森保一監督、新戦力のテストはいつやるの? 最終予選を突破したあとの強化ビジョンを尋ねたところ...

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2025年02月24日 07:30  webスポルティーバ

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森保一監督インタビュー(中編)

◆森保一・前編>>「ワールドカップで優勝するためには?」

 日本代表の試合後は、必ず「波」が立つ。

 負けたら議論の波が大きくなり、勝った試合後も波は起こる。

 突き詰めればどんな結果でも、チームを率いる森保一監督は厳しい声にさらされる──と言って差し支えない。

   ※   ※   ※   ※   ※

── 2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選は、ここまで6試合を終えて5勝1分の勝ち点16でグループ首位を走っています。そのなかでも、森保監督の選手選考や選手起用、結果についてさまざまな意見が沸き上がります。

「僕自身は、結果について達観視しているところがあります。勝利を目指して今やらなければいけないことに、日々最善を尽くす。プロセスにフォーカスを当てていて、試合が始まった時にはどんな結果でも受け入れられる自分にしておく、という。

 もちろん、試合中も努力します。最大かつ最善を尽くしますし、我々を応援してくれている日本全国の方々に勝って喜んでいただきたいですが、どんなふうに評価してもらっても構いませんよ、という感じです」

── FIFAランキングを見れば、アジアでは勝って当然と見なされる相手が多い。けれど、アジアならではの難しさはあります。

「おっしゃるとおり、決して簡単ではありません。試合の結果だけをテレビの画面越しに見たら、アウェーの戦いでもそこまで難しくないように映るかもしれないですが。

 ヨーロッパでプレーしている選手は、季節によって気温ひとケタの都市から移動してきて、気温差30度もあるなかで到着後2、3日で試合をしています。時差とか長距離移動はなかなか伝わりにくいと思いますが、ホントに過酷な環境で走って、戦ってくれている。国内でプレーする選手も、大変な環境を乗り越えている。彼らはスーパーマンのようなヒーローだと思いますよ」

── 選手はホントにタフになりましたね。

「アジア全体が力をつけてきて、日本対策をしてくるなかで、ホントにがんばってくれています。そのうえで我々が考えているのは、レアル・マドリードやバルサ、バイエルン、マンチェスター・シティは今シーズン苦しんでいますが、世界の強豪と言われるリーグでトップを走るチームは当たり前に勝っていく力を持っている。クラブと代表では、ちょっと違うかもしれないですが」

── アジアの環境は過酷だけれど、そういう力を身につけたい、ということですね。

「上から目線とか脇が甘くなってはいけないですが、我々も力の差を示しながら勝っていかないといけない。本気でワールドカップ優勝を目指す我々の目標からすれば、アジアで当たり前に勝つのは大事です。そういうメンタリティを持って、戦わなければいけないと思います」

【目指すのはトリプルチーム】

 アジアにおける日本代表は、紛れもない強者だ。守りを固めてくる相手と戦う試合が多い。

 それに対して世界では、攻められながら(あるいは意図的に攻めさせながら)相手を崩していく戦いが、アジアよりも増える。

 日本代表が長く直面してきた「ダブルスタンダード」である。

   ※   ※   ※   ※   ※

── 対アジアと対世界で戦い方が変わることは、チームの強化にどのような影響を及ぼしていますか?

「とにかく世界で勝つことを身につけていくのなら、対世界も対アジアも関係ないのでは。たとえば、ブラジルやアルゼンチンがアジアの国と対戦する。彼らはいつもどおりの戦い方で挑み、勝っていくでしょう」

── たしかに南米予選を戦うブラジルやアルゼンチンは、ワールドカップ本大会と戦い方を変えたりはしません。ただ、アジアと南米では大陸全体のレベルが違います。

「もちろんそうです。日本代表の選手たちとは、さまざまな環境のなかで、さまざまな相手と戦いながら、世界のトップ・オブ・トップとの戦いへつなげていくとの認識を共有しています。引いた相手を崩す。相手の攻撃をしのぎながら取りきる。どちらもできる準備をしていく、ということに尽きると思います」

── ワールドカップでベスト16の壁を越えてベスト8、ベスト4、そして優勝を目指すには、ダブルチームでどのポジションもクオリティが落ちないチームにしていきたいのでは。

「おっしゃるとおりです。カタールワールドカップ当時よりもチーム全体のクオリティが上がってきていますし、目指すのはダブルチームではなくトリプルチームくらい。それぐらいの戦力を持ったなかで、最終的に個々の調子やケガの有無などを考慮して選手を起用していきたいです」

── 候補者が3人いるポジションもありますね。

「ケガ人が全員復帰すれば、それぐらいの競争は現時点でもあると思います。日本代表の活動は(日程的に)2試合が基本ですので、試合の位置づけによって1試合目と2試合目でメンバーを入れ替えることも常に意識してきました」

【もう少し親善試合がほしい】

── カタールワールドカップのラウンド16で対戦したクロアチアが、延長戦突入後にルカ・モドリッチらの主力を交代させました。あれはもう、勝ち上がっていくことを見越したものだったのでしょうね。

「ワールドカップ本大会では、プレー強度がふだんより1.5倍や2倍ぐらい上がり、プレッシャーも大きくなります。勝ち上がると疲労が蓄積し、疲弊もしていく。2チーム分ぐらいの戦力でフレッシュにチームを回していくことは、常にイメージのなかにあります」

