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《冬の月曜日の朝は死亡率が2〜3倍上昇する》
こんなショッキングな報告をするのは、『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』(ブルーバックス)の著者であり、東京女子医大名誉教授で戸塚ロイヤルクリニック医師の大塚邦明先生だ。
「『冬』『月曜日』『朝』というのは、いずれも心臓、脳血管の重篤な疾患が現れやすいタイミングです。
時間医学の生みの親と呼ばれているミネソタ大学のフランツ・ハルバーグ教授は、心筋梗塞や脳梗塞、心臓性急死の発症頻度は冬に多く、そのリスクはそれ以外の季節に比べて1.5〜1.7倍、月曜日に発生するリスクはそれ以外の曜日に比べて1.3〜1.5倍、朝に発症するリスクはそれ以外の時間帯に比べて2〜3倍であると報告しています」
「冬」「月曜日」「朝」が重なると心筋梗塞のリスクは実に、7.65倍にもなるわけだ。
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こうしたリスクは、私たちの体にある“リズム”が起因しているという。そのリズムとは「サーカディアンリズム」あるいは「体内時計」と呼ばれている。
「『体内時計』は、私たちの細胞の中に存在する遺伝子が、太陽の動きと連動することで働きます。このリズムは1日(24時間)、1週間(7日)、1カ月(約30日)、季節(約3カ月)といった一定の周期があることがわかっています」(大塚先生、以下同)
ふだんの生活の中で自分の「体内時計」を意識している人は多くはないだろう。
しかし実は、「体内時計」はしっかりと私たちの遺伝子に組み込まれているもので、私たちの健康と大いに関係している。
それゆえ、その周期の乱れによる悪影響が明確に現れるのが、「冬」の「月曜日」の「朝」で、このタイミングで心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な血管疾患が急増するというのだ。
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■週末にズレた生活リズムを戻すために無理が生じる
冬に血管疾患が増える原因にはヒートショックが挙げられる。
空気の暖かいところから、寒い場所に移動して血管が急に収縮することで、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率が上がる。
月曜日は週末の間にズレた生活のリズムを戻すために無理が生じて狭心症が発生しやすい。
朝は、副交感神経から交感神経への入れ替わりが行われるため、急速に血液が流れ始めて心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血、不整脈などが発症しやすくなる。
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直接の原因は、血管壁の弾力低下や血流の悪化などにあるが、環境によるショックに体が対応しきれない状態になりやすいのが、これらの時間帯というわけだ。
また、体内時計のアンバランスは、メタボ、高血圧、糖尿病、うつ病、骨粗しょう症などの生活習慣病を招くこともわかっている。
「最近ではがん、老化現象、アルツハイマー型認知症も体内時計と関係があることも明らかになってきました。
たとえば、夜勤を含む不規則な勤務体系の女性の場合、乳がんのリスクはそうでない人に比べて2倍になることがわかっています。
体内時計が狂うと、細胞内の遺伝子も不調になり、免疫、自律神経、ホルモンのバランスやリズムなどが乱れてしまうのです」
こうしたリスクには男女差や年齢差もあると大塚先生は加える。
「女性は男性よりも不安感や感情調節障害を訴える頻度が高いことからもわかるように、ストレスに弱い傾向があり、突然死のリスクも高くなりがちです。
さらに、更年期でエストロゲンの分泌が減ると、体はストレスに対して一層弱くなります」
こうしたリスクに対する予防法は、なにより太陽の動きに合わせた生活リズムを送ること。それによって遺伝子の役割を最大限に働かせることができるのだ。
■適切な1日のルーティンを日々の生活に習慣づける
「太陽は私たちの体内時計のセンサーです。脳の視床下部は、私たちの健康を維持するために体の働きを調整している自律神経やホルモンなどを取り仕切る働きをしています。
これが太陽の光を受けることで、私たちの生体リズムをつかさどり、全身の細胞内にある遺伝子と連絡をとりあって健康を維持しようとしていることが、近年の研究でわかってきました」
たとえば、食事の時間や運動の時間などにも、遺伝子が力を発揮しやすい時間帯がある。
朝は6〜7時に起床し、起床後1時間以内に十分なタンパク質と糖質の朝食をとろう。
そして午前中に30分程度日光浴。
昼食は正午あたりにとり、15〜18時に有酸素運動をすることで、細胞に酸素がいきわたるようになり、体が疲れて夜ぐっすり眠ることができる。
夕食は18〜19時くらい、就寝時間もできるだけ“規則正しく”を心がけて、ぐっすり眠れるよう部屋を真っ暗にすることが大切だ。
「私たちの体は常に新しい細胞が生まれ続けているため、生活習慣を正しくすることで、傷ついた細胞が修復され、体調が整いやすくなっていきます。細胞の修復は、いくつになっても可能です」
寒さが続く今の時季は特に、太陽を意識した生活習慣を持ちたい。
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