毒親に育てられた31歳女性が、恋愛で“どうしてもできなかったこと”。母親の呪縛は恐ろしい

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2025年02月22日 16:20  女子SPA!

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新しい職場の同僚と食事をする茜さん(写真は本人提供)
 こんにちは。これまで3000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。近年、婚活に踏み出すこと自体が当たり前の選択肢ではなく、“ぜいたく品”になりつつあると感じることがあります。

「結婚したくないわけではないけれど、絶対に子どもは産みたくない」と語る女性・茜さん(仮名・31歳/関東在住)は毒親育ちで、教師になることを強制され教育虐待を受けてきました。彼女は成人してからADHD(注意欠如・多動性障害)と診断され、29歳から障害者雇用で働き始めますが、母親は「障がい者のふりなんてやめたら?」「低所得の仕事」と娘を罵倒します。

 少し前のデータですが、障がい者に焦点を当てた内閣府の調査「障害者白書 平成25年度版」によると、身体障がい者で配偶者がいる人は60.2%と健常者の57.4%(統計局「平成27年 国勢調査」による)に比べても若干多かったものの、精神障がい者では34.6%、知的障がい者ではわずか2.3%でした。

 障がい者向けマッチングアプリIRODORI(いろどり/@irodori_info)の開発者・結城伊澄さんは、障がい者にとっては「障がいを打ち明ける不安」が、新しい出会いの最大のハードルになると話していました。

 障がいをあらかじめ開示して出会えるマッチングアプリは、救世主になるのでしょうか。

◆発達障害の彼との交際で「意思の疎通が難しい」

 IRODORIでは恋人だけでなく、友達や仲間探しをすることもできます。はじめは障がいがあることを話せる仲間が欲しくて、IRODORIに登録した茜さん。やがて「子どもはいらない」「カフェ巡りが好き」という共通点がある相手とマッチングします。大輔さん(仮名)という男性で、彼はASD(自閉スペクトラム症)でした。

 3回目のデートで告白され、交際することになりました。大輔さんはそれまで一度も女性と付き合ったことがなく、茜さんが初めての恋人でした。

 一緒にカフェに行ったり食事をしたりして、楽しい時間を過ごしていたふたり。しかし、ASDの方に多い特性の一つであるこだわりの強さから、徐々に意思疎通が難しいと思う場面も増えてきます。

「次はこのカフェに行こう」と約束していたのに、大輔さんは会ったら約束とは違う行動を取ろうとします。彼は一度何かやりたいと思い始めると、茜さんが「はじめの予定と違うよ」と伝えてもそれを受け入れることが難しいのです。

◆母親の影響で、言いたいことが言えなくなっていた

「親から『なんでこういうことをするの』『これはやめなさい』とずっと怒鳴られて育った私は、彼に対して『なぜ?』と思うことがあっても、言い出しにくかったです。

 彼を責めているわけじゃなく、話し合いたくて単純な疑問で『どうして○○なの?』と言いたいだけなのに、それも言えませんでした」(茜さん、以下「」内同)

 大輔さんは当時、就労移行支援(障がいのある人を対象とした職業訓練のサービス)を受けて自分の適職を探しているタイミングでした。大輔さんはそこでパソコン操作を習った際、茜さんへ「清掃とかやっているんでしょ。パソコンも使えるようになった方がいいんじゃないの」と、「上からアドバイスをしてきた」そうです。

 茜さんは大学でもパソコンを使っており、パソコンを使う仕事をしていたこともあります。それを伝えると大輔さんは「芸術大学を出てるならスキルを活かしなよ」とまた別のアドバイスをしてきます。

◆別れのきっかけになった「まさかのひと言」

 芸術大学出身の茜さんは、職場内に貼るチラシ作成など、簡単なデザインはおこなっていました。それを見せたところ予想より出来が良かったのか、彼は勝手に対抗心を燃やし「別の就労移行(支援)でデザインを学ぶ」と言い出します。

「私はデザイナーとして仕事ができる人のレベル感は分かります。子どもの時から絵が得意でなおかつ好きな人たちがゴロゴロいる業界です。30代になってから1〜2年学んだ程度の人が乗り込んでも、仕事にならないのではと伝えたんですけどね」

 ある日の会話の中で、2人が出会ったマッチングアプリのIRODORIについて、大輔さんが「有料になるらしいね」と言いました。IRODORIは2024年6月から有料になっていますが、茜さんと大輔さんが付き合いだしたのはそれより前です。

 なぜ知っているのかと思って再度アプリをダウンロードしたところ、大輔さんが登録しているのを見つけてしまいました。そこで別れることにしたのです。

◆伯母に助けられ、毒母から逃げることに成功

 茜さんは以前から、母親のもとを離れて一人暮らしをしたいと思っていました。思いきって職場に相談したところ、隣の県の事業所に欠員が出そうだから異動しないかと提案されました。そこの事業所では仕事内容が変わり、昇給もあります。

 一人暮らしをしたい。けれど、母親が許すとは思えません。

 そこで相談したのが、茜さんの伯母(おば)でした。彼女は、母親のせいで茜さんのお姉さんが自殺未遂をしたことも知っていました。伯母に自分の妹である母親を諫(いさ)めてもらうことにします。

 母親は予想通り「一人暮らしなんて無理」と反対してきますが、伯母が「家探しは私が同行して見てくるし、あなたは口出ししないで」と言ってくれました。

 茜さんは念願叶って、新しい物件を契約します。母親に茜さんの新居を特定されないように、「DV等支援措置」の手続きをして、一人暮らしの準備は整いました。支援措置とはDVや虐待等の被害者を保護するための制度です。

 母親は最後まで気に入らないようで、ずっと文句を言ってきました。理解しあえないまま、茜さんは31歳で家を出ました。そこからずっと、実家には帰っていないそうです。

◆「今が一番人間らしい暮らしをしている」

 家族から離れ、彼氏とも別れましたが「今が一番人間らしい暮らしをしている」と茜さんは言います。

 新しい職場での収入は、交通費込みで手取り18万円ほどだそうです。アットホームな職場で、職場では従業員の誕生日会があります。「うちにご飯食べに来ない?」と自宅に誘ってくれる同僚にも出会えました。

 茜さんは母親が厳しかったせいで、友人の家で食事したり、自宅に友人を招いて食事会をしたりした経験がありません。それもあって、同僚との行き来がある今が、一番楽しく幸せなのだそうです。

◆自分のことを自分で決められる幸せ

「発達障害の人が集うカフェやイベントがあれば、そういうところで交流を深めたいです。今は彼氏が欲しいと思っていませんが、もし今後欲しいと思った場合も、自分の症状をあらかじめ伝えやすいのでまたIRODORIを使うと思います」

 母親の呪縛から逃れるために家を出ることを望んでも、ずっとそれが叶わなかった茜さん。今は一人を満喫しています。望めば異性との出会いの場もあるけれど、今は色々な選択肢があり、誰にも縛られずに自分で選べる。その自由を謳歌してほしいと思います。

【IRODORI】
障がい者の出会いを応援するマッチングアプリ。障がいを持つ人、障がいに理解のある人のみが在籍している。恋愛はだけでなく仲間や友人探しでも利用可能。累計ダウンロード数6万以上、報告されたカップル成立数300組以上。

<取材・文/菊乃>

【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt

このニュースに関するつぶやき

  • 恋に落ちた描写がありませんが…。恋なんてものはどれほど強く真実(笑)に満ちていても意思疎通とは関係のない性欲の発露に過ぎないことがよくわかるお話です。
    • イイネ!1
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