愛知県警岡崎署(同県岡崎市)の留置場で2022年12月、勾留中の男性(当時43歳)が死亡した事件で、遺族が県に損害賠償を求めている訴訟の第2回口頭弁論が21日、名古屋地裁であり、留置主任官だった元警部(業務上過失致死罪で罰金80万円の略式命令)が男性の手足の拘束について、部下らに「ストレス発散だと思ってやってもらえばいい」などと引き継いでいたことが明らかとなった。
原告側は、今月初めに名古屋地検から開示された元警部の供述調書などの刑事訴訟記録を基に、元警部のこうした言動が特別公務員暴行陵虐致死罪に当たることや、拘束具使用の不法性などを主張した。
原告側の準備書面によると、男性は22年11月25日に公務執行妨害容疑で逮捕され、翌26日から同署で留置が始まった。死亡する12月4日朝まで計約144時間にわたり、服の上からもしくは裸の状態でベルト手錠と捕縄で手足を拘束されていた。
元警部は11月28日以降4回にわたり、男性を引き倒したり、足を蹴ったり、裸の男性の尻を靴底で踏みつけたりした。こうした暴行について元警部は「おとなしくしていなかったことに腹が立った」などと説明。部下らへの引き継ぎ時に「(身体拘束は)ストレス発散だと思ってやって」などとも伝えていた。
また、飲食を取らず、衰弱していく男性を心配した部下らが栄養剤の投与を提案したが、元警部は「値段が高い」と拒否。さらに「死ぬことがないようにしましょう」などと発言していたことも明らかとなった。
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男性は重度の脱水症などを起こし、急性腎不全で死亡。男性には糖尿病と統合失調症の持病があった。
原告側は、適切な医療措置などを取らなかったとして慰謝料など約8100万円を求め昨年10月に提訴したが、今回、請求額を1億100万円に増額した。小竹広子弁護士は「精神疾患に対する無知、無理解の結果だ。不必要な暴行を加え、虐待したことは人道に反し、決して許されない」と批判した。【道下寛子】
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