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2025年02月20日 17:01 ITmedia PC USER
スマホ向けの充電器やモバイルバッテリー、ポータブル電源などを手掛ける中国・深センのUGREENが、2024年から「NASync DXP」シリーズという製品でNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)市場に参入しているが、ついに日本国内にも正式に製品を投入する。
既に2月14日からクラウドファンディングの「GREENFUNDING」で支援(実質的には購入)の受け付けを行っており、5月中旬から順次発送予定となっている。
PC周辺機器メーカーでも、エンタープライズ向け製品のメーカーでもない、いわばスマホ周辺機器メーカーが送り出すNASは、いかほどのものか。今回は4ベイモデル「DXP4800 Plus」の実機をチェックしてみた。
●「NASync DXP」シリーズは2/4/6ベイモデルを用意
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今回、日本国内にはCES 2024にて発表された「NASync DXPシリーズ」のうち、HDDの搭載数の違う以下の3モデルが投入される。基本的な仕様は以下の通りだ。
HDDを搭載できる数以外にも、CPUやネットワークインタフェースの数、最大通信速度に違いがある。映像出力に対応している点もNASync DXPシリーズの特徴で、詳しくは後述するがNASに保存された写真や動画を外部ディスプレイやTVに表示する機能を利用できる。
ある程度、PCに詳しいユーザーに向けた話にはなるが、どのモデルも搭載しているCPUがIntelの第12世代Coreシリーズ、またはその派生となるSKUを採用しているため、一般的なNASキットに比べると高性能だ。
メモリやM.2 NVMe SSDの増設も可能なので、ただのデータ保管用途ではなく、ホームサーバとしてさまざまなサービスやアプリを追加して使うヘビーな用途にも耐えられるだけの拡張性がある点もうれしい。
●「DXP4800 Plus」を写真でチェック
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ここからは実際にDXP4800 Plusの実機を確認していく。
外観はUGREENの充電器などでおなじみのガンメタリックカラーでまとめられている。ボディー自体も金属素材が利用されているためチープさを感じさせない。ネットワーク機器などと合わせた設置はもちろんのこと、後述するTV周辺に置いても違和感なくなじむカラーだ。
本体前面にはHDDベイと電源スイッチ、そしてSDメモリーカードスロット、USB Type-CポートとUSB Standard-Aポートが設けられている。
HDDベイは専用の治具を使ってロックする機構があるため、不用意にHDDが外れたり、外されたりしてしまう心配はない。また、HDDは1台ずつトレイに装着して挿入する仕組みなので、NAS本体を分解して取り付けるような手間もない。
さらにHDDトレイにも工夫が施されており、こちらもドライバーやネジなどを使わないツールレス仕様だ。
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トレイが横に伸縮する仕組みで、広げた状態でHDDを置き、そしてトレイを閉じて挟み込むことでHDDがロックされる。付属品にプラスドライバーも入っているが、HDDの取り付け、取り外しの際に出番はない。
USBポートとSDメモリーカードスロットは、記録メディアを接続すれば中に保存されたデータをNASに取り込む際に利用できる。
本体背面には大型の空冷ファンが備わっている。UGREENのロゴの入ったマグネット式のダストフィルターが取り付けられているため、こちらもツールレスで着脱して掃除できるようになっている。
各種ポートは左から映像出力用のHDMIポート、USB Standard-Aポートが3基(うち1基はUSB 3.2)、2.5Gbps対応と10Gbps対応の有線LANポート、リセットボタン、そしてACアダプターを差し込む電源端子だ。
背面のUSBポートについても、前面と同様にフラッシュメモリや外付けHDDなどを接続し、データの取り込みや保存容量の拡張に利用できる。
本体底面にはネジ留めされたカバーがあり、ここを開けることでメモリスロットとM.2 SSDスロットにアクセスできる。
HDDはツールレスなのに対し、メモリとM.2 SSDはドライバーがなければアクセスできないあたり、ここを拡張するユーザーは玄人ということだろう。メモリはSO-DIMM(DDR5対応)、M.2 SSDはType2280に対応している。
電源は内蔵されていない。ACアダプターを接続する必要があり、ACアダプターのサイズも一般的なノートPC向けと比べると一回りから二回りほど大きい。NAS向けのACアダプターとしては普通のサイズともいえるが、設置場所によってはかさばるかもしれない。
●スマホアプリの使い心地が優秀
ここからは、実際にDXP4800 Plusの使い勝手をチェックしていこう。一般的なNASの初期設定といえば、ルーターやハブからのLANケーブルをNASに接続した後、PCのWebブラウザからNASの管理画面に入っていくか、PCに専用ソフトをインストールして行うことが多い。もちろん、DXP4800 Plusにおいてもこの手順で設定を行える。