── 主力選手も休ませながら、が理想的です。

「実際に代えるか、代えないかは別として、その構想はありながらも、ヨーロッパの5大リーグに所属する選手たちは毎週のリーグ戦をタフに戦い、なおかつチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出て、またさらにタフな試合を消化している。結果的に8連戦くらいは当たり前になっているので、連戦でもできるならやってもらおう、という考えもあります。

 選手を入れ替えながらできるし、ある程度固めてもできるという、両方とも選択できるような力を個々がつけていると実感しています」

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 ヨーロッパの移籍マーケットが開くたびに、日本人選手が海を渡っている。

 今冬もパリ五輪代表で昨年11月の北中米ワールドカップ・アジア最終予選に招集されたDF関根大輝が、伊東純也と中村敬斗が所属するスタッド・ランスの一員となった。昨シーズンJ2得点王のFW小森飛絢は、ベルギー1部のシント・トロイデンで飛躍を誓っている。

   ※   ※   ※   ※   ※

── 日本代表に呼びたい選手、手もとで見てみたい選手は増える一方と言ってもいいのでは?

「めちゃくちゃ、います(笑)」

── けれど、呼べる人数に限りがあります。

「もう少し、親善試合がほしいです(笑)。それはもう、どうにもならないことですけれど。まずは今のベストという選考基準を持ちながらも、力をつけてきている選手にチャンスを与える機会は作っていきたい。そのバランスが難しいのですが」

【日本代表は自分でつかみ取るもの】

── 油断を誘うつもりはありませんが、北中米ワールドカップ・アジア最終予選の突破が早い段階で決まれば、新戦力のテストに踏み出せますね。

「そうですね。ただ、そうなった時に何を選択するかというのはあって。新しい選手、出場機会の少ない選手を試すことができるし、コアメンバーをより強化することもできます。コアメンバーでこれまでやっていない戦術や戦い方にトライすることもできます」

── たしかにそうですね。コアメンバーで戦い方の幅を拡げる必要性もあるでしょうから、必ずしも新しい選手を試せばいいというわけではないですね。

「あとは、競争があります。日本代表は与えられて入るのではなく、自分でつかみ取るものです。そこはホントに力を見せてくれた選手たちが......僕自身がいつも思っているのは、日本代表の選手は僕が選んだのではなく、彼らが日頃のパフォーマンスによって僕に選ばせたのだ、と。

 もちろん今だけではなく、過去を評価して現在がある。未来へ向けて、さらに強化していかなければいけない、成長していかなければいけないということで、今のチームに『未来枠』も入れていかないといけない。そこはすごくバランス的に難しいところですけれど......。

 過去と今と未来があって、今を戦っている、活動しているというのは、いつもスタッフと共有しながら議論しています」

── 最終予選では27人を招集しています。呼ばれる選手も、選手を送り出すクラブも大変かもしれないですが、まさに「未来枠」での選考も可能になっています。

「(ワールドカップ本番で)メンバー外になる選手は精神的に大変でしょうし、我々スタッフとしてもつらいです。けれど、 ケガやアクシデントがあった時に選択肢が足りなくなるよりも、力のある選手がバックアップとして備えてくれているからこそ、対応力が出せると思いますし、チームとしての力を発揮できると思います。

 選手には負担をかけていますけれど、その時の戦いと未来に向けてということで、27人の招集はすごくメリットがあると思います」

【作業を同時進行でやる代表の難しさ】

── 5大会連続出場を目指している長友佑都のような選手と、パリ五輪に出た選手が同じ時間を過ごすのは、どちらにとっても刺激になると思うのです。

「そこはもう競争相手、ライバルでしょうが、お互いに刺激を与えられる関係で、いろいろな相乗効果が生まれてくると思っています」

── チーム全体が底上げされていきますね。

「代表の活動は親善試合であれ、すべて公式戦と捉えています。クラブチームならプレシーズンがあり、選手を試し、戦術を試し、それからシーズンへ入っていく流れになりますが、代表では試合をしながらそういった作業を同時進行でやらないといけません」

── 次の活動は3月になりますが、昨年11月から4カ月ぶりとなります。しかし、いつもどおり数日の準備で1試合目に臨みます。

「そこは難しいところがありますけれど、選手を多く招集させてもらうことで、いろんなことが可能になっているところはあります。今現在の戦いもそうですけれど、チームの土台がより強固になる、厚みを増すことをやっていきながら、勝つ可能性を上げていきたいと思うのです」

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 森保一は日本代表監督だが、元Jリーガーにして元日本代表であり、若くして海外サッカーに親しんできたサッカー通でもある。

 日本代表について聞かれることの多い彼だが、いつもとは違う種類の質問をされたら、どんな反応を見せるのか。

 インタビュー後編では、森保監督のサッカー観についても語ってもらう。

(つづく)

◆森保一・後編>>「僕は性格が、かなり悪いのです」


【profile】
森保一(もりやす・はじめ)
1968年8月23日生まれ、長崎県長崎市出身。1987年に長崎日大高からマツダに入団。1992年にハンス・オフト率いる日本代表に初招集され、翌年「ドーハの悲劇」を経験。サンフレッチェ広島→京都パープルサンガ→広島→ベガルタ仙台を経て2004年1月に現役引退。引退後はコーチとして広島とアルビレックス新潟で経験を積み、2012年に広島の監督に就任。3度のJ1制覇を成し遂げる。2017年から東京五輪を目指すU-23代表監督となり、2018年からA代表監督にも就任。2022年カタールW杯の成績を評価されて続投が決定し、現在2期目。日本代表・通算35試合1得点。ポジション=MF。身長174cm。

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