うつで退職した娘を「甘えだ」と突っぱねる母親。食事を残した娘に“まさかのひと言”

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2025年02月15日 16:20  女子SPA!

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茜さん(仮名)※本人特定を避けるため、写真にボカシ加工を施しています
 こんにちは。これまで1000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、「恋愛に役立つリアルな情報」を日々お伝えしています。

 茜さん(仮名・31歳/関東在住)は毒親育ちで、現在は実家と絶縁状態。「結婚したくないわけじゃないけど、子どもは絶対に産みたくない」と話しています。茜さんはどのように毒母の呪縛から逃れ、自分の居場所を手にしていったのでしょうか。詳しいお話を聞きました。

◆母親に虐待を受けて、精神的に追い込まれながら育つ

 幼い頃から成人後まで、母親から長年の虐待・教育虐待を受けていた茜さん。教師になりたくもないのに教員免許のための勉強を母親から強いられ、大学卒業後もフリーターをしながら4回も教員採用試験を受け続けました。

 26歳の頃、職場でレシートの数字入力を間違えるなどのミスを連発。疲労や“たまたま・うっかり”では説明できない頻度と内容に疑問を抱いた茜さんは、精神科医を受診。そこで医師と細かく話をした結果、うつ病と発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)だと診断されました。

 医師からは障害者手帳の申請も勧められますが、茜さんは母親が理解を示してくれると思えませんでした。診断のことを母親に隠すため、手帳の取得はせずに通院を続けることにしました。

◆「病気なわけがない。うつ病なんて甘え」と突っぱねる母親

 ADHDに見られる症状を改善するためにストラテラ(アトモキセチン)という薬を処方されたのですが、副作用で食事がとれなくなりました。ご飯を残す茜さんを見て母親は「何が不満なの?」と責め立てます。それでも、どうしても食べることができません。

 仕方なく、うつ病とADHDだと診断され薬を飲んでいることを打ち明けますが、「そんなわけがない。病気なわけがない。うつ病なんて甘え」と突っぱねられます。

 茜さんはもともと普通体型で体重は50kgほどでしたが、そのうち布団で寝ていても骨が当たって痛いと感じるまでに痩せてしまいます。最も痩せていた時は39kgほどだったそうです。仕事にも行けなくなり、退職してしまいます。

◆布団から起きられず、通院のために貯金を切り崩す日々

 当時の茜さんは、朝8時ごろに目が覚めたとしても、布団から起き上がるのに時間がかかって、15時過ぎにやっと起き上がれるような状態だったそうです。激減してしまった体重を戻すために薬を減らしつつも通院は続けていたので、治療費や薬代のために貯金を切り崩す日々でした。

 しかし、このころになってようやく、母親は娘を教師にすることを諦めます。教師になることを応援してくれていた当時の彼氏・達也さんとも疎遠になり、別れます。

 姉にADHDのことを打ち明けたところ、「お母さんに伝えていないけど、私も学習障害(LD)で、ディスレクシア(読み書きに困難がある障害)って診断されたんだよ」と返されます。

◆姉にも障がいがあると知り、「ある結論」に達した

 茜さんは自分にも姉にも発達障害があることから、ある結論に達します。それは「母もなんらかの発達障害や精神疾患なのだろう」というものです。パーソナリティ障害の可能性も考えられます。とはいえ、母親が医療機関を受診するとは到底思えません。

 お姉さんはその後、「住民基本台帳制度におけるDV等被害者への支援措置」という、DV加害者による住民票の閲覧等に制限をかける制度を利用してから、実家を出て行きました。

 ちなみにこのDV等支援措置は、警察署などの相談機関で被害の相談をして支援の必要性が認められれば、「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を市区町村に提出することで利用できます。詳しくは過去の記事<「朝起こされるとき、母に性器を触られる」“異常すぎるDV母親”から逃れた、31歳女性の胸中>もご参照ください。

 闘病に専念しはじめてから1年ほど経ち、茜さんの貯金も底をつきます。体調は万全ではなかったものの、そろそろ仕事を始めなくてはなりません。

◆就職のために、障害者手帳が欲しかった

 茜さんは就活のためにも、障害者手帳を取得しようと決めました。取得には、医師による診断書と証明写真、身分証明書を持って、市区町村の障害福祉課などで申請する必要があります。

「障害者手帳があれば、障害者雇用で働くことができます。事業規模によるようですが、法律で企業には障害者を雇用する義務があります。健常者と同じ一般雇用で働くこともできるので、持っていて損はありません」と茜さん。

