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ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――今年最初のGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月23日に行なわれます。
大西直宏(以下、大西)年明け最初のGIというのは、やはり特別なワクワク感がありますね。しかしながら、近年のフェブラリーSはかつてのような、国内ダートの"最強馬決定戦"といった様相とは異なってきています。
というのは、トップクラスの面々は同時期に開催されるGIサウジカップ(キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)を選択。おかげで、国内組による"暫定王者決定戦"といった位置づけになっているからです。
今年も、そうした状況に変わりはありません。この流れは今後も続いていくでしょう。
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あと、有力馬が海外GIに向かうということは、それに伴ってリーディング上位のトップ騎手も一緒に遠征するため、国内に残った騎手にとっては、大きなチャンスが巡ってきます。しかも、そのチャンスは多くの騎手にあります。
そんな背景もあって、最近は誰もが色気を持って乗ってくるため、波乱傾向が高まっています。現に、昨年は3連単で150万円超えの超高額配当が飛び出しました。馬券的な妙味が増している一戦ゆえ、じっくりと狙いどころを見極めていきたいですね。
――出走メンバーをご覧になって、注目されるのはどのあたりでしょうか。
大西 東京・ダート1600mは、スピードと持久力が問われるコース。その点から、まずは前哨戦となるGIII根岸S(東京・ダート1400m)や、GIII武蔵野S(東京・ダート1600m)の勝ち馬に目が行きます。そして今年は、コスタノヴァ(牡5歳)、エンペラーワケア(牡5歳)とそれぞれのレースを制した馬が駒を進めてきました。
根岸S(2月2日)を圧勝したコスタノヴァは、近走の安定感が際立っており、東京・ダートの適性も申し分ありません。堅実な走りを続けている馬で、大崩れの可能性も低いでしょう。
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一方、武蔵野S(11月9日)を快勝したエンペラーワケアも、ここまでダート戦では9戦9連対とまったく崩れていません。5歳以上の馬のなかでは、最も信頼できる1頭と言えます。
ただ、懸念されるのは、両馬ともに今回はテン乗りとなる点。どんなに能力が高くても、手綱を取るジョッキーとの相性は重要ですから、乗り替わりによってレースにどのような影響が出るのか、気になるところです。
――明け4歳馬については、いかがでしょうか。
大西 ダート界における今年の4歳世代は、(地方交流GI3勝の)フォーエバーヤングを筆頭に「最強世代」とも言われています。今回の出走馬のなかでも、ミッキーファイト(牡4歳)は注目に値する1頭でしょう。
4歳世代のなかでは「ナンバー2」の評価もあり、GI制覇の可能性も十分に秘めています。ダート適性は高く、東京・ダートのマイル戦も合いそう。GIではタフなスタミナも必要とされるだけに、長めの距離での実績が豊富なのも魅力です。
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フォーエバーヤングを物差しにすれば、サンライズジパング(牡4歳)も侮れません。管理するのは、3月2日の開催を最後に定年解散となる音無秀孝厩舎。フェブラリーSは最後のGIとなり、3頭出しの今回は本気度が伝わってきます。そんな勝負度合いも含めて、注意が必要だと思います。
――レース展開については、どう見ています。
大西 今年のメンバーを見ると、ミトノオー(牡5歳)、サンデーファンデー(牡5歳)、アンモシエラ(牝4歳)ら、逃げてこそ持ち味が生きる馬が複数いて、先行タイプの馬も多くそろっています。そうなると、前半から流れる展開になりそう。各騎手が積極的に仕掛けていくことも予想され、ペースが緩むことはないでしょう。
また、関東地方は今週も好天が続いています。冬場の乾燥したダートであることを踏まえても、かなりタフなスタミナ戦になることが想定されます。昨年と同様、最後は差し馬や追い込み馬が台頭するレースになるのではないかと考えています。
――差し・追い込みタイプで、気になる穴馬はいますか。
大西 昨年のレースでも見せ場を作った2頭の馬に注目しています。
1頭目は、ガイアフォース(牡6歳)。昨年は初ダートながら、GIで見せ場たっぷりの2着と好走しました。母系の血統からダート適性は秘めていたとはいえ、いきなり結果を出したことには驚かされました。
前走のGIチャンピオンズC(12月1日/中京・ダート1800m)は大外枠からの競馬で、終始外、外を回される厳しい展開。結果、15着と惨敗を喫しましたが、その敗戦だけでは見限れません。
もう1頭は、昨年4着のタガノビューティー(牡8歳)。同馬が東京・ダート1400m〜1600mの巧者であることは、よく知られていること。差し馬向きの展開になれば、怖い1頭です。
前走の根岸Sは叩き台としての出走でしたが、不運な落馬で競走中止。しかしその分、ダメージはなかったと思います。ずっと賞金面の壁に悩まされてタイトなスケジュールを強いられてきましたが、今年は余裕を持ったローテーションで出走できるのも好感が持てます。8歳のベテランではありますが、展開次第で昨年以上の走りを見せても不思議ではありません。
ガイアフォースとタガノビューティー。いずれも馬券圏内(3着以内)に絡んでくるチャンスがあると見ていますが、より好配当が見込めるタガノビューティーを今回の「ヒモ穴」に指名したいと思います。