なぜ、セブンは一部店舗で“要塞レジ”を導入したのか 開発期間は3年 ある種の威圧感はカスハラにも効果あり?

216

2025年02月17日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

セブンが店舗の防犯を強化している

 セブン-イレブンが、一部店舗で防犯体制を強化している。レジにはパネルを設置し、まるで要塞のような防備体制を敷き、不審者が乗り越えてカウンター内に入れないようになっている。また、深夜時間帯には自動ドアを閉鎖し、従業員がリモコンで開けるシステムを導入。今になってなぜ、こうした防犯を意識した店舗を増やそうとしているのか。背景には、人手不足の影響もありそうだ。


【画像】セブンの要塞みたいなレジ、「現在の時間は自動ドアがすぐに開きません」の告知(計2枚)


●ALSOK、LIXILと3年がかりで開発


 セブン&アイ・ホールディングス(HD)によると、新しい防犯対策の名称は「セーフティガードシステム」。現在は約50店舗でテスト導入をしている。担当者は次のように話す。


 「主な機能は『レジカウンターへのパネル設置』『深夜時間帯のドア施錠』『転倒検知装置』の3点です。防犯面の強化に加え、バックルームでの作業中などに急病や事故が発生した場合に警備会社と速やかに連携でき、より安全かつ安心に働けるようにすることが目的です」


 カウンターの前面にはフレームとパネルを設置し、不審者が乗り越えられないような構造になっている。リモコンによる開錠式ドアは深夜帯に作動。客が自動ドアに近付いても開かず、店員が確認してから開ける。転倒検知装置は店員に動きがない際、警備会社に通報する仕組み。店員が小型装置を身に付け、異常を検知する。これらのシステムはALSOK及びLIXILと3年かけて開発した。


 セブン-イレブンが国内1号店を構えてから50年以上がたつ。鉄格子などで防犯性を高める仕組みは海外の小売店では一般的だが、なぜ今になって導入したのか。


 「カラーボールや従業員用防御盾といった防犯対策は以前からありましたので、今回初めて検討したわけではありません。働く場所が多様化する中で、さらなる安全安心な職場環境を提供できるようにセーフティガードシステムの導入を開始しました」(担当者)


 さらなる安全安心と話すが、日本のコンビニはそれほど危険な状況に置かれているのだろうか。警察庁が発表している「令和5年の刑法犯に関する統計資料」によると、2023年におけるコンビニ強盗の認知件数は136件。前年の74件から2倍ほどに増えているが、年々減少傾向にある。セーフティガードシステムの構想は3年前に始まったとしているが、当時、コンビニ強盗が増えていたわけではない。


●背景に「ワンオペ」?


 一般的にコンビニ強盗は特定の地域に分布し、住宅街など客数の少ない店舗で起きやすい。時間帯では深夜に集中する。今後の導入地域について聞いたところ、希望するオーナーの店舗に導入予定で、特定のエリア・店舗に導入するものではないという。


 いくつかある機能のうち注目なのが、転倒検知装置だ。上述の通り店員の異常を検知するものだが、店員が複数いれば異常に気が付くはず。すなわち、ワンオペを念頭に置いた機能と推測できる。過去、飲食チェーンでワンオペしていたスタッフが病気に倒れて死亡した事件もあることからも、ワンオペ時のアラート機能は非常に重要だといえる。なおセブンは「2人以上での勤務体制が望ましい」としており、ワンオペを制限しているわけではないという。


 統計によると、コンビニ強盗に狙われるのは店員が単独か2人の店舗。2人いても、1人が商品整理などで表に出ていないと、狙われやすい傾向にあるようだ。人手不足が悪化する昨今、ワンオペの店舗は今後増えていきそうであり、深夜の人手を確保できない加盟店で導入が進む可能性が高い。


●「ハラスメント対策」も念頭に?


 また、カスハラやセクハラなどのハラスメントも店員を脅かす存在だ。システムの開発には、ハラスメント対策の目的もあるのか質問したところ、直接的な回答は得られなかった。しかし、近年のコンビニ業界を見ると、ハラスメント対策を強化する動きが見られることから、ある程度は影響しているだろう。


 ローソングループは2024年に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、迷惑客に対して出入り禁止措置を取る可能性もあるとしている。店員の名札を任意のアルファベットで表記できるようにもした。その後、ファミマとセブンもローソンも同様の動きを進めている。


 セーフティガードシステムとしてレジカウンターに設置するパネルは、店員と客の境界を明確に分けるものであり、客にはある種の威圧感を与える。客が店員に直接触れにくい構造となっており、ハラスメント対策に効果を発揮しそうだ。


 今後、セーフティガードシステムの導入は進むのか。2024年末時点で導入が報じられた江東枝川2丁目店では、すでにシステムを撤去しているなど、順調ではなさそうに映る。システムの導入により従業員の安全安心が保たれるのは良いことだが、導入が不可欠になる状態にはなってほしくはない。今後に注目したい。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • コンビニのトイレの話みたいに、このレジの有無も周辺の治安のバロメーターになるのかな…
    • イイネ!18
    • コメント 5件

つぶやき一覧へ(155件)

ニュース設定