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レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)が、ヨーロッパリーグ(EL)ベスト16に駒を進めた。
2月20日、本拠地レアレ・アレーナ。ラ・レアルはノックアウトフェーズ(ベスト16入りをかけたプレーオフ)のセカンドレグでデンマーク王者ミッティランと戦い、5−2で勝利した。ファーストレグも1−2と勝利。2試合トータルで7−3の完勝だった。
「校庭サッカー」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そんな表現(「校庭で上級生が下級生をいたぶるようなサッカー」の意)で、実力差があった戦いを総括している。
ミッティランは激しい球際とロングスローなどに活路を見出そうとしていたが、高いレベルでは「悪あがき」にしか見えなかった。鋭く重い弾道のクロスに対応できなければピッチに立てないようなラ・レアルの選手にとって、生半可なロングスローなど通用しない。初見の変則性に虚を突かれたとしても、わかってしまえば下策にすぎないのだ。
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ミッティランは"多国籍軍"で、選手自体はデンマーク代表GKヨナス・レッスル、エクアドル代表MFデニル・カスティージョ、チリ代表FWダリオ・オソリオなど、人材が少なくない。しかし、チームとしての完成度は凡庸だった。ラ・リーガで日常的に接戦にもまれている選手たちから見えれば、アマチュア的だった。ダニエル・シウバは後半、ラ・レアルの選手の腹部を蹴って退場を命じられていた。
では、デンマーク王者を子ども扱いしたラ・レアルで中心になっている久保建英が、どれほどの高みに辿り着いているのか―――。
久保はミッティラン戦のファーストレグで目覚ましいシュートを決めていた。得意なカットインからの左足一閃。豪快でスペクタクルだった。
一方でセカンドレグは、チームのバランスを重んじていたように映る。守備ではプレスバックし、あるいはダブルチームを組む。ボールを受けに中盤に落ち、つなぎ役で展開。プレーメイカーであるマルティン・スビメンディが出場停止だったこともあり、頭を使ってカバーやフォローに身を粉にしていた。試合巧者として、実力差で押しきれるという算段も整えていたか。
【得点の予感が漂うCKを連発】
もっとも、要所では個の技量も際立っていた。
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開始早々、久保は下がってパスを受けると、間合いを測りながら左足で右サイドを走るアンデル・バレネチェアに長いパスを送っている。その角度、タイミング、高さは逸品だった。相手ディフェンダーが対応しにくいところにボールを落とし、バレネチェアがシュート。GKレッスルに阻まれたが、最初の決定機だった。
こうしたワンプレーが、試合の流れを決める。
5分、ミッティランはラ・レアルのプレスに慌て、バックパスのミス。これをブライス・メンデスが難なく押し込んだ。さらに18分、カウンターからルカ・スチッチが追加点。難なく2点をリードした。
ただ、これで"上級生"のラ・レアルは驕ったか。やや集中力が落ち、プレーがアバウトになり、軽率なPK献上と、パスミスからたて続けに失点。同点に追いつかれる。
そして、再び久保が輝く。
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44分、右サイドで相手ふたりを引きつけるドリブル。エリア内でフリーになったバレネチェアへパスをすると、シュートはGKレッスルに再び阻まれたが(この試合、レッスルがいなかったらさらなる大差がついていた)、その後の左コーナーキックだった。久保が左足で蹴ったボールをスチッチがペナルティアークで受け、左足で叩き込んだ。ハイレベルでは、CKでペナルティアークに守りの人間を置かないのは失点に直結する。その点でもミッティランは戦術的に幼かった。
久保はセットプレーのキッカーとしても、大いに脅威になっていた。この日はいつものキッカーであるセルヒオ・ゴメスが欠場。結果として、キッカーを任されていたわけだが、普段からなぜ久保が蹴らないのか。セルヒオ・ゴメスは優れたキックの持ち主だが、まったくハマっていない。久保は逆転弾だけでなく、アリツ・エルストンドの完璧なヘディングなども演出。際どいボールだからこそ、こぼれ球がシュートにつながるなど、得点の予感が漂っていた。
68分、久保はお役御免でベンチへ下がっている。今後は中2〜3日の過密日程が続く。ラ・リーガのレガネス戦、スペイン国王杯準決勝のレアル・マドリード戦、ラ・リーガのバルセロナ戦。さらに3月6日にはELラウンド・オブ16で、マンチェスター・ユナイテッドあるいはトッテナムとの対決が控えているのだ。
ラ・レアルがELで戴冠するためには、強大な敵を打ち破らないといけない。ミッティラン戦とは逆の構図になるだろう。そこで、どうやって波乱を起こすのか。バレネチェアが調子を上げているのは朗報で、アレックス・レミーロのファインセーブも欠かせない。
だが、やはり切り札は久保だ。