京都の「モーニング」に多国籍化の波 中国にタイ、インドのスパイス定食まで…根付いた理由とは!?

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2025年02月24日 17:10  まいどなニュース

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中国人客でにぎわう「無名小吃」の店内。テイクアウトの客も続々と訪れる(京都市伏見区)=撮影・佐伯友章

 昭和の時代から京都人に愛されてきた「モーニング」。喫茶店でコーヒーやトーストを味わうひとときは、いつもの朝をちょっと特別にしてくれる。そんな京都のモーニングに最近、多国籍化の波が押し寄せているという。一体なぜ―。市営地下鉄に乗って世界の朝を食べ歩いた。

【写真】朝食にぴったり…!?タイで親しまれる蒸しスープ

 扉を開けると、にぎやかな中国語が耳に飛び込んできた。地下鉄くいな橋駅から徒歩10分の「無名小吃」(伏見区)。器にたっぷり注がれた温かい豆乳に、細長い揚げパン「油条」を添え食べていた留学生の宋佳玉(ソウカギョク)さん(37)は「実家と同じ味」と目を細めた。

 山東省出身の杜君杰(トウクンケツ)さん(45)が2021年に開業した同店。コロナ禍で渡航が難しかった当時、故郷の味を求め全国から中国人が訪れたという。妻の葛芬(カツフン)さん(45)は「朝はしんどいからやめたい」と苦笑するが、周辺の留学生は「みんな知ってる」有名店だ。

 朝は羊のスープ「羊肉湯」や肉まんに似た「牛肉包子」、豆腐にあんかけをのせた「豆腐脳」が人気。みんな、朝食とは思えないほどたっぷり食べる。「中国人にとって朝食は一番大事」と杜さん。異国で生きる同胞に古里の味を届けている。

 底冷えする京都の冬。少しでも南国を感じたい―。そんな思いで向かったのは、鞍馬口の「TOM」(上京区)。注文後に大きな鍋で器ごと蒸されるスープは、タイ・バンコクで人気の朝食だ。骨付き鶏の澄んだスープには、クコや乾燥山芋、干し龍眼など薬膳食材がたっぷり。多民族国家ならではのジャンル不問の味がする。

 「二日酔いの朝でも、ぎり入るでしょ」。そう笑うのは、オーナーシェフ「みもっと」さん。夫の駐在先のタイで料理にはまり、現地の専門学校に入学。今では東京と京都で2店舗を経営する。朝食は京都限定。観光客と地元の人が入り交じり、温かいスープを手にゆったり過ごす。「京都はモーニングが根付くまち。京都じゃないとハマらなかった」

 今や食文化として定着したモーニング。発祥は諸説あるが、共通するのは経済が成長していた1940年代後半〜50年代、地場産業が盛んな地域や都市部で始まったことだ。多忙な朝、働く人がコーヒーとトーストで一息つく―。そんな光景が各地の喫茶店で繰り広げられてきた。

 その本質は現代も変わらない。「朝のスタートが成功したら一日幸せ。平日の仕事前に食べに来てほしい」。午前7時半からスパイスカレーを提供する「SPICE GATE」(下京区)のオーナー山縣智さん(42)は語る。定番の「京風スパイス朝定食」は、千枚漬けやおひたしなど、和定食をインド風に再解釈した。魚介だしのカレーは、煎茶で炊いたバスマティライスを添えて。お茶漬けのようにさらさら入る。

 しかしなぜ、古都で異国の朝食を? 「定番のコーヒーもパンも本来は新しいもの。京都人って新しいもの好きなんだと感じます」と山縣さん。朝食は市場としても新しく、料理人が実験的なメニューに挑戦しやすい時間帯という。

 新しい始まりの朝。ちょっと早起きして出合う世界のモーニングは、一日を輝かせてくれるに違いない。

(まいどなニュース/京都新聞)

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  • ひとつの有名な例として、路面電車は京都が日本初。京都は国宝や重要文化財に囲まれ過ぎているからこそ、新しいものが大好き。
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