だが、もっと簡単に設定できるのが専用スマホアプリを使う方法だ。今回試用したのはβ版のアプリとなるため、今後画面の構成などが変更になる可能性があることはあらかじめご了承頂きたい。
専用アプリをスマホにインストール後、スマホが接続されているWi-Fiネットワーク上にDXP4800 Plusがあれば自動的に検出され、初期設定を行える。
この初期設定も簡単で、ログインユーザーを作成すれば、すぐに管理画面にアクセスできる。管理画面もアプリ内で操作ができ、NAS本体の詳細な設定はもちろんのこと、初期設定では取り付けたHDDやSSDのフォーマット、RAIDアレイの構築といった操作をウィザード形式で進めていける。専門的な知識がなくても設定が可能だ。ちなみにRAIDはJBOD/ベーシック/0/1/5/6/10から選択できる。
もちろん、初期設定以外でもスマホファーストともいえる機能が充実している。専用アプリではNASyncシリーズのNASに対し、自動的に写真をバックアップする機能が用意されている。
一般的なクラウドサービスだと数GB〜1TB程度の容量となるが、NASに搭載するHDDであれば、安価なものを選んでも4TBや8TBと、スマートフォンの写真ではなかなか埋め尽くすのも難しい容量になるため、この先、数年間に渡り写真のバックアップ先として利用できるだろう。
もちろん複数ユーザーでの利用も想定されているため、家族のスマホにもアプリをインストールして設定すれば、家族全員分の写真をNASyncシリーズのNASに自動的にバックアップすることもできる。
さらに、保存された写真や動画はアプリ上で再生できるだけでなく、HDMIで接続されたディスプレイやTVの大画面に映し出すことも可能だ。
アルバムを見ながら、大画面で見たいものを「キャスト」するような操作感で使えるため、スマートフォンを使い慣れたユーザーであれば迷うことはないだろう。
●PCからはおなじみの操作感で利用できる
PCからの操作にも触れておこう。PCからNASyncシリーズにアクセスする方法はいろいろあるが、最も一般的な方法としてはWebブラウザからの操作だろう。
例えばスマホで初期設定を行った後、作ったアカウントを使ってPCからアクセスすることも可能だし、その逆も行えるため、どちらの手順を踏むかはユーザーのリテラシーレベル次第だ。
Webブラウザから表示した場合には、PCのデスクトップのようなホーム画面が表示される。このあたりはデザインこそ違えど、他社のNASを使ったことがあるユーザーであればおなじみといったところだろう。
もちろん他社のNASの操作の経験がない人であっても、PCライクな画面になっているので、ファイルアクセスなどは「ファイル」や「写真」から行えばよい。
ファイルのドラッグ&ドロップによる保存(転送)も行えるので、PCとNAS、どちらを操作しているかをあまり意識する必要もない。
また写真や動画はブラウザ内での再生にも対応している。使い方としてはスマホから自動的にバックアップを行い、それらのデータをPCからフォルダーに分類し直すような操作を行うと、データの保存先としてさらに活用できるだろう。
そしてPCからは重たいデータをNASに転送することも多い。今回レビューを行ったDXP4800 Plusは2.5Gbpsに加えて10Gbpsにも対応している。レビュー環境として筆者の手元には最大2.5GbpsまでのLAN環境しかなかったため、今回は2.5GbpsのLANポートを利用し、PCからのファイル転送速度を測定した。
転送速度は結果の通り、2.5Gbpsのほぼ上限値といえる速度を記録している。
さすがに内蔵のSSDや高速なUSB 3.2 Gen 2などで接続をする外付けストレージに比べれば遅いが、データ転送に何時間も待たされるようなこともない。
エンタープライズ向けの製品を除き、従来のNASは転送速度が遅いものも珍しくなく、データのバックアップ先として導入するも、速度の遅さから「目当てのデータを置いたが最後、取り出しづらい」といった印象を持っている人も多いかもしれないが、少なくともDXP4800 Plusはストレスなくデータの出し入れが行えるため、従来のNASに感じていた不満点は解消されている。
●玄人だけでなく、初心者も安心 スマホファーストなNASの新星
注目度の高いUGREENのNASync DXPシリーズだが、試用して感じたのはスマホファーストの作りがとにかく優秀ということだ。
NASといえばエンタープライズ向け、またはPCリテラシーの高い玄人向けの製品のイメージが強く、実際に利用しているユーザーやシチュエーションのほとんどはそうだろう。
もちろん一般家庭でも、誰か詳しい人がいて、家族に使い方を教えることで活用しているケースは存在するとは思うが、やはり操作は煩雑でなかなか利用してもらえないことの方が多いだろう(実際、筆者宅が今までそうだった)。
だが、NASync DXPシリーズは専用アプリの作り込みが非常に優秀で、それこそ写真や動画のバックアップは自動化できるなど、一度設定さえしてしまえば後は何もしないでいい。
また、TVに映し出す機能もあるため、家族全員で撮影したデータをため込むだけでなく、楽しむ機能を気軽に利用できるという点で、今までのNASよりも“普通の人向け”だと感じた。
もちろん玄人向けの設定もいろいろと行えるため、NASとしての基本性能の高さ、拡張性の高さを生かして利用してもいいだろう。どちらの使い方であっても、スマホ周辺機器メーカーが送り出すNASとは思えぬ完成度で、まさに“黒船的”な存在だ。他社に与える影響を含め、NAS市場の活性化に期待したい。
(製品協力:ユーグリーン・ジャパン)
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