イマドキの「大人のチェキ!」誕生である。その名も「instax WIDE Evo」。2月6日に発売されたばかりのチェキのハイエンド機だ。これがまたチェキらしいデジタルとアナログが合体したハイブリッドカメラなのである。
富士フイルムのinxtaxシリーズ、いわゆる「チェキ!」には、いくつかの基本バリエーションがあるのでこまずはそれを整理したい。
一つはフィルムのサイズ。「チェキ」というと最初に思い浮かべるのがカードサイズの「instax mini」。これが一番ポピュラーでよく使われている。
2番目は正方形の「instax SQUARE」。プリントエリアが正方形のフィルムでちょっと大きめ。ポラロイドフィルムよりは一回り小さいくらい。
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そして3番目は「instax WIDE」。文字通り横長のフィルムで縦横比は35mm判フィルムと同じ(あるいはAPS-Cやフルサイズのデジタル一眼と同じ)3:2だ。
それぞれのサイズ差はこのくらいだ。
もう一つは「ハイブリッドチェキ」であること。要するにデジタルカメラ+インスタントカメラだ。
アナログのチェキは、シャッターを押したら直接フィルムを露光してプリントが出てきて、それで完了。複製もできないし、間違って撮ってもフィルムは消耗する。
一方のハイブリッドチェキは、撮影をデジタルで行い、プリントしたい写真だけあとからプリントする。instax WIDE Evoは、初のinstax WIDEフィルムを使ったハイブリッドチェキなのである。
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●レバー式シャッターとエフェクトダイヤルに注目
そしてまたこのinstax WIDE Evo、デザインが面白いのである。
まずデカい。instax WIDEフィルムを採用しているから当たり前だ。
サイズは138.7(幅)×125(高さ)×62.8(奥行き)mm。正面から見ると、正方形に近いけどちょっと横長だ。
中央にちょこんとレンズがある。
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このレンズは35mm判換算で16mm相当とかなりの超広角。センサーは1/3型で約1600万画素。F値はF2.4固定。
さすがにこれでは広角すぎるシーンも多いわけで、フロント部のスイッチでwideモードとノーマルモード(この場合は約490万画素相当にクロップされるが、WIDEプリントには十分なサイズだ)の切り替えスイッチがある。
ユニークなのはシャッターレバー。シャッターボタンではなくレバーなのである。ちゃんと半押しのフォーカスロックにも対応している。レバーに人差し指をかけ、下に押し込む感じ。
もうちょっとクリック感が欲しい感じはあるけど、このボディだと押しやすくていい。
ファインダーはなし。撮影は背面の液晶モニターを使う。モニターもでかい。3.5型だ。約46万ピクセルと粗いけど、それは気にならない。
ただ、液晶が明るくないので、晴天下の屋外だとかなり見づらい。
そこはちょいと残念だった。instax WIDE Evoの面白さの一つは多彩なエフェクトにあるわけで、画面を見ながらどのエフェクトにしようかなと選ぶのが楽しみの一つであり、晴天下だとエフェクトの具合が分かりづらいのである。
では撮影だ。
instax WIDE Evoのポイントは「Evo」。
すでに「instax mini Evo」という先例がある。それは10種類のフィルムエフェクトと10種類のレンズエフェクトを組み合わせた画作りの楽しさをもち、レトロカメラの外観や操作感を楽しむカメラだった。instax WIDE Evoも多彩なエフェクトを組み合わせて個性的な写りを楽しむカメラだ。
なので、あれこれ設定をいじりながら撮ってみたい。
instax WIDE Evoはエフェクト系をさらに強化。レンズエフェクトはレンズダイヤルで100段階のバリエーションを得られ、さらに6種類のフィルムスタイル(フレーム)機能を追加している。
これらを組み合わせることでエフェクトのバリエーション数は……計算するのもめんどくさいレベルになる。
それらのコントロールはダイヤルで行う。背面から見て右のダイヤルがフィルムエフェクト。
左のダイヤルがレンズエフェクト。レンズ周りのダイヤルはレンズエフェクトのバリエーションだ。
上面のボタンはフィルムスタイル(フレーム)の選択だ。
特に、光の反射やフレアを表現する、ライトプリズムやビームフレアなどはダイヤルを回すことで多くのバリエーションを楽しめる。
いくつか組み合わせ例を。どれも、カメラからスマホに転送した画像だ。こういうプリントイメージで転送される(詳しくは後述)。
