「できなかったことができるようになった」そこに野球の楽しさがあるはず|河原哲大監督(レッドスネークコルツ)

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2025年02月22日 12:36  ベースボールキング

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ベストコーチングアワード殿堂入りを果たすなど、コーチングと子どもの怪我・故障防止に積極的に取り組んでいる横浜市旭区で活動する軟式少年野球チーム「レッドスネークコルツ」。チームを率いる監督の河原哲大さんにお話を伺いました。



【技術がついて上手くなれば楽しくなる】
——このチームの指導方針を教えてください。

「エンジョイベースボール」ですね。監督になって6年になりますが、就任当初は自分が子どもの時にやらされていた野球を完全に否定したかったというのがありました。怒声、罵声という追い詰められた環境の中でやっても自分は上手くならなかったですしね。やっぱり子どもながらにそういうのは理不尽だと思っていましたし、もっと楽しくやったほうが絶対に上手くなるって思っていましたから。

——練習では捕る、投げる、打つ、色んなドリルがありましたね。

「野球の楽しさって何?」というところにも繋がってくると思うんですけど、ありがたいことに色んな素晴らしい指導者の方に巡り会えて、そのなかでも三好貴士さん(前ミネソタ・ツインズ傘下ウィチタ・ウィンドサージ /現シンシナティ・レッズ ルーキーリーグコーチ)にいろんなことを教えてもらいました。「楽しさの定義、楽しさを間違えるな」という言葉が心に残っていて「楽しくやるっていうのは緩くやるとか、何やっても笑ってやるとかそういうことではなくて、できなかったことができるようになった、というところに楽しさって絶対にあるはずだから、そこを上手く教えられるようになったらいいんじゃないの?」 って言われて。

——良い言葉ですね。

それまでの自分は、自分がやらされてきたことを否定したくて「楽しくやれば子どもは絶対に上手くなる!」と思ってやっていたのですが、実際はあんまり上手くさせてあげることができなかったんです。でも三好さんにその言葉をもらってから、できなかったことができるようになるように、ティーチングなりコーチングをしてあげれば、子どもってもっと楽しくなるんだな。技術がついて上手くなれば楽しくなる。できることが増えれば楽しくなる。そういうところからドリル練習にいきついています。

——ドリルは監督が考えた自己流が多いのでしょうか?

さきほどの三好さんや「根鈴道場」の根鈴雄次さんであったりとか、アメリカでもやっていて日本の独立リーグでやっていた後輩などに、色んなドリルや練習方法を教えてもらって、それをチームに落とし込んでやっています。

——いわゆる日本式の「野球」というよりは「ベースボール」のエッセンスを意識して取り入れている?

そうですね。ただ、最初は日本の昔のやり方は完全に否定したいと思っていたんですけど、でも理不尽な指導の中で出来るようになったこともあったんだなと、あの指導の中にはこういう要素があったんだと、子ども達に教えていて気づいたこともありました。ですから単純に日本式のやり方がダメで、アメリカ式のやり方が正しいというふうには思っていません。

———昔の指導にも良い部分もあった?

そうですね。言い方をよくすれば日本式とアメリカ式の「ハイブリッド型」ということですね。先ほどの三好さんはアメリカでやられている方ですけども、そんな三好さんには「勝つことは大切なこと」「皆で協力してやることで成長する素地ができる」など、「野球」をする上でスキルだけではない大切なことも学ばせてもらいました。




【チームに入る敷居をいかに低くできるかが大事】


———グラウンドにお母さんの姿が0ですね。

当番は以前からありません。練習も試合もそうですけど、自分のお子さんがやっていることですから「見に来てもらったら喜ぶと思います。ただ皆さんお忙しいと思いますので送り迎えだけしていただければ、無理にグラウンドに顔を出していただく必要はありません」とアナウンスはしています。練習には来ないですけど試合には顔を出してくれる保護者の方は多いです。それも数年前の勝てなかった時は応援も少なくてちょっと寂しかったんですけど、最近は結果もついてくるようになって応援も多くなっていますね。

———お母さんの姿がない代わりにお父さんコーチはたくさんいますね。

野球経験のあるお父さんにはお声がけしてお願いする場合もありますが、基本的には自発的に協力いただいています。

———怒声、罵声とか大声、きつい言葉遣いとか一切ないですね。これはチームの指導者の中で決まり事として意識されているのでしょうか?

基本的にお父さんコーチ達にも「理不尽に怒鳴ったりはしないでください」というは話しています。でもそう言っている僕がたまに怒鳴ってしまうこともあるのですが(笑)。

———監督が怒るのはどういうときですか?

楽しくやるということと、手を抜いたりふざけたりするというのは違うと思うので、そういうときですね。エラーしたとか、ミスしたとかではないですが、そういうときは結構いいますね。

———監督をされていて少年野球人口が減っていると感じる部分はりますか?

ありますね。仲良くさせてもらっているチームが「今年は人数揃わないから合同チームだ」とか「今年は大会に出られないんだ」とか聞きますから、感じますね。

———このチームではどうですか?

息子が入って2年目、小学2年の頃は全学年合わせて部員が11、12人だった時もありましがが、チラシを学校前で配ったりとか、体験会をやったり、SNS投稿とか地道なことを頑張ってそこからは常にずっと20人以上は維持できています。

———今の時代に子どもや保護者に選ばれるチームになるために大切なことは?

一番はご家庭の負担を減らすこと。いかに親御さんが子どもにやらせやすいか。チームに入る敷居を低くできるか。当番なしはもちろんですけど時間的拘束を短くするとか。午前中は練習参加するけど午後から塾なので帰りますとかも全然ありですしね。

———令和の時代の子どもを指導する難しさは?

色んな情報が溢れているので、子供もYouTubeとかを見て結構知識を持っていますから「あれやれ」「これやれ」ではなくて説得力、根拠を示してあげないと聞いてくれない子が多いと感じています。

———これからの目標を教えてください。

こらからもチームが続いていけるように地道にやっていきたいというところと、楽しさの定義でも話しましたけど、できることが増えてくると上手くなって自ずと勝てる試合が増えてくると思うので、楽しいと強いを両立できるチームにしていきたいですね。
順番的には、勝てるチームを作るために技術を教えるのではなくて、楽しくやるために上手くなる方法を教えていったら技術がついて勝てるようになった、というのが理想ですよね。(取材・写真:永松欣也)

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