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斎藤元彦知事(47)の内部告発文書問題に端を発した昨年11月の兵庫県知事選挙。斎藤知事に関するパワハラなどの疑惑を調査する百条委員会で、報告書の取りまとめが最終段階に入っているなか、衝撃的な事実が明るみになった。
「端的に申し上げますと、10月25日の片山元副知事の発言を録音して、立花氏に渡したのは私です」
2月19日夜、YouTubeで生配信されたビジネス動画メディア『ReHacQ』で、こう語ったのは百条委員会のメンバーで「日本維新の会」の増山誠県議(46)。その表情には、少し笑みが滲んでいた。
知事選を目前に控えた昨年10月25日、百条委員会では片山安孝前副知事(64)の証人尋問が非公開で行われた。だが選挙期間中に、尋問中の音声データがSNS上に流出。片山前副知事が、斎藤知事の疑惑を告発した元県民局長の私的情報を証言しようとしたところ、奥谷謙一委員長(39)が制止する様子が収められていた。
証人尋問が非公開とされたのは知事選への影響が考慮されたためだが、知事選が終わった後に映像は片山元副知事の一部音声を消した上で公開されていた。増山氏はそのことに言及した上で、「期日より前にそれ(音声データ)を提供したということ自体は、本当ルール違反ということですので。この場を借りて謝罪をさせていただきたいなということで、本当に皆さん申し訳ありませんでした」と陳謝した。
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■「非常に迷惑がかかってしまってる」増山氏が明かした自白の“動機”
いっぽう“自白”については「隠し立てするつもりは一切なくてですね」とし、「これまでの百条委員会含め、文書問題の経緯というのは自分の中でわかる限りのものは全てメモにして残してあって。この音声に関してもこの事態が収束したら公表しようと思ってました」と説明。
だが、予定よりも早く音声データを公表したのは理由があったようで、増山氏はこう続けた。
「いま岸口副委長も音声データを提供したんじゃないかということで、噂になってしまっていて迷惑がかかっている状況がありまして。立花氏も色々と発信されてるなかで、維新の会にも問い合わせがきたりして、非常に迷惑がかかってしまってるということで」
増山氏が名前を挙げた岸口副委員長とは、同じく日本維新の会に所属し百条委員会で副委員長を務める岸口実県議(60)のこと。岸口氏は「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏(57)に対し、百条委員会元メンバーで亡くなった竹内英明元県議(享年50)について「知事の失職を狙った黒幕」などと記した文書を手渡した疑惑が報じられていた。
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日本維新の会は2月19日に聞き取り調査を行い、岸口氏は民間の人と一緒に立花氏と会ったことを認め、「どちらが物理的に文書を手渡したかは少し記憶もおぼろげだが、立花氏に渡すであろうことも分かりながら同席したことをもって、自分が手渡したと言われても反論のしようがない」と釈明していた。
岸口氏に配慮したという増山氏は、斎藤知事のパワハラ疑惑をめぐる報道にも言及。「かなり偏向報道がしきりに行われていて、県民の皆さまの認識がかなり混乱していた状況だと思うんですね」とし、「このクーデターという元県民局長が文章を作成した背景を、県民の皆さまに知らされないまま選挙が行われることが、正しいことなのかという非常に強い思いがあって」とコメント。
音声データを公開することに葛藤を抱えつつも、「やはり多くの事実をより広く県民の方が知った上で行動をする、選挙に臨むということの方が私は大切だという風に思ったので」と強調した。
■マスコミへの音声データ提供は「握り潰される可能性が高い」と苦言も
だがそのいっぽうで、“百条委員会を説得する”という方法は「思い当たらなかった」とのこと。また増山氏によれば、昨年10月25日に片山元副知事の証人尋問が行われた後、囲み取材で片山元副知事が発言しようとした際に、“私的情報に関わる”として記者陣が制止するという事態が起きたという。そのことを振り返りつつ、音声データを立花氏に渡した理由をこう明かした。
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「普通で言ったら(片山元副知事に)発言をさせて、そこから必要か必要じゃないか、発表していいかどうかは記者が判断するべきだと思うんですけど。発言を止めるというのが前代未聞なことだと思って。私がマスコミの皆さんに(音声データを)提供したところで 、『これ握り潰される可能性が高いな』という風に考えました」
マスコミに苦言を呈した増山氏だが、立花氏については「結構メディアとして取り扱ってるというか、感覚 としてですよ。結構、発信力という意味ではあると思うので、そういう意味で立花氏に『こういう事実がありました』ということを教えたというかたちですね」と語っていた。
「県民の皆さんがこの情報を知らずに行動していいのか」との思いで、百条委員会のルールを破ってまで音声データを公開したという増山氏。動画のコメント欄では、彼の自白を聞いた視聴者から《増山議員の考え、行動を支持します》《人がなんと言おうと増山さんはよくやってくれた!貴方は立派な政治家です ありがとう》
と賛同する声が。
しかし斎藤知事の内部告発文書をめぐる問題では、元県民局長や竹内元県議が亡くなるといった痛ましい出来事も。増山氏による音声データの提供との因果関係は明白ではないが、竹内元県議は選挙期間中に過熱したSNSの誹謗中傷に悩まされていたといい、投開票翌日の昨年11月18日に一身上の理由で議員を辞職していた。
いまだ内部告発文書問題が終結していないなか、重大な事実を会見ではなく、YouTubeの生配信で明かした増山氏。一連の発言は各メディアでも取り上げられ、ニュースサイトのコメント欄やXでは批判の声も目立つ。また動画では笑顔を浮かべるなど、増山氏の振る舞いに緊張感が欠けていると感じた人もいた。
《SNSを利用して、相手を威嚇し世論を混乱させるお騒がせ立花に情報を無断で提供した行為は勿論、許される行為ではないが、もっと許せない行為が往生際も悪くこのように追い詰められてからはじめて自白するこの姿勢には只々、呆れるばかりだ》
《委員の身でありながら、情報漏洩。党や県の会見ではなく、ネットの動画配信で発言する。議員としての資質よりも、人間性の本質という意味でこの人のしていることは、本当に間違っていると思う》
20日、増山氏と岸口氏は百条委員の辞職届を提出し、議長に許可されたことが報じられた。今後、時間無制限の会見で説明責任を果たすというが、何を語るのか――。
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