Nubia(Nubia Technology)から最新スマートフォン「nubia Z70 Ultra」が登場、日本での販売も決定した。本機種はカメラ性能重視のスマートフォンとなっており、メインカメラは35mm画角を採用。ゆがみが少ない写真を撮影できる。本記事ではnubia Z70 Ultraの作例を交えて紹介する。
ライカとの共同開発で躍進を続けるXiaomi、制裁を受けてもなお高い評価を得続けるHuaweiなど、中国メーカーのカメラ性能特化のスマートフォンの進化は目覚ましい。
そんな中、安価ながらも高性能なカメラスマホとして、Nubiaから登場したスマートフォンが「nubia Z70 Ultra」だ。日本でも2月10日に販売を開始し、同社の「Z」シリーズとしては初、ZTE時代の「Axon 10 Pro 5G」から数えて実に5年ぶりのフラグシップ端末の投入となる。
実は2024年に前世代のnubia Z60 Ultraが一部販売代理店を通して、総務省の特例認証を受ける前提の実験用端末として試験的に販売されていた。今回はその試験販売によってフィードバックを得た結果、Nubiaが日本での展開に踏み切ったようだ。
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なお、nubia Z70 Ultraを取り扱うのはZTEジャパンではなく、販売代理店として中国Fastlane Japanが取り扱っている。オンラインストアでの価格は12GB+256GBが12万2800円(税込み、以下同)、16GB+512GBが13万9800円または14万9800円だ。
●アンダーディスプレイカメラと35mm画角のメインカメラが特徴
nubia Z70 Ultraはカメラ性能重視のスマートフォンだ。主なスペックを見ていこう。
・プロセッサ:Snapdragon 8 Elite
・メモリ:12GB/16GB
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・ストレージ:256GB/512GB
・ディスプレイ:6.81型 2380×1220
・アウトカメラ:標準:5000万画素 F1.59-4.0
・超広角:5000万画素 F2.0
・望遠:6400万画素 F2.4
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・インカメラ:1600万画素 UDC
・バッテリー:6150mAh、80W充電
nubia Z70 Ultra最大の特徴は、インカメラの見えないディスプレイだ。本機種のインカメラはUDC(アンダーディスプレイカメラ)としており、画面内にカメラが目立たない形で採用。ノッチやパンチホールといった「邪魔物」のない仕上がりとなっている。
第7世代のUDCを採用したことで、従来よりもディスプレイの解像度と輝度を向上させ、リフレッシュレートも144Hzに対応した。ハードウェアは順当にアップデートされた。
画面サイズは6.85型と大型。AMOLEDパネルを搭載しており、画面解像度は2688×1216ピクセル。従来のフルHD+よりも画素数が増えており、画面解像度が向上している。144Hzのリフレッシュレート、2160HzのPWM調光に対応しており、ちらつきを抑えて目に優しいディスプレイとしている。
画面のピクセル数が高密度化されてもインカメラの画質はキープ。光を取り入れることが難しいのか、夜間の画質では他社機種に劣る。それでもこだわりがなければ十分な仕上がりだ。
プロセッサはQualcommの最新モデル「Snapdragon 8 Elite Mobile Platform」を採用。同社のAndroid端末向けプロセッサとしては最上位のもので、高い性能を発揮する。
CPU部に新アーキテクチャを採用したことによる基本性能向上にとどまらず、ISP性能やAI性能が向上したことで、カメラ性能の向上、生成AI機能にも大きく寄与している。
搭載メモリは12GBまたは16GB、ストレージは256GBまたは512GBと必要に応じて選べる。ベイパーチャンバーをはじめとした冷却性能も向上しており、最新プロセッサとの組み合わせもあって、長時間のゲームも問題なく遊ぶことができた。
●基本的な動作にストレスなし 高負荷コンテンツをプレイしても発熱は控えめ
nubia Z70 Ultraを使ってみると、最新ハイエンド機のためブラウジング、SNSや動画視聴といった基本的な動作にストレスは感じない。例えばゲームでも「原神」のような高負荷なコンテンツを1時間ほど続けてプレイしても、持てなくなるほど極端に「熱い」と感じることは少なかった。
