“手取り19万円”から毎月養育費6万円を捻出「元妻が再婚して息子と会えなくなったのに払うのは…」46歳バツイチ男性の苦悩

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2025年02月17日 16:11  日刊SPA!

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2024年12月、「第37回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でフォトジェニック賞を受賞した谷原七音さんに注目が集まりました。父親は谷原章介さんですが、彼はあくまで養父で、実親はいしだ壱成さんです。これは、受賞のインタビューで本人が認めています。つまり、いしださんの元妻が子連れで谷原章介さんと再婚したということです。
今の時代、子連れ再婚は決して珍しくありません。厚生労働省の人口動態統計によると2021年の再婚(夫婦どちらか、もしくは両方が再婚。130,227組)は婚姻全体(501,138組)の26%。1990年の再婚は132,357組、婚姻全体は742,264組で再婚の割合は18%だったので全体に占める割合は30年で4割近く増えています。

◆46歳で年収400万円、バツイチ男性のケース

芸能界でいうならば、B’zの稲葉浩志さんの妻は松崎しげるさんの元妻です。彼女は松崎さんと離婚し、子連れで稲葉さんと再婚したことも広く知れ渡っています。法律上、非親権者である父親は親権者である母親に対して子どもの養育費を支払う義務が発生します(民法766条)。いしださん、松崎さんから養育費を受け取っているかどうかは知る由もないですが、谷原さん、稲葉さんは超人気俳優、ミュージシャンです。受け取らずとも大きな支障はないかもしれません。

翻って一般人の場合ではどうでしょうか。(元妻が)再婚しても養育費を払わないといけないのか。金額を減らしたり、振込を止めたりしても良いのか。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして養育費の相談を受けることが多いですが、そんな悩みを抱えるバツイチ男性はたくさん見てきました。今回の相談者・長岡健也さん(仮名・46歳・年収400万円)もそんな一人です。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、本籍地、養育費の金額や延滞の理由などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

<登場人物(年齢は相談時点。すべて仮名)>
元夫:長岡健也(46歳。会社員。年収400万円)☆今回の相談者
元妻:下田奈々(44歳)
子:下田唯人(12歳)
元妻の再婚相手:下田伸人(48歳)

◆手取19万円から6万円を捻出するのは大変で…

健也さんは「(元妻が)再婚したことはうすうす勘付いていました。でも、養育費の払いをやめられない事情があって」と苦しい胸のうちを吐露します。健也さんが元妻と離婚したのは9年前。元妻が当時3歳だった一人息子を引き取り、健也さんは毎月6万円を支払うことを約束したそう。

離婚7年目まで毎月せっせとATMで振込の操作を続けたのですが、健也さんの年収は400万円(手取りは毎月19万円)。どこにでもいる平凡のサラリーマンなので、一人暮らしをしつつ、毎月6万円を捻出するのは大変です。実際、健也さんも勤務先からの給料では足りず、休日にこっそりとアルバイトをし、バイト代で養育費を払っていたそう。しかし、アルバイトは毎月3〜4日。バイト代は6万〜7万円。1日も休まずに働く週もあり、下血などの症状が現れるほど体力的には厳しい状況でした。

<毎月の支出>
家賃:75,000円
電気代:6,000円
ガス:5,000円
水道代:4,000円 
食費:40,000円
携帯代:5,000円
雑費:20,000円
日用品:10,000円
養育費:60,000円
計225,000円

そんななか振込のレシートに表記された息子さんの苗字が変わっていることに気付いたのです。健也さんは「別れた後、彼女は旧姓(網代)に戻りました。しかし、振込先の表記は下田に変更されていました」と振り返ります。

◆元妻は再婚。息子と会えないのに払い続けるのは…

健也さんは不定期ながら息子さんとの面会を継続。長期休暇の間でタイミングをみて食事をしたり、買い物をしたり、映画を見たり……。「少しでも父親らしいことをしてあげたい」という一心で健也さんは接点を持ち続けました。しかし、離婚7年目に入ると元妻が「学校の行事が忙しい」「インフルにかかった」「会いたくないって言っている」などと言い、面会を取り次がなくなったのです。

