移籍後初得点を決め、サポーターの前で喜ぶジャーメイン良 [写真]=J.LEAGUE PKを蹴る新ストライカーの目の前には紫に染まったスタンド。「すごく反り上がっている紫の壁があったので圧巻の光景だった。それが味方だったので心強かったです」
サンフレッチェ広島に新加入したFWジャーメイン良が、23日に行われた明治安田J1リーグ第2節の横浜F・マリノス戦でホームの大観衆を前に移籍後初ゴールを決めた。
29歳のジャーメインは今季開幕から連戦が続く中、横浜FM戦を含めて公式戦全5試合に出場。19日に行われたAFCチャンピオンズリーグ2ラウンド16第2戦のナムディン戦では新天地でホームデビューを飾った。ジュビロ磐田にいた昨季は広島での試合を負傷欠場したため、エディオンピースウイング広島でのプレーも初めてだった。
「本当にいいスタジアムだし、疲労よりもここでサッカーができるモチベーションの方が勝るぐらいで、本当にいい雰囲気だった。サッカー専用で規模もデカくて、客席の距離も近いからホーム感がすごくある」
ホームデビューのナムディン戦では67分までプレー。前線での守備や味方のチャンスを生む動きなどでチームの勝利に貢献したが、チャンスで決め切れず、試合後には「力んでいた」と振り返っていた。
「シュートを打つ瞬間のところで力が入っていると思っていた。終わってからもトルガイ(・アルスラン)に『いっぱいゴールを取ってきたんだから、もっとリラックスして大丈夫だよ』って言われたし、シオくん(塩谷司)にも『力が入りすぎ』って言われました。もちろん勝ってうれしかったけど、FWとしてはやっぱりモヤっとしてしまうので点を取りたい」と話し、「今日(ナムディン戦)は1万人ぐらいだったけど、次のリーグ戦(横浜FM戦)はほぼ満員になると思うので、もっと後押ししてくれると思う」と紫の大声援を期待していた。
中3日で迎えたJ1ホーム開幕戦。ほぼ満員の2万7123人が入ったスタジアムで、ジャーメインは5試合連続で先発のピッチに立った。後半立ち上がりの47分、FW加藤陸次樹からのクロスを右足でうまく合わせると、シュートは相手のハンドを誘ってPKを獲得。「脱力してうまくミートできたので、トルガイのアドバイスのおかげです」と笑みをこぼした。
このPKでボールをセットしたのは、昨夏加入後からキッカーを務めていたアルスランではなくジャーメインだった。ミヒャエル・スキッベ監督は試合後の会見で、「今日は試合前にトルガイが『PKになったらジャメ(ジャーメイン)が蹴ろう』と言っていた。彼が蹴ることに関してはジュビロでもしっかり決めていたので不安はなかったです」と話し、ジャーメイン本人も「キャンプ中にPKの話になって『なかなか点を取れてなかったら蹴っていいよ』って言われていたので蹴らせてもらった」と明かした。
激しい攻防が続いた展開で巡ってきた貴重な先制のチャンス。ホームの大きな声援と期待を一身に受けるPKだったが、目の前の「紫の壁」が味方した。新9番が落ち着いてゴール左隅にシュートを突き刺し、後押ししてくれた大観衆の前で熱いガッツポーズを見せた。
「プレッシャーはなかった。前の試合でチャンスがあったけど、自分らしくないシュートミスがあったから、今日はあまり意識せずにプレーして、マインドを変えてやったのが良かった」と前回ホーム戦の経験を糧にし、「もともとPKは得意なので、狙ったところにあのスピードで蹴れば入る自信があった」と胸を張った。
スキッベ監督も、「やっと点を取れたこと、すごくうれしく思う」とジャーメインの今季第一号を歓迎しつつ、「プレスに行ったり、ボールを受けたり、ボールをはたいたり、そういった働きの部分は非常に満足している。これからもそういう活躍をしてほしい」と得点以外でも変わらぬ評価と期待を口にした。
広島は新ストライカーの得点を守り切って1−0で勝利し、今季開幕から公式戦5連勝を飾った。移籍後初得点を決めたジャーメインは、「1つ楽になった。ゴールを取れたことで今までどおりのプレーや求められることに集中できる」とチームの勝利と得点量産へ突き進む。その先に目指すのは最高の景色。試合後のヒーローインタビューでは「優勝でしょう!」と叫び、心強いホームサポーターにタイトルを誓った。
取材・文=湊昂大
【動画】ジャーメイン良、移籍後初得点に喜び