また、本機種は同社のゲーミングスマホ「REDMAGIC 10 Pro」と同様に一部ゲームにてより高画質化できるアップスケーリング機能や、滑らかに描写するフレーム補間機能に対応。高画質かつ、滑らかな描写で楽しむことができるものの、発熱も大きくなる。
このため、ゲームに関しては空冷ファンやより強力な冷却性能を備えるREDMAGICシリーズの方が動作は快適かつ、発熱による不快感も少なかった。やはり、餅は餅屋といった印象だ。
独自の機能として本体側面に物理的なスライドスイッチを引き続き備える。初期設定ではカメラを「ストリートショットモード」で起動できるが、設定からマナーモードなどに変更することができる。iPhoneの「アクションボタン」ほどの自由度はないが、ある程度カスタマイズは可能だ。
後述のシャッターボタンでカメラを起動できるので、スライドスイッチはマナーモード、GameSpaceの起動(REDMAGICシリーズと同様の操作)などに割り当てることをお勧めしたい。
この他にIP69の防水・防塵(じん)性能も備えており、今作ではスチームジェット噴水流の試験もクリアした。昨今の中国メーカーのハイエンドスマホらしいトレンドもしっかり押さえている。
バッテリー持ちについては、6150mAhのバッテリーを採用することで、他社製品よりも電池持ちはよく感じた。これに加えて、最大80Wの高速充電にも対応しているが、ワイヤレス充電には対応していない。
中国ではXiaomiやOPPOなどが充電速度をアピールする製品を展開しているため、「充電速度の競争」が起こっている。日本向けには充電器は付属しないものの、予約購入者には80Wの急速充電器を別途同梱する。
OSについてはAndroid 15ベースの独自UI「Nebula AIOS」を採用する。HuaweiやXiaomiがアピールする「複数デバイスとのコネクティビティ」を重視するものではなく、端末の利用ログなどから各種最適化を行い、ユーザー体験を向上させる思想が感じられる。
一方で、日本語が不自然だったり、英語表記のままだったりする箇所も一部見られた。Fastlane Japanによると、この点は随時改善していくとしている。
●35mm画角のカメラは可変絞りに対応 Xiaomi 14 Ultraとの比較も
nubia Zシリーズは「カメラ性能」を重視する商品を展開している。その中でも、換算35mm画角のメインカメラが差別化という意味でも特徴的だ。
一般的なスマートフォンが24mm前後を「標準」とすることが多い中、本機種では35mmを標準とした。普通の機種でいうところの1.5倍相当となり、ややズームした感覚で利用することになる。
Nubiaは、この「標準」画角を「広角より」と定義する。35mm画角のカメラはこれらに比べてゆがみを抑えられ、人物撮影などに有効だとしている。確かにスマートフォンのカメラ画角は一般的なカメラの感覚で使用すると広角に当たり、俗に「標準」と呼ばれる画角ではない。他社との差別化という意味も含めて理にかなっている構成だ。
35mmのメインカメラにはソニー製のIMX906というイメージセンサーを採用。レンズはF1.59と明るい上に可変絞り機構も備え、F1.59からF4.0まで調整できる。この手の絞り機構は日本発売機種では「Xiaomi 14 Ultra」に続く形で、スマートフォンとしての独自性は大きい。
超広角カメラは35mm換算で13mm、5000万画素の仕様。レンズはF2.0と超広角カメラとしては明るい。前作よりも広い画角となり、普通のスマートフォンの超広角カメラのように利用できる。
望遠カメラは換算で70mm、6400万画素の仕様。ショートカットでは85mmと表記されるが、実際は2倍の70mmで望遠カメラに切り替わる。レンズもF2.4と明るくなり、前作の課題だったテレマクロ撮影にも対応した。
この他、物理的なシャッターボタンも備える。長押しによるカメラの起動はもちろん、起動するカメラモードも選択できる。このボタンは半押し操作にも対応するので、カメラのような撮影体験が可能。AQUOS R9 proをはじめ、カメラ特化スマホにシャッターボタンを備える点はありがたい。
nubia Z70 Ultraでの作例は以下のようになる。この機種ではデフォルトのウオーターマークに画角が表示されるのでそちらを参考にしてほしい。
換算35mm(1.5倍)の画角がデフォルトなので、ゆがみが少ない点は優位だ。デジタルズームも比較的きれいに処理を行うため、1.5倍の50mmなどの画角でも画質が荒れる場面は少ない印象を受ける。
