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2審も国の責任が一部認められたが、原告の住民らに笑顔はなかった。2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の氾濫などによる浸水被害が生じたのは国の河川管理に不備があったとして、常総市の住民ら20人が国に約2億2200万円の損害賠償を求めた訴訟。26日の東京高裁の判決では、22年の1審・水戸地裁判決と同様に若宮戸地区については国の責任が認められたが、賠償額は約1000万円減額。上三坂地区については1審同様、認められなかった。
東京都千代田区の高裁前で原告団共同代表の片倉一美さん(71)はけげんな面持ちで「勝訴」と書かれた旗を広げた。原告団らは判決後に記者会見を開き、片倉さんは「気持ちとしては敗訴。1審より結果が悪かった」と悔しさをにじませた。
2審判決でも若宮戸地区で堤防の役割を果たしていた砂丘を、国が開発を制限できる「河川区域」に指定せず、国の管理に不備があったと認められた。原告側代理人の只野靖弁護士は「水害訴訟で住民が勝てない冬の時代が続いていた。一部でも国の責任が認められたのは画期的。国が何をやっても断罪されることはないというのが終わるということだ」と意義を語った。
一方で認められた9人は、家財などの損害額の算定を見直し、賠償額は1審判決より減額され約2850万円だった。賠償が認められた高橋敏明さん(71)は「経済的、精神的、肉体的に大変な思いをしているのにその気持ちを分かってもらえなかった。勝ったとは言えない気持ちだ」と怒りをあらわにした。
上三坂地区の河川整備計画の策定に使われた評価方法について2審判決では「十分な合理性がある」と指摘。危険性が高いのに整備が後回しにされたという住民らの主張は認められなかった。片倉さんは「誰がどう考えても非常識。低い場所を手当てしなければ日本全国至る所で水害が発生するのでは」と述べた。片倉さんらは上告する考えを示した。
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判決を受け、国土交通省関東地方整備局の岩崎福久局長は「国の主張が一部認められなかったと認識している。判決内容を精査し、適切に対処する」とのコメントを出した。【信田真由美、斉藤瞳】
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