国が経済産業省令を改正し、大手電力会社の送配電線の利用料「託送料金」に東京電力福島第1原発事故の賠償費用などの上乗せを認めたのは違法だとして、小売電気事業者の一般社団法人「グリーンコープでんき」(福岡市)が国に料金変更の認可決定を取り消すよう求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(久留島群一裁判長)は26日、1審・福岡地裁判決(2023年3月)を支持し、原告側の控訴を棄却した。
原告は電力自由化で16年に小売り事業に参入した新電力業者。自前の送配電網を持たないため、九州電力グループに託送料を支払って顧客に電気を届けている。
経産相は17年に省令を改正し、福島原発事故の賠償費用や老朽化した原発の廃炉費用を託送料金に上乗せできる規定を設けた。この省令に基づき、九電グループの送配電会社に対しても20年、上乗せした料金に改定することを認可した。原告側は電気事業法の委任の範囲を超えており、違法な認可決定だと訴えていた。
高裁は1審判決と同様に、原発事故の賠償費用などは「電気の全需要者が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用」だと判示。電気事業法は託送供給制度の導入当初から、こうした公益的課題に要する費用を託送料金として回収することを想定しているとし、今回の上乗せも「法の委任の趣旨の範囲内だ」と判断した。
原告側の馬場勝弁護士は判決後に開いた記者会見で「国の主張に沿った判決で、納得できない。上告するかどうかは議論して決めたい」と話した。【志村一也】
|
|
大阪公立大の除本理史(よけもと・まさふみ)教授(環境政策論)の話
司法は国のエネルギー政策にあまり異を唱えてこなかった。今回も行政へのそんたくを感じる判決だ。託送料に原発事故の賠償費を練り込んで回収する仕組みそのものが問われたが、中身に踏み込むことなく、形式的議論のみで請求を退けた。東京電力福島第1原発事故があり、その後も各地で震災が頻発する中、原発への信頼は揺らいでいる。にもかかわらず、本来は東京電力など原発事業者である大手電力会社が背負わなければならない事故賠償や廃炉の費用を、原発を使わない新電力の利用者にまで負担させる仕組みは大きな問題であり、国民的な議論が必要だ。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。