統計(令和3年度、全国ひとり親世帯等調査。厚生労働省)によると母子家庭のうち、現在も面会を続けているのは全体の30%、逆に面会を行ったことがないのは46%。健也さんは「面会を行ったことがある(20%)」に含まれます。なぜ、離婚すると子どもと会えなくなるのかというと、面会の取り決め(日時や回数、場所や送迎方法など)をしたのは全体のわずか30%に過ぎないからです。しかも、取り決めをしない理由でもっとも多いのは「元夫と関わりたくない」(26%)です。

健也さんは「僕だって余裕があるわけじゃありません。会えないのに6万も払うのが惜しくなって」と懺悔しますが、振込額を3万円に減らし、現在に至っています。ようやくアルバイトを辞め、まともな生活を送れるようになったところです。

◆再婚相手が養子縁組しているか否かで線引きが

前述の統計によると、元妻が子どもを引き取ったケースで養育費を現在も払っている父親は28%、一度でも払ったことが父親14%ですが、一度も払ったことがない父親も57%もいます。この統計に「養育費を一部だけ払っている」と選ぶ項目はありませんが、健也さんは元妻に相談もなく、いきなり無断で振込額を減らしました。この統計を見ると決して褒められたことではありません。

健也さんは今後、養育費をどうすればいいのかを悩んでおり、筆者の事務所に相談しに来ました。筆者は「再婚相手と息子さんが養子縁組しているかどうかで変わってきますよ」とアドバイスしました。

もし縁組していた場合、裁判所は扶養義務が実父(健也さん)から養父(再婚相手)に移るので、健也さんは養育費を払わなくてもいいという判断を下しています。(神戸家裁姫路支部審判・平成12年9月4日、仙台高裁・昭和37年6月15日など多数)

では養子縁組の有無をどのように確認すれば良いのでしょうか? やはり元妻から直接、聞き出すのは手っ取り早いですが、健也さんはそのことに消極的です。健也さんは「もう彼女と連絡をとりたくないんです。ぎりぎりの生活で貯金はスズメの涙程度ですよ」と嘆きます。

◆勝手に減額したら、財産を差し押さえられる?

ところで元妻は勝手に養育費を減らされたのに、健也さんへ督促の連絡をしなかったのでしょうか? 健也さんは「いや何も……」と答えます。上記の統計によると養育費の取り決めをしたのは全体の46%、約束を書面化したのは35%、強制執行が可能な書面に残したのは28%です。強制執行というのは元夫が約束した養育費を支払わなかった場合、元夫の財産を差し押さえることができるという意味です。

健也さんが離婚時、元妻と交わしたのは便箋1ページのみ。そこには健也さんが「毎月6万の養育費、責任をもって払います」と手書きをし、名前を漢字、フルネームで記入しただけ。これは強制力のある書面ではないので、現在、養育費を滞納中ですが、今のところ、給料を差し押さえられる心配はありません。健也さんは「今さら過去の不足を請求されても……だったら3万円ずつでも払っていければと思います」と言います。

このような場合、どのように養子縁組の有無を調べれば良いのでしょうか? 例えば、元妻の最新の戸籍には、そのことは書かれていますが、元夫の立場で元妻の戸籍謄本を入手するのは簡単ではありません。健也さんの場合、元妻の戸籍を辿るのに3つの書類を手に入れる必要がありました。健也さんの本籍地は出生から現在までA市のままです。

まず第一に必要なのは元妻と結婚している際の除籍謄本です。夫婦が離婚する場合、大半のケースでは妻が夫の戸籍から抜け、新しい戸籍を作ります。具体的には離婚届に新戸籍の所在を記入します。

◆息子の除籍謄本と“最新の”戸籍謄本も必要に

筆者が「覚えていますか?」と尋ねると、健也さんは首を振ります。そこで元妻と結婚している間の除籍謄本を手に入れるように頼みました。すでに離婚しているため、元妻の戸籍は抹消されているため、戸籍謄本ではなく「除籍謄本」です。しかし、戸籍の筆頭者はあくまで健也さん。自分自身の戸籍謄本なので役所は難なく発行してくれました。除籍謄本には「次、どこに本籍地を定めたのか」が書かれています。そのため、元妻が離婚後、B市に本籍を移したことが分かりました。