35mm画角に加えレンズがF1.59と明るいこともあり、背景はかなり大きくボケる。そのため、スマートフォンとしてはピントがかなりシビアな印象だ。ここは可変絞りをうまく併用することで、シビアで合わせにくいピント周りのピーキーさは抑えられている。
筆者は前作のnubia Z60 Ultraのレビューにて「一般に利用する点ではやや癖が強く、欲を言えば可変絞りが欲しいところだ」としているが、まさにこの希望が実現した。
5000万画素の超広角カメラもきれいに撮影できる。前作よりも性能は落とされているものの、画角的には13mm相当と広角になったことで一般の機種と同じ感覚で使いやすくなった。
ここの変化は前作が「一般的なスマートフォンのメインカメラ画角を補完する」ような設計思想だったものに対し、Z70 Ultraでは「35mm画角によりを重点に置く」思想に変化したことが変更の理由と感じる。
一般的なスマートフォンに多い換算24mmはこちらのカメラを用いて撮影することになる。初回起動時に35mmではなく24mmの設定にすることも可能だ。
望遠カメラは換算85mm(実焦点距離70mm相当)で6400万画素のイメージセンサーを採用する。ペリスコープ方式の望遠レンズを採用し、フラグシップに相応する高いズーム性能を備える。課題だったテレマクロ撮影も可能になり、撮影の幅が広がった。
ここで可変絞りを持つ「Xiaomi 14 Ultra」と比較してみる。両者ともに光芒の表現が可能だが、nubiaはややシャープな印象を受けた。手動での変更度合いは両者同じなため、操作感覚は両社ともに近い印象だった。操作系ではXiaomiがオート撮影時でも絞り制御が可能な点に対し、nubiaはストリートモードやマニュアルモードなどに限られる。
この他に「ストリートショット」というスライドスイッチから起動してサクサクと撮影できるモード、星空モード、マニュアルモードといった多彩な撮影モードを備える。
●フラグシップでも12万円台から 今期注目の高コスパなスマホ
nubia Z70 Ultraはクセこそあるが、高いカメラ性能、UDC(アンダーディスプレイカメラ)を採用したディスプレイ、板のような角ばったデザインで、フラグシップスマートフォンの中でも存在感を示している。
特にUDCと35mm画角のメインカメラは他社ではあまり見られず、同社のスマートフォンを選ぶ上で特徴的な存在。今作では課題だった画面性能の向上に加え、可変絞りとシャッターボタンというカメラ周りのアップデート、フラグシッププロセッサによる高い性能も立派な付加価値だ。
何よりも売りは価格の安さだ。日本向けモデルは12万2800円からの価格設定で、最上位構成の特別版となるスターレイナイト(通称:ゴッホ版)も14万9800円の設定。他社の同等クラスの商品は20万円に迫る価格なので、Nubiaらしいコストパフォーマンスの高さが魅力だ。
実際、フラグシップのSnapdragon 8 Eliteを採用するスマートフォンとしてはかなり安価な設定だ。先行予約特典で5000円値引きのクーポンを配布するなど、コスト面を大きくアピールしている。
一方で、nubia Z70 Ultraの惜しい点として、どうしてもギーク向けの印象は否めない。おサイフケータイに非対応であったり、ソフトウェアには若干のチューニング不足を感じたりする場面もあった。筆者は、シャッター音が強制される仕様も気になったが、Nubiaはソフトウェアアップデートを定期的に行ってユーザーの声に応えられるよう改善するとしている。
Nubiaは、REDMAGICシリーズ同様にオンライン販売を中心としてオープンマーケットでの日本展開を模索している。Nubiaが売りのコスパを生かせる販売方法なので相性もいい。日本では値引き規制の関係で、いわゆる「一括1円」のような売り方がなくなったことで、製品価格に敏感な利用者が増えたようにも感じる。近年はあまり販売されなかった「コストパフォーマンスの高いハイエンドスマートフォン」に注目が集まることも納得できる。
そのような環境だからこそ、コストパフォーマンス重視のNubiaのスマートフォンは、安価かつ高性能な機種を求める層からの期待値は高い。ゲーミングではないジャンルのハイエンドスマートフォンがどのように受け入れられるのか。折りたたみスマホをはじめ、多方面に注力するNubiaの日本市場の展開にも注目したい。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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