゃできないですが、みんなで頑張って、少しでも力になれたらいいなと思います。

<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。

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