セブン-イレブンとファミマの経営統合はあるのか…伊藤忠の「利益」がカギ

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2025年02月24日 06:10  Business Journal

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セブン-イレブンの店舗(記事内容とは無関係です)

 カナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、事実上の対抗策として経営陣による自社株買収(MBO)を目指しているが、今月には伊藤忠商事がMBOへの出資を検討していることを表明。伊藤忠は完全子会社としてコンビニエンスストア業界2位のファミリーマートを持っていることから、同1位のセブン-イレブンを保有するセブン&アイHDへの出資でどのような影響が出るのかに注目が集まっている。過去に伊藤忠はファミリーマートとセブン-イレブンの提携に向けて動いていたこともあり、ファミマとセブンの経営統合や提携によって巨大コンビニ連合が誕生する可能性も一部で取り沙汰されているが、その実現はどう考えるべきか。専門家の見解も交えて追ってみたい。


 北米をはじめ世界約30カ国に約1万7000店舗を展開するカナダの大手コンビニエンスストア運営会社、ACTによるセブン&アイHDへの買収提案が明らかになったのは昨年8月。1株あたり14.86ドル(買収総額は約5.5〜6兆円)で買収を提案し、これを受けセブン&アイHDは社外取締役で構成する独立委員会を設置して検討し、「潜在的な株主価値の短中期的な実現について著しく過小評価している」との理由で拒否。ACTは9月、1株あたり18.19ドル(買収総額は約7兆円)に引き上げて再提案を行ったが、米国の独占禁止法(反トラスト法)や、外資による日本企業への出資を規制する外為法に抵触する可能性もあり、先行きは不透明だ。


 セブン&アイHDはACTによる提案に賛同の姿勢を示さない一方、対抗策を重ねてきた。昨年10月、事実上の買収防衛策として、GMS(総合スーパー)・イトーヨーカ堂や食品スーパー・ヨークベニマルをはじめとする非中核事業を連結子会社から外す方針を固め、ヨーカ堂のネットスーパー事業からの撤退も決定。さらにMBOによる非上場化を目指しているが、必要な資金は8〜9兆円にも上るともみられ、ハードルは高い。


 そうしたなかで伊藤忠は1兆円程度の出資を検討していると伝えられているが、そこで焦点の一つとなるのが完全子会社のファミリーマートとセブン-イレブンの関係だ。ファミマの国内の店舗数は1万6215(1月31日現在)でコンビニ業界2位、セブンは2万1668で同1位。実は両チェーンは過去に提携が模索されたことがある。1月28日付「日本経済新聞」記事で伊藤忠会長CEOの岡藤正広氏は、2015年に当時セブン&アイHD会長だった鈴木敏文氏にファミリーマートとの提携を持ち掛けたと明かしている。


事業提携が現実的なあり方

 そうしたことから、もし仮に伊藤忠がセブン&アイHDに出資することになれば、ファミマとセブン-イレブンが経営統合や提携に動くのではないかという見方も出ている。経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。


「伊藤忠がセブン&アイHDの大株主になったと仮定した場合、ファミマとセブン-イレブンについては、経済合理的にはブランド統合は絶対にしないほうがいい。同じロゴで『ファミリーセブン』のような新しい統一ブランドのお店が日本中に広がるのは、結論としては店舗同士の競合で利益が減少してしまい、経済的にはいい結果にはなりません。やる意味がないと思います。ブランドも含めてひとつの企業に統合してしまうと独占禁止法に触れる可能性があるという、もうひとつ別の問題も抱えてしまいます。ひとつの企業になるメリットはないと考えるべきでしょう。


 一方で、物流やバックエンド、システム開発など、統合できることについては統合したほうが良い結果が生まれます。そのような形でお互いにメリットがある部分について、大株主である伊藤忠主導で事業提携を進めていくというのが現実的なあり方だと考えます」


ブランド統一をしないほうがいい理由

 仮にファミマとセブン-イレブンが経営統合もしくは事業提携などをした場合、両社および伊藤忠にとって、メリットとデメリットのどちらのほうが大きいと考えられるのか。


「ファミマとセブン-イレブンがブランド統一をしないほうがいい理由は、コンビニが日本全国でほぼ飽和状態にあるからです。3大コンビニが競い合いながら全国展開をしている状況で、仮にファミマとセブンが同じ店になってしまうと、同じ地域で顧客を取り合う同一ブランド内競争が起きます。ファミマとセブンが近くにあっても、消費者はセブンに行ったりファミマに行ったり、気分次第でそれぞれのお店を使います。ブランドと商品が異なれば『今日はこちら』みたいな購買行動が生まれます。ところが、どちらも同じブランドで同じ商品となれば、どちらか近いほうのお店以外は使う機会がなくなります。そうなると漁夫の利を得るのはローソンです。『ファミリーセブン』に飽きたら、消費者が他に行く場所はローソンしかなくなるからです。


 一方で協業のかたちで投資を共有したほうがいいこともあります。たとえば物流は2025年問題でそもそも人手が不足していますから、両社の配送を一元化するメリットは十分にあります。システム開発も同じです。ですから競争するところは競争しつつ、コストや投資を共通化したほうがいいところだけ事業提携で共通化するというやり方が、経済合理的には一番いいと考えられるのです」


伊藤忠にとっては投資のメリットはとても大きい

 ファミマとセブン-イレブンが経営統合などに至らない場合、伊藤忠としてはセブン&アイHDに出資することによるメリットというのは何なのか。


「ファミマとセブン-イレブンがお互い競争しながら、コンビニ業界が大きくなっていくなかで両社ともに成長し、ローソンとの相対的な競争力が拡大していく展開を目指すのが、伊藤忠にとってはもっとも良いシナリオです。ですから商品や営業展開では競争しつつ、バックエンド関連の投資やコストでは事業提携をして、ローソンに対するコスト優位を拡げていくというのは競争戦略上有利な戦い方です。


 そもそも両社のシナジーを一切目指さない場合でも、伊藤忠は両社の商流の部分を握ることができるので、2つのコンビニで販売される食品全般の川上のビジネスを全部掌握することで投資に対するリターンを得ることができます。今、セブンは経営判断の誤りから国内でのシェアを落とし始めています。そういった場合でも、大株主ですから商社から新たな経営者を送り込むことで経営方針を変える力も持つことができます。2つの大手コンビニを持っていることで、コンビニ業界の覇者になれる確率がこれまでの3分の1から3分の2に増えたのと同じ状態ですから、伊藤忠にとっては投資のメリットはとても大きいのです」


(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)



このニュースに関するつぶやき

  • 最近ローソンとAuのキャンペーンすごいなぁ。って思ってたけど、これも影響与えてるのかな。三菱商事とKDDIが折半出資やもんなぁ。
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