デジタルカメラではあるけれども、チェキなので「後からエフェクトをかける」機能なんてない。だからエフェクトをかけるか、どのフレームにするかは撮影時に決めねばならない。
“デジタルカメラ脳”で見ると「後から掛けられる方が便利じゃん」と思っちゃうのだけど、あえて「撮影時に選び、プリントして楽しむ」という精神が貫かれているのがチェキらしいなあと思う。
気に入った写真を撮れたら印刷だ。
印刷の手順は2種類。一つは再生画面のメニューから「プリント」を選ぶ。もう一つは側面のプリントダイヤルを回す。フィルムカメラの巻き上げレバーを摸していて、ご丁寧にもレバーを起こしてぐるぐる回すのだ。回すと画面上のインジケータが動き、MAXまでいくとプリントが始まるという仕組み。
プリント時にできることといえば、プリントの明るさと画質のみ。画質には、インスタント写真らしい「instax-Nature」と、デジタルならではの色味を活かした「instax-Rich」がある。
Richモードの方がハイライト部まで色がしっかりでるけれども、Natureのハイライト部が白飛びするインスタント写真らしさも捨てがたく、どっちがいいかなと両方をプリントしているとあっという間にフィルムがなくなるという、おそろしいカメラなのである。
しかもプリントの画質がかなりよい。62×99mmというinstax miniの2倍以上のサイズでフィルム独特の色合いや階調を楽しめる。
インスタントフィルムの独特の風合いは大変魅力的で、デジタルなのをいいことに、ついエフェクトを変えながらたくさん撮ってしまい、あれもこれもプリントしたい、どっちがいいかはプリントして見ないと分からないな、いい感じに撮れたものはプレゼントしたい、となるとフィルムがいくらあっても足りないのである。
チェキなのでフィルムは10枚1パック。しかもフィルムサイズがでかいので1枚あたりのコストもそれなりに高いのだ。10枚入り1パックが1812円(つまり1枚あたり約180円)なのである。
●プリントした写真だけスマホに自動転送する仕様
ハイブリッドチェキなのでもちろんスマホとの連携もできる。専用アプリを利用してプリントした写真をスマホにBluetoothで自動的に(あるいは手動で)転送してスマホ上に持ってきたり、気に入ったエフェクトの組み合わせをお気に入りとして登録してカメラに転送することもできる。
ただ、スマホに転送できるのは「プリントした写真」だけというのがミソ。全写真を転送できるわけじゃない。あくまでも、気に入ったら「プリントした上でスマホでも楽しもう」という仕組みなのだ。
スマホに転送すると、撮影時の設定もしっかりチェックできてよい。
ただ、スマホに転送した画像は1318×1066ピクセルのサイズになる。
撮影した元画像をスマホ、あるいはパソコンで見たい人はmicroSDカードを取り出し、カードリーダー経由で読み込まる(USBケーブルによる転送には対応してない)。
するとなかなか面白いことが分かる。使用しているセンサーは4:3のアスペクト比なので、元画像は4:3で記録されているのだ。だからどうということはないけれども、元写真をカードリーダー経由でスマホやPCに読み込んで閲覧するとアスペクト比が異なっていて「あれ?」となるかもしれないので一応。
元画像をちゃんとチェックすると、画質はかなりいい。これはなかなかのクオリティだ。
もう一つ、instax WIDE Evoはプリンターとしての機能も持っている。専用のアプリからスマホ内の画像をプリントすることもできるのだ。instax WIDEの大きなサイズでプリントできるので、そういう使い方もできる。
また、「instax UP!」というアプリに画像を送ることで、チェキプリントを整理したりチェキコレクションを作ることが可能だ。
なんとも楽しいカメラである。
超豊富なエフェクト(特にレトロ系というかフィルム時代の様々な効果のシミュレーション)を楽しむもよし、エフェクトは最小限に抑えてシンプルなデジカメ的に楽しむもよし。
エフェクト類は撮影時にかけられるだけで、後から追加はできないので、その瞬間的な面白さを楽しめばよし。でも、やはり最終的にプリントしてなんぼのカメラだなあと思う。
プリントサイズが大きいのみならず、クオリティも高くてフィルムならではの味わいのあるプリントを楽しめるし、このサイズならちょっとしたミニ作品としても使える。
今回もテスト用に多めにフィルムを用意したのだけど、「保護猫シェルターqueue」で撮影した日付入り猫写真をプレゼントしたり、モデルをしてくれる長谷川未紗さんについその場でプリントをあげたりするので、あっという間に使い切ってしまった。
そうなると……プリント代がなかなか悩ましくなるわけで、でもやっぱプリントしてなんぼだから楽しいのである。
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