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芸術家・岡本太郎氏の遺志を継ぎ、次代のアーティストを顕彰する岡本太郎現代芸術賞 (通称TARO賞)の入賞者・入選者の作品を集めた「第28回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展が開催されている。川崎市岡本太郎美術館で4月13日(日)まで。主催は岡本太郎記念現代芸術振興財団 岡本太郎記念館(東京)。
TARO賞には579点の応募があり、3人が入賞、24人が入選。2月22日に授賞式が行われた。岡本太郎賞(賞金200万円)、岡本敏子賞(賞金100万円)、特別賞(賞金50万円)、各1人ずつの作家・作品名・審査評は以下の通り。
■岡本太郎賞:仲村浩一(なかむら・ひろかず)『房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行』
【審査評】
本作の勝因は、「千葉県」という「月並」と言えばあまりに月並な主題を、作者が生まれ育った故郷であったということだけに発し、4年を費やして同県の海岸線をぐるりと10歩ごとに分けて足元の砂を採取して踏破し、それをもとに「尋常でない」一大パノラマに仕立ててみせたことにある。このことを通じて「千葉県」は、砂による抽象と具象に分岐し、なおかつ同一のものであるという奇妙な二重性を獲得している。「千葉県」が他に類を見ないやり方で芸術へと昇華されたのだ(美術批評家・椹木野衣氏)。
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■岡本敏子賞:齋藤玄輔(さいとう・げんすけ)『語り合う相手としての自然』
【審査評】
まず、カーボン紙のブルーの色に目を奪われる。一見遠くから見るとデザイン的なイメージかと思い、近づいてみるとそのはかなさと繊細さに衝撃を受ける。裏からの強いLEDライトもカタチを崩した植物のラインを強調している。ベースフォルムが福島第一原子力発電所建屋から成っている点、収集された植物が帰宅困難地域で被爆しただろう植物という点に心を打たれた。(ワタリウム美術館キュレーター・和多利浩一)
■特別賞:井下紗希(いした・さき)『森を歩くこと。』
【審査評】
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ユリ、ヒマワリ、アロエなどなど、巨大化した植物が画面を埋め尽くす。作者は、「森を歩くとき、感覚は研ぎ澄まされる。そこに息づくものの中に見えるものは、自身の絶望、葛藤、もがき、焦燥、畏怖、そして圧倒的な生命力。」だと言う。暗褐色の画面は、たしかに絶望や葛藤を暗示する。だが、パワフルな花々からは「圧倒的な生命力」を感じさせる。屋久島への旅をきっかけに日本各地を訪ね歩いた作者は、集大成として「絵画の森」をつくりあげたのである。(美術史家・山下裕二)
川崎市岡本太郎美術館の開館時間は、9時30分〜17時(入館は16時30分まで)。休館日は月曜日(2月24日・3月24日・3月31日・4月7日を除く)、2月25日(火)、3月11日(火)、3月12日(水)、3月21日(金)ほか臨時休館あり。観覧料は、一般700円、高・大学生、65歳以上500円、中学生以下無料。
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