第二に必要なのは離婚直後の息子さんの除籍謄本です。筆者は「Bの市役所で離婚直後の息子さんの除籍謄本を申請してくださいと頼みました。夫婦は離婚したら他人です。しかし、親子は離婚しても親子です。そこで元妻ではなく息子さんの名前で申請するように言い添えました。

元妻が再婚したことは前もって把握しており、この戸籍が抹消され、除籍謄本の状態だということは分かっていました。大事なのは「次、どこに本籍地を定めたのか」ですが、それがC市だと書かれていました。これが再婚相手の本籍地です。

第三に必要なのは息子さんの“最新の”戸籍謄本です。「Cの市役所で戸籍謄本を申請してください」と再度頼みました。さすがにA市からC市へ行くのは負担が大きいので、今回は郵送で取り寄せました。そして無事、戸籍謄本が返送されてきたのですが、そこにははっきりと書かれていました。「再婚相手と息子さんが養子縁組を結んだこと」が。

◆勇気を振り絞り、元妻にLINEした結果…

健也さんが元妻に対して「息子を養子にしたら養育費の振込を終わりにしてくれ」と正々堂々、言い放つことができれば良いのですが、いかんせん、健也さんは養育費の滞納者という立場。ただでさえ喧嘩別れした元夫婦同士なので、どんな罵詈雑言をぶつけられるか分かりません。

しかし、何もしなければ何も始まらないので、健也さんは勇気を振り絞り、元妻のLINEにこう送ったのです。「再婚したみたいですね。唯人(息子さんの名前)の顔を見たのはもう2年以上も前です。このことをどう思っていますか?」と。そうすると元妻から返事が届きました。

「唯人は彼(再婚相手)のことを父親だと思っています。父親は一人で十分です。もう会わせるつもりはありません」ときっぱりと切り捨てたのです。息子さんは健也さんにとって唯一無二の我が子ですが、もう会うことが叶わなくなったのです。少なくとも成人し、彼自身で動けるようになるまでは。

そこで健也さんは「養子にしたら養育費を払わなくていいんですよね。それならそうしたいと思います」と覚悟を決めました。筆者は前もって「法律上、家族構成や経済状況の変化により養育費を見直すことは認められていますよ(民法880条)」と助言しておきました。そして元妻に対して切り出したのです。「実は戸籍を見ました。養子縁組しているんですよね。養育費の振込は今月で終了させてください」と。

◆「今までの分は耳を揃えて清算して」と…

しかし、元妻はすんなり「はい、そうですか」と認めませんでした。健也さんが2年間、養育費を滞納していることを突いてきたのです。「そういえば、養育費の振込がいつの間にか半分に減らされていました。私が知らないとでも思った?!」と。そして「来月から養育費をなしにするのはいいけど、今までの分は耳を揃えて清算してよね!」と反撃してきたのです。

確かに元妻の言う通り、養育費の免除は元妻が承諾したときから発生します。原則、過去に遡ることはできません。健也さんとしては毎月3万円を払うことは問題ないので、「3万を2年先まで払う。それでいいだろ?」と回答したところ、元妻は了承。こうして健也さんが養育費を払うのは残り2年、それ以降は支払から解放されることが決まったのです。

離婚時に支払を約束したお金のことを離婚債務といいます。具体的には養育費、慰謝料、解決金、そして元妻子が住む家の住宅ローンですが、離婚後、債務の負担が重すぎて身を亡ぼす人は珍しくありません。例えば、借金に借金を重ねて自転車操業に陥ったり、FXの信用取引で一攫千金を目論んで失敗したり、健也さんのように休日にアルバイトをして体調を崩すなどです。

離婚債務は何があろうと変更できないわけではなく、途中で見直せる場合もあります。どうしようもなく追い込まれる前に手を打った方が身のためです。

<TEXT/露木幸彦>

【露木幸彦】
1980年生まれ。国学院大学卒。行政書士・FP。男の離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、「離婚サポートnet」会員は6千人を突破。「ノンストップ」(フジテレビ)、「ホンマでっかTV」(フジテレビ)、「市民のミカタ」などに出演。著書は「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷)など11冊。X:@yukihiko55 ブログ:法律でメシを食う若造のブログ Facebook:yukihiko.tsuyuki

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