“店舗激減”ミニストップ。安売り戦略で迷走、個性の「店内調理」も今や武器になりえず…大手3社との差は開くばかり

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2025年02月22日 09:10  日刊SPA!

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yu_photo - stock.adobe.com
 経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回はミニストップ株式会社の現在地を紹介したいと思います。
 ミニストップは旧ジャスコ(現イオン)の出資によって1980年に1号店をオープンしました。コンビニとファストフードを合体させた「コンボストア」として差別化を図り、ハロハロなどの名作を生み出しました。ピーク時には国内で2,000店舗、海外で3,000店舗以上を展開しましたが、国内トップ3との差は大きく、近年では業績を大幅に縮小しています。コンボストアは両者の良いとこ取りにはならず、中途半端になってしまいました。

◆「コンボストア」として差別化を図る

 ミニストップは1980年に横浜市で1号店を構えました。ジャスコのコンビニ事業参入で生まれた業態ですが、ファミマ・セブン・ローソンに次ぐ後発であり、セブン-イレブンは当時既に1,000店舗を達成していました。ミニストップは差別化を狙い、従来のようなコンビニ単体ではなく、コンビニとファストフードを融合させた「コンボストア」として出店を進めます。

 当初から基本的に全店でイートイン席を設置し、店内調理のファストフードを強化しました。創業当初から販売しているソフトクリームのほか、1995年に発売した「ハロハロ」はミニストップの人気商品となっています。ちなみに、ハロハロはかき氷にミルクや果物、アイスクリームなどを混ぜたフィリピンのデザート。ミニストップでは日本風にアレンジして提供しています。デザートのほか、フライドポテトなどのホットスナックにも強みがあります。

◆順調に店舗数を拡大。2004年に国内1,500店舗を達成

 初出店から5年後には100店舗を達成し、93年には東証二部に株式を上場、94年には500店舗を達成しました。その後96年には東証1部に鞍替えし、98年に1,000店舗を達成しました。2000年の時点で約8,600店舗を運営するセブン-イレブンと比較すると差は歴然ですが、店内調理品で差別化しながら、全国展開を進めたのです。2004年には国内1,500店舗を達成しました。

 また、同社は海外展開も進めました。1990年に韓国で海外1号店を構えると、2000年には現地企業とエリアフランチャイズを結びフィリピンへ進出、その後も中国やベトナムなどアジア各国に出店しました。海外でも国内と同様、店内調理を強化したコンボストアで展開しています。

◆国内は不採算店を閉鎖、海外事業は大幅縮小

 コンボストアモデルで差別化してきたミニストップですが、2010年代後半から国内のコンビニ市場の拡大が鈍化すると、市場拡大の波に乗れず国内事業が悪化し始めます。2017年2月期末時点で2,263店舗だった国内店舗数は、不採算店の閉鎖、そしてコロナ禍の影響により、25年2月期第3四半期時点で1,848店舗にまで減少しました。

 国内ミニストップの日販は約43万円ですが、これは69万円のセブン-イレブン、55万円前後のファミマ、ローソンに大きく差を付けられています。セブン-イレブンの客数・客単価はそれぞれ約900人・750円であるのに対し、ミニストップのそれは約670人・650円しかありません。駅前店舗が少なく、住宅街にあるなど立地の悪さが指摘されますが、低い客単価は商品力の低さを現しています。ミニストップは「良い商品を提供できず、収入減→好立地に店を構えられない→収入減」のループに陥っているといえます。

 海外事業についても、国内同様に成績は芳しくありませんでした。年間数億円の赤字を垂れ流していた海外事業は同社にとって重石となりました。約2,600店舗の韓国を中心に、21年2月期末段階で海外には3,315店舗ありましたが、韓国事業はロッテグループに売却。フィリピン事業も現地の合弁企業に売却し、現在ではベトナムの約180店舗を残すのみとなっています。ミニストップは、セブンが韓国初のコンビニを構えた翌年の1990年に韓国に出店しましたが、現在では現地勢2社とセブン-イレブンで構成されるトップ3に大きく差を付けられ、競争激化で苦戦していました。

◆利益は改善傾向も、人件費や売上原価の増加で…

 なお、近年の業績は次の通りです。

【ミニストップ株式会社(21年2月期〜24年2月期)】
営業総収入:1,802億円→1,837億円→813億円→791億円
営業利益:▲55.3億円→31.4億円→▲10.4億円→▲6.1億円

 23年2月期は売上1,000億円以上あった海外事業のほとんどを売却したため、全社の収入が大幅に縮小しました。また、近年では国内も不採算店の閉鎖を進めました。一方で不採算店の閉鎖、そして赤字の海外事業売却により、利益は改善しています。しかし今期25年3月期は人件費や売上原価の増加に見舞われ、通期では営業総収入900億円と増加を見込むものの、営業利益は23億円の赤字と同社は予想しています。

◆当初は“新しかった”ものの、今では中途半端な存在に…

 ミニストップが国内外で苦戦したのは、「コンボストア」という業態が中途半端な存在となったためです。消費者がしっかり食事を取りたければファストフード店に向かい、手軽に済ます場合はコンビニを選びます。端的に言えば、コンビニは男性客がタバコやお酒のついでに商品を買うような業態であり、こうした商品とミニストップが得意とする店内調理品は相性が良くありません。“コンビニ商品”に関しても、各社がPB商品で独自性を打ち出す一方、近年、ミニストップは安売り戦略で迷走しており、むしろ収益性の悪化をもたらしていました。

 24年5月に同社は「ニューコンボストア」を神田に出店しました。ニューコンボストアは株の約半数を握るイオンの支援を受けた新業態店で、トップバリュ商品や生鮮食品を拡充しています。これまでのコンボストアに食品スーパー機能を付与したような店舗です。現在ではニューコンボストアで得られたノウハウを既存店に横展開し、収益改善を進めています。コンボストアで失敗した以上、黒字化がミニストップの急務となっています。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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  • どこよりもお惣菜やホットスナック、パフェみんな美味しいのに。
    • イイネ!9
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