 一定の規模以上の企業には、障害者を一定割合雇用する法的義務があります。茜さんのいう一般雇用で働くというのはいわゆるクローズ就労といって、就職先に障害の内容を開示しないで働くことです。これに対し、主に障害者雇用枠での就業のことはオープン就労といいます。障がいを持つ方にとって、オープン就労・クローズ就労それぞれにメリット・デメリットがあります。

◆娘の障害者手帳取得を邪魔する母親

 茜さんが障害者手帳申請のため早起きをしたところ、母親がいつもと違う様子に気が付き「どこに行くの?」と尋ねてきました。

 障害者手帳取得の手続きに行くと伝えると、

「そんなことやったら障害者になるじゃない。障害者の窓口に行くってことでしょう。周りの人に見られて、障害者だって噂されるよ。近所で笑われるよ」

 と、真っ先に世間体を気にしたことを言い出すのです。そのまま茜さんと玄関で喧嘩になります。

 母親は茜さんが一人で家を出ることを頑なに阻止しようとし、「お父さんが行ってきてあげて」とリビングにいる父親に声をかけました。「あげる」という上から目線の言い方に怒りを覚えた茜さん。「あげるってなによ!」と怒鳴り玄関にある靴を投げつけて、何とか玄関を出ていきました。

 その後市役所で申請を完了して、無事に障害者手帳を取得。母親への“反抗”を経て、就活を始めることができました。

◆毎日「障がい者のふりなんてやめたら?」

 障害者雇用で求人を見つけた茜さんは、ある企業で総務のアシスタントとして働き始めました。仕事内容は清掃や発注、機材メンテナンス等です。この時茜さんは29歳でした。

 母親からは毎日「障がい者のふりなんてやめたら?」「仕事辞める日決めた?」などと言われます。

 当時の茜さんは、1日6時間勤務で月の手取りは15万円ほどでした。そのことについても「低収入。下流の仕事だ」と非難するのです。母親から離れるために家を出たいと思っても、この収入では一人暮らしは困難です。

 茜さんの職場には「そのアイシャドウかわいいね」「今日の服似合う」と些細なことを褒めてくれる上司がいました。同僚も優しく仕事を認めてくれて、居心地がよかったそうです。そんな環境で、徐々に自分のことを考える余裕が出てきました。

 茜さんは同じ境遇の人とつながれる場がないかと思い始め、調べるうちに発達障害の人が集まるカフェがあることを知ります。何度か通って情報交換をする中で、障がい者向けのマッチングアプリ「IRODORI(イロドリ)」の存在を知ります。

◆「私は一人じゃない」と思うことができた

 過去にもPairs(ペアーズ)というマッチングアプリ使ったことがあったそうですが、当時の茜さんはフリーターをしながら教員採用試験を受けている状況でした。マッチした同年代の相手は大抵社員として働いており、釣り合いが取れなくて形見が狭いと感じた彼女は、恋人ができる前に退会しました。

 マッチングアプリで知り合えたとしても、発達障害であることを相手に打ち明けて、理解してもらえるか不安がありました。

 IRODORIの登録時には身分証の他に、障害者手帳かお薬手帳の申請が必要です。恋人作り限らず、仲間や友達作り目的で利用できるのも特徴的で、同性同士のマッチング機能や雑談でつながる音声ライブ配信機能もありました。

 茜さんは友達もできそうなことに惹かれて登録しました。音声ライブで「ADHDです」と言えば「私もだよ」と反応が返ってきて、「一人じゃない」と思えたそうです。

◆障がいを理解し合える彼氏ができた

 茜さんは自己紹介文に、自分の症状や趣味を書いた上で「子どもは欲しくありません」と明記していました。

 そして、同じことを書いている4歳年上の大輔さん(仮名)とマッチングします。彼はASD(自閉スペクトラム症)です。カフェに行くのが好きという共通点もありメッセージのやり取りが続き、知り合って1カ月後にデートをすることになります。

 一度も女性と交際したことがないと打ち明けてくれた大輔さん。就労移行支援という、障がいのある人が一般企業に就職するための職業訓練等を受けている最中であることも話してくれました。

 母親の反対を押し切って行動を始めた茜さん。一歩、二歩と踏み出したことで、自分の居場所を見つけつつあります。

【IRODORI】
障がい者の出会いを応援するマッチングアプリ。障がいを持つ人、障がいに理解のある人のみが在籍している。恋愛はだけでなく仲間や友人探しでも利用可能。累計ダウンロード数6万以上、報告されたカップル成立数300組以上。
<取材・文/菊乃>